過去のひと言


2016年9月その2 格安スマホで気づく合理性

私にとって今までブラックボックスだったものの一つが携帯電話料金だ。えらく無駄なお金を使っていることは薄々気づいていた。しかし面倒臭さにかまけてほったらかしにしていた。そして2か月前 妻の長年使っているガラ携の外蓋がふとした拍子にパカっとはずれたのを機会に決心した。格安スマホへの切り替えである。

まず私の使っていた古いアンドロイドのスマホを捨てSIMフリーのiPhoneをアップルストアで購入。今までのAUとの契約を解除し 格安スマホのIIJmioと契約することにした。後で知ったことだが ビックカメラなどでIIJmioの契約を取り扱っているので そこで契約すれば即時開通ができるとのこと。そのときは何も知らなかったので すべてネットでIIJmioとやり取りをし 自分でSIMカードを入れ替えて開通。60の手習いだったが まったく何のトラブルもなくすんなりと開通できたのは拍子抜けするほどだった。

一ヶ月お試しをしたうえで、今度は妻のガラ携を私と同じiPhoneに変え IIJmioの契約をファミリープランに変更。これで今まで15年契約してきたAUとはさよならとなった。

まだ落ち着いていないので確実なことは言えないが 携帯電話費用は確実に1/3以下になったと思う。今まで妻のガラ携(メールとたまの電話)と私のスマホ(たまの緊急電話 出張時のメールチェック 道に迷った時のGoogle Mapの使用)で総額約14,000円/月。これが4千円以下で収まりそうだ。

私が格安スマホのもう一つの利点として挙げたいのがシンプルな料金体系だ。どこも同じだと思うが 料金は「データ通信料(例えば3Gまで幾ら)」プラス「音声通話量(使用に応じて課金)」と実に分かりやすい。格安スマホはもともとデータ通信が主なので「かけ放題」や「家族割」などの音声通話の割引はほとんどない。IIJmioの場合 基本は30秒10円になっている。

シンプルな料金体系とは合理的な料金体系ということだ。このおかげで通話料金が明確になり 結果として通話料金への意識が高くなった。この合理性は私にとっては重要なことだ。AUなどのキャリアの場合 複雑な割引体系のために いったい今かけている電話料金が一体いくらなのかが分からない。複雑さが非合理性を生み出し ブラックボックス化していた。

良い機会なので ここで家の固定電話から発信する場合と携帯(格安スマホ)から発信する場合とで料金がいくら違うのかを調べてみることにした。私の家ではマンション全体でインターネット専用回線が引かれており その費用は管理費として徴収されている。したがって電話線そのものはNTTのアナログ回線だ。当然私はNTTのプラチナライン(無料)を契約している。チョー当たり前だが 結論としてはできるだけ自宅の固定電話を使うべしというのが明確になった。重要なのはその事実が定量化できたということだ。

自宅固定(プラチナライン)から固定電話へ・・・8.1円/2分(都内)、15.7円/2分(県外)
自宅固定(プラチナライン)から携帯電話へ・・・17.3円/分 (34.6円/2分)
自宅固定(プラチナライン)からアメリカへ・・・9円/分 (18円/2分)
格安スマホ(IIJmio)から固定/携帯へ・・・10円/30秒 (40円/2分)

もちろん 携帯同士でもLINE通話の音質は今や普通の電話なみで全く問題ない。これを使えば通話は日本であれアメリカであれ タダ。iPhoneのFace Timeを使えば至極簡単にタダでビデオ電話ができる。家族間の通話などこれで十分だ。どう見ても 家族割やかけ放題など音声通話割引を売りにしてきたキャリアの携帯にはとても勝ち目がなさそうだ。

さて 調べていて発見したのだが 米国の電話番号は固定も携帯も同じになっている。電話番号を見ただけでは固定か携帯かは分からない。つまり 固定であれ携帯であれ 最初に申し込んだ地域のエリアコード(市外局番)が与えられるだけなのだ。他州に引っ越しても 固定から携帯に変えても同じエリアコードがついて回る。電話料金は契約した電話会社との契約がすべて。・・・いや何と合理的なのだ。というか 固定だの携帯だのと無駄な線引きをしている日本の電話システムがいかに非合理かというのに改めて気づかされた。もちろん ここで「無駄」とか「非合理」と言っているのはユーザー視点での話である。

「知らないと損をする」、「やらないと損をする」、「今のやり方が普通だと決して思ってはならない」・・・とても勉強になりました。

2016年9月 ハワイのキンダーガーテン競争

6月末にこのコラムに書いて以来 あっという間に9月になってしまった。夏の休暇で長女一家と一緒に次女の住むハワイへ夏休みに行き そのしわ寄せで夏休み前は仕事に忙殺され 帰ってから何とか約束の期限に新著の原稿を完成させ・・・。その間 いつの間にか都知事が変わり オリンピックが幕を開け幕を閉じ SMAP解散が世間を驚かせ またまた異常気象下の台風が北海道に大災害をもたらし・・・本当にあわただしい。

その間 いろいろ積もり積もった話があるが まずはハワイのキンダーガーテン事情からお話ししよう。アメリカの連邦制度では 法律は州法で規定されており 州法でカバーできない法律を連邦法でカバーするというのが基本の考えだ。例えば交通法も州法なので州によって法律が異なる。ハワイ州では日本の免許証があれば国際免許証がなくとも州内で車を運転することができる。ところが ニューヨーク州では日本の免許証で運転はできない。2年前までは ハワイに住所のない日本からの短期観光旅行者でもハワイの運転試験に受かればハワイ州発行の自動車免許証を取得することができた。これには驚いたが さすがに今はそれはできなくなった。

教育法も州によって法律が異なる。今年8月から私のハーフの孫が公立のキンダーガーテンに通い始めたので 「ところ変われば」という話しをしてみたい。ハワイの学校制度は キンダーガーテンが1年間 小学校(elementary school)が5年間 中学校(middle school)が3年間 高校(high school)が4年間。この13年間が無料の義務教育となっている。

分かりにくいのがキンダーガーテンだ。キンダーガーテンを「幼稚園」と訳すのは間違っている。キンダーガーテンは日本の幼稚園とはまったく異なる。キンダーガーテンは小学校の中に併設されており無料の義務教育である。小学0年生というほうが分かりやすい。ただし一年間しかないので 多くの親はキンダーガーテン入学前の約2年間をプレスクールと呼ぶ幼稚園・保育園に通わせる。これは私立しかないので学費は高い。私の娘は毎月7万円を払って2年間プレスクールに通わせていた。ごく普通のプレスクールの話しだ。ただ 最後の一年間は政府から学費補助が出たのでとても助かったと言っていた。

キンダーガーテンは小学校0年なので キンダーガーテン選びは即小学校選びを意味する。ハワイの場合 学区制が敷かれているために 住んでいる場所で学校が指定される。これは日本に近い。大違いなのは ハワイでは(というよりもアメリカでは) すべての学校は小学校を含め 毎年複数のランキング機関から点数がつけられ 順位が公表されるということだ。もちろん評価項目は多岐にわたっている。となれば 学区内の学校のランキングが低いとなると それは親にとっては 下手をすれば子供の一生を左右する重大事となる。

もちろん当然これを防ぐためのシステムが存在する。それが越境入学制度だ。ハワイには学区制がある一方で越境入学制度があるのだ。親はママ友の評判やランキングを参考に幾つもの学校に自ら越境入学の申請をすることになる。越境入学の受け入れ人数は学校に任されている。何もせずに学区内で指定された低ランクの学校に通わせる親は恐らく子供の教育に関心の低い親だと言ってよい。アメリカの制度は何でもそうだが よく調べると結構いろいろな救済制度が存在するが それらのほとんどは自ら進んで手を伸ばさないと手に入れることはできない。アメリカ社会を見るといたるところに「神は自ら助くる者を助く」というキリスト教の基本精神が見える。

私のハワイの娘は評判の良い5つのキンダーガーテンに越境入学の申請をし その内2校から合格の連絡を頂いた。ハワイでは学校の送り迎えの基本は自家用車である。このためにペーパードライバーだった娘は再度運転練習をし ペーパードライバーを卒業し 小さい中古車を一台買うことになった。子供がキンダーガーテンに進む年齢になると親は大変だ。

さて町田市に住む私の長女の孫も小学校入学時に近隣の二つの学校を選択できる仕組みになっていた。選択肢があるという意味ではハワイと同じだが もちろんハワイのようなランキングは発表されない。

キンダーガーテンから始まる義務教育 小学校(キンダーガーテン込み)から公表される学校ランキング 越境入学競争 ・・・平和なハワイの暮らしの中に アメリカ社会特有の競争原理を見たような気がする。

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