過去のひと言


2018年6月 ハワイ島溶岩危険地域

以前ハワイ島に行ったとき ガイドの方が 「ハワイの溶岩は日本の溶岩と粘度が違うので流れるスピードが遅い。日本だと溶岩噴出と聞くと皆すぐに逃げるが ハワイでは逆に皆見に行く」と説明してくれた。確かに 溶岩が激しく噴出する近くでは 硫黄ガスが激しいし 噴火の岩も飛んで来そうだ。しかし 大爆発というような雰囲気ではなく 溶岩がゆっくり流れ出るという感じなので逃げる時間は十分にありそうだ。また 飛んで来た岩石が当たってけがをしたという話しも聞かない。日本の火山の噴火とはかなり様子が異なる。

ハワイ島にはラバゾーン(溶岩ゾーン)という 溶岩流が流れる危険性を指定したゾーニングがある。危険度に応じて1から10までゾーン指定されており 数が少ないほど危険性が高い。ラバゾーン1/2に指定されている最高危険エリアは ハワイ島東側海岸方面のプナ地区の一部 西側のサウスコナ地区の一部 中西部のオーシャンビューエリアの一部である。これのエリアは今溶岩が流れていなくとも 今後流れる危険性が高いと言われている。ちなみに今話題になっている溶岩流はプナ地区のパホア(ラバゾーン2)のエリアだ。プナ地区はハワイ火山国立公園を有し 地下に溶岩の潮だまりなどがあると言われている。

ラバゾーン1/2のエリアは危険なため住宅保険をかけるのは難しい。したがってほとんどの場合 住宅ローンも無理だ。購入者が限定されるために このエリアにはコンドミニアムはなく 一戸建てのみである。不動産屋はラバゾーン1/2のエリアの物件にはラバゾーンの危険性の説明をすることが義務づけられている。

ところがこれらの危険地域でも宅地分譲が行われており それなりに人気があるらしい。最大の魅力は価格の安さだ。ちなみに昨年ラバゾーン2に新たに開発された分譲地ハワイアンショアーズは 平均336坪の分譲地。土地だけならば何と12,000ドルぽっきり。戸建分譲も売り出されており こじんまりした一軒家なら18万ドル(土地付き)で買える。ガスはないが電機・水道はある。海岸まで車で5分。共同プールもある。暖かいのでおそらくはどんな植物でも育つ。18万ドルでハイビスカスやブーゲンビリアに囲まれた生活が手に入るのだ。セカンドハウスとしての購入も多いという。

たしかに今回の噴火で住まいを失った人もいるし この地域に住むにはそれなりの覚悟は必要となる。逆に言えば この溶岩危険ゾーンに住む人はそれなりの覚悟をした人たちなのだ。とは言え 別に命の覚悟が必要なわけではない。今回のこれだけの大噴火でも死者はいない。負傷者はバルコニーで噴火を眺めていて足に溶岩のしぶきがかかった人ひとりだけなのだ。

ハワイ島の溶岩と言えば 皆高いお金を出してツアーに参加し見物に行く価値のある崇高な自然現象。火山の女神ペレの崇高さを身近に感じることができるのならば この程度の覚悟はありかもしれない。大自然の脅威と地球の鼓動の中で暮らす生活が2000万円で手に入る・・・もう一つの住まいとしては実に惹かれてしまう。

2018年5月その2 日大アメフト問題 そして 日大問題

日大アメフトのタックルの映像を見ながら東大同期でアメフトをやっていた友人の話を思い出した。大学でのアメフトの練習中に同級生が亡くなったという話だ。ただし45年前の出来事。彼の言葉によると タックルで頭がガクッと動き 脳みそが頭蓋骨の中で回転したという。

あの映像では後ろから激しいタックルを受ける直前 クォーターバックの選手は完全に力を抜き 少し頭を上げていた。首と頭がまったく無防備の状態だった。本当に危なかったと思う。一歩間違えば 命の問題 一生重大な後遺症が残るところだった。ある記事に「殺人タックル」とあったが 過言ではない。これはスポーツという隠れ蓑で行われた傷害行為である。

当然のこと 直接タックルをした選手には大きな責任がある。ただし 一人で記者会見をし 問題に自ら直面した真摯な態度は評価する。問題は こんな強い心を持てる選手ですら あの状況下で正しい判断を下せなかったという事実だ。環境と言うものは人の心を麻痺させてしまう。

今(5/24)現在 内田監督が具体的な(ケガさせてこいという)指示を出したかどうかはわからない。おそらくこれを証明するのは難しいだろう。世の中 真の悪人は自ら手を汚さないものだ。しかし彼には 少なくとも人の心を麻痺させてしまうような環境を作り出したということに対して大きな責任がある。

コーチはどうだろう。恐らくは内田監督の真意を忖度(そんたく)して具体的な指示を選手にしたのだろう。学生ではない彼の場合 結局 監督の意に添わねば すぐに職を奪われることになる。日大常務理事(人事担当)の監督に逆らえるわけがない。

こういう状況を見ていると どこかで見たような風景に思える。 当然のように忖度を期待しているが自らは手を汚さない政治家。具体的な指示を出すのは 忖度しないと左遷の憂き目にあう財務省高官。そして最後に追い詰められるのは近畿財務局担当者。

違いは日本大学という高等教育機関の中で行われた不正行為という点だ。普通の人は 政治家や霞が関の世界ではまともな人間などいないのが当たり前と思っているので 森友や加計問題が発生しても「やっぱり」と「またか」という印象が第一だろう。しかし普通の人は 「まさか大学という教育機関の中でこんなことが起きるなど・・・」思いもよらない。いったい日大ってどういう組織なのだろうか?この行為は学内の活動で行われた前例のない卑劣な傷害行為であり かつ日大常務理事が首謀者としての関与を疑われているのだ。しかしそれでも 日大理事長や学長はまったく表に出てこない。

中には この問題を聞いて「やっぱり」と思った人もいたにちがいない。日大の田中英壽理事長は数年前山口組六代目組長とクラブで歓談するツーショット写真が表ざたになり 裏社会とのつながりが噂された人物である。この写真は海外誌での掲載で明らかになった。それも日本の記者が脅しにあったため日本での発表が没になったためだと言う。

この写真が契機となり 当時日本オリンピック委員会副会長の職にあった田中理事長は結局東京オリンピックを前に副会長職を辞することになった。彼はもともとアマチュア相撲の横綱で 日大相撲部監督を経て10年間日大理事長職を務めている。間違いなく日大のドンだ。そして彼が目をかけたのがアメフト部監督の内田氏。理事長のお陰で常務理事に引き立てられた内田監督は次期理事長とも噂されていた。アマレスのセクハラ問題の会見で醜態をさらした谷岡志学館大学学長(日本レスリング協会副会長)しかり。どうやら日本の大学運営のトップは我々がイメージするような高潔なインテリとは程遠い。

さて日大のアメフト問題は必然的に日大の大学運営問題へと発展しそうな気がするがいかがだろうか。もしそうならないとしたらそれこそ日大の状況は深刻である。

2018年5月大谷選手の痛快さ

毎年の事だが 4月に入るとどうも寝不足になる。深夜や早朝に多くの海外スポーツがライブで放映されるからだ。

復活した錦織選手のしぶといテニスは見ていて本当に面白い。錦織選手が頭一つ分ほど背が高い海外選手の強打に食らいつき打ち負かすのを見るのは何とも気分すっきり。決してあきらめずに球を追う彼の姿勢はネバーギブアップの気持ちの強さを思い出させてくれる。見ていて勇気を与えてくれる。大好きなスポーツ・プレーヤーだ。

松山選手が活躍するUSPGAも目が離せない。メジャー制覇は本当に時間の問題だ。彼らのレベルになるとゴルフに必要なのは強靭な精神力であることがよく分かる。テニスの動に満ちたプレーと比べると ゴルフ中継は静まり返った静粛な世界だ。精神を集中し目の前の一つのプレーに絞り込む。何事にも動じない集中力のすごさ。松山選手がとれそうでとれないメジャー大会の中継を前に まだ天は試練を与えるのかと思う。プレーを見ながら思わずこちらも息を止めてしまう真剣勝負の世界がたまらない。

しかし何と言っても今年の睡眠不足の最大の原因はMLB大谷選手の活躍だ。MLBの他選手と比べ体格的にも劣らない大谷選手の活躍はまさにいろんな理由を超えた「痛快さ」そのものだ。

大谷選手がMLBでも二刀流を目指すと言った時 正直そりゃ無理だろうと思った。マー君の才能を開花させた あの野村元楽天監督でさえどちらかに絞るべきだと主張した。いやほとんどのプロ野球関係者が無謀だと言い とりわけ多くのMLBの現地関係者は半ば冷笑気味だった。

今 大谷選手の二刀流の活躍を見ながら 本当に先入観の怖さを感じている。「投げる」能力に秀でている人と「打つ」能力に秀でている人は別 あるいは 「投げる」能力を磨くことと「打つ」能力を磨くことは両立しないという先入観だ。大谷選手の痛快さは そのような先達の先入観を当たり前の事として受け入れることを拒否した点だ。大谷選手の100マイルを超す速球も 度胆をぬくホームランも痛快だが 最大の痛快さは既存の物の見方をひっくり返したところだ。

そもそも リトルリーグの優秀な選手の多くはピッチャーで四番バッター。投げる能力と打つ能力が別物などおかしいだろう。また投げる能力を磨くことと打つ能力を磨くことは本当に相いれない別の努力なのだろうか・・・そうかもしれないし そうでないかもしれない。とりわけ ある種の能力を持つ人にとってはそうでないケースが多いのではないかと思う。おそらくは 今の大リーグにも日本のプロ野球にも 能力的には二刀流として立派にやっていける人が何人もいる(いた)のではないかと思う。ただ 世の中の「常識」に逆らってその思いを貫くことができる人がいなかったのだ。

大谷選手が3号ホームランを打った後 桑田元巨人投手が「大谷選手は最初のキャリアはピッチャーとして そしてキャリア後期にバッターとして両方で記録を残す方がよい。その方が二つの良い記録を残せる」と言った。正直驚いた。桑田氏のような頭のよい人であっても 投手の成績・打者の成績という従来の常識から脱却できていない。投手・打者という既存の物差しをひっくり返そうとしていることに大谷選手の価値があるのだ。

2018年4月その2 財務省のインチキ(2/2)

(続き)
10年以上前だろうか 「正しいこと」(ダイヤモンド社)の翻訳を終わった後 金融機関向けの月刊誌にビジネス倫理に関する連載執筆を書いたことがある。その時に強調した指針の一つに 判断に迷った時には「自分の行ったことが明日の全国紙朝刊第一面に出るとすれば その新聞を家族に読ませることができるだろうか」と自問せよというのがある。「大丈夫 家族にはすべて説明できる」と思ったら 恐らくそれは正しいことだ。もしノーだったら それは恐らく正しい行為ではない。

こんなこと当たり前だと思うかもしれない。ところが事がビジネスになるとこれがなかなかに難しい。ビジネスでは 正しいことと共に利益を追求することが求められるからだ。つまり 単に正しいだけでは済まないことが多いのだ。このためには「考えること」が必要になる。

近畿財務局の決裁文書改ざんの現場職員のことを考えてみよう。森友学園の交渉を有利に進めるようにと 恐らくは本省や上司から命令されたとき あるいは 半ば強制的な忖度(そんたく)を求められたとき 彼の行ったことは 「まず 決裁文書に政治家などの介入を匂わせ この契約が尋常ものではないことを明確にしておくこと」だった。これにより 今回の格安売却は自分ひとりの責任ではないこと 自分としてはやむを得ない処置だったことを文書として残しておくことができる。現場の直属上司もこの意図を理解したに違いない。どっちにしろ 本省がこの文書を見ることはないだろうし 本省の意向にたてつけば 一生冷や飯食らいだ。

正直ずいぶんと考えた上での行動だと思う。いかに上からの命令とはいえ 誇れる行為ではないことは否定できないし 匿名でインチキ契約の存在をリークするなど他にもやれることはあったかもしれない。しかし「クビを覚悟してでもこんなインチキはやってはならない」など 誰が彼にそんなことを言えるだろうか。問題は多いが 私は たとえこの一連の経緯が明日の新聞の朝刊を飾ったとしても 彼は少なくとも家族に対しては自分の取った行為を説明できると思う。

しかし 本省理財局長の怖いもの知らずは「こんなことは到底隠し切れないだろう」という思いを持っていた現場担当者の倫理観をはるかに超えていた。直接的か間接的か 何れにせよ担当者は明確に決裁文書の改ざんを命じられることになる。そして 彼は命じられたとおりに改ざんを行う。そして 改ざんを嗅ぎつけられた担当者は自ら命を絶つ。残念だ。なぜオリジナルの決裁文書にあれだけ政治家などの関与を記したかと言えば このインチキ売却が公になる可能性があると思ったからだ。だとすれば 当然 決裁文書の改ざんもいつかは公になるだろうと推測できたはずだ。オリジナルの決裁文書を注意深く記した時と同じくらい考えをめぐらせていれば 幾つかのやり方はあったと思うのだがどうだろうか。例えば 命令された証拠や録音を残しておき ディープスロートの役割を演じるなどだ。

決裁文書の改ざんを命じられるような状況下で そんなに冷静に考えを巡らせるなどできないかもしれない。あるいはそんなに強い気持ちを持つことなど無理かもしれない。しかし相手は倫理観のかけらもない自分の利益しか考えない輩なのだ。平気で公然と嘘をつく輩なのだ・・・残念だが 「正しいことを行う」には強い心が必要なのだと改めて考えた。

2018年4月 財務省のインチキ(1/2)

これまでの日本の経済発展は優秀な官僚制度があったからこそ可能になった。だからこそ たとえ政治家が私利私欲しか考えていなくとも 国はそれなりに動くことができた・・・という昔の教えは本当に昔話になってしまったらしい。

官僚制度の頂点にある財務省のお偉方は いったい自分を何様だと思っているのだろうか?国民の税金は恐らくは自分の財布くらいにしか思ってないのかもしれない。国会議員など いつでも騙せるアホばかりだと思っているのかもしれない。

当初 現場(近畿財務局)は森友学園への国有地払い下げに消極的だったと言われている。ところが 迫田氏(元国税庁長官)が本省理財局長になって その風向きが変わったらしい。迫田氏は安倍首相の地元 山口県の出身であり 理財局長に就任後 安倍首相と立て続けに面会したそうだ。一介の局長が短期間に首相と何度も面談するのは異例だそうだ。その後 森友学園との交渉は学園側に有利に展開。迫田氏は国税庁長官に転出し 彼の後任の佐川氏が理財局長になった後に 森友学園との契約が締結される。迫田氏は昨年の参考人承知で「本件について報告を受けたことはない」と言い放った。

偏見に満ちた個人的な想像に基づいて推測すると 首相が理財局長に自分の意向をそれとなく(言質を与えないように)伝え あるいは 理財局長が総理の意向を忖度(そんたく)し 森友学園に国有地を格安で譲り渡すように近畿財務局にそれとなく(言質を与えないように)伝える。近畿財務局は本省の意向を受け あるいは忖度(そんたく)し 不正を承知でいろんな理由をつけ格安で森友学園への売却を決める。

格安売却をかぎつけられると 理財局長は近畿財務局に決裁文書の改ざんをそれとなく(言質を与えないように)命じ 国会では知らんぷりを通す。「追及が厳しくなれば 現場に責任を押し付ければよいだろう」とでも思ったのだろうか。責任の押し付けを感じた近畿財務局の担当者は自ら命を絶つ。

今回の一件が首相の意図によるものかどうかは誰にもわからない。首相夫人は素人であるがゆえに多くの危うい証拠を残したが プロはたとえ悪いことをしても証拠は残さない。森友学園の交渉段階での最高責任者である迫田氏は知らないで済ませる。逆に言えば 知っていたという証拠は残さない。途中から本件を引き継いだ佐川氏は「知らない」ではなく「存在しない」と嘘をつくことで墓穴を掘った。もしかすると本当の悪人ではないのかもしれない。

底辺で実際に手を汚すものが最大の罪を負い 上にいる本当の悪人は何の罪にも問われない。なんだか昔からのドラマで繰り返されてきたような物語に見える。

・・・(次回に続く)・・・

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