2018年2月その2 今どきの米国CATV事情
米国には4大ネットワークの地上波デジタル放送(地デジ)があるが 現実にはテレビ視聴のほとんどが有料のCATVか衛星TVだ。特に都会ではテレビと言えば有料CATVが基本で アメリカで販売されるTVにはCATV用のチューナーが内蔵されているという。こんなの常識と思っていたが どうやら今この常識が変化しているらしい。
先日 ホノルル在住の娘と話したところ 今迄契約していた有料CATVを解約したというのだ。その代りに アマゾンのプライム会員になり かつ Netflixにも加入したという。CATVが月に数十ドルしていたのに対し アマゾン・プライムやNetflixはそれぞれ月10ドルくらいなので お金的に見てもそこそこの節約になるという。
CATVの契約を辞めるという事はいわゆるテレビ放送を見られなくなるという事 つまりリアルタイムで番組を見られなくなるという事だ。それでいいのかと聞くと ニュース番組などでは多少の不便は出るかもしれないが ドラマなどの通常番組はまったく問題がない。プライム・ビデオとNetflixで十分 というか むしろ 録画なしで好きな時に好きな場所で(スマホなどで)視聴できるのでその方が便利だという。おそらくニュースもネットで十分だろうとの話だった。
米国では 私の娘のような有料CATVの契約解除者のことを「Cord Cutter」と呼び これが一般的な風潮となってきているらしい。実際に 米国では 2012年に52.60百万人いた主要CATV加入者数は毎年減り続け 2017年第一四半期には48.61百万人になった。一方で Netflix加入者数は着実に増加を続け 2012年に23.41百万人だった加入者数は2017年第一四半期には50.85百万人になっている。今やNetflix加入者数がCATV加入者数を逆転しているのだ。
背景にあるのは動画視聴スタイルの大きな変化だ。今や スポーツや海外番組だけではなく 多くのテレビ番組がストリーミングで提供されるようになっている。「好きな番組をいつでもどこでも視聴できる」時代になったのだ。Netflixでは50百万人を超す加入者数の視聴パターンを分析した上で 加入者にアピールする独自のドラマや映画まで製作している。これは CATVのみならず テレビのネットワーク局としても大きな脅威である。
この傾向は日本でも同じ。ある資料によれば 日本では20歳代のTV番組視聴時間は60歳代のそれの6割以下。年代が若くなるにつれ視聴時間は確実に短くなっている。もっと重要なのは 全ての世代で TV番組視聴時間が3年前と比べ6割近くに減少している。日本でも米国と同様 視聴者は面白くもない番組に時間をとられたくないし 決められた時間にTVの前に座るのも嫌だし 録画などの面倒な作業もやりたくなければ 決まった場所で見るのも嫌なのだ。
個人的な話をすれば アマゾンのプライム会員になりプライム・ビデオを利用しているものの 会員になったきっかけは配送の速さだ。プライム・ミュージックやプライム・リーディングのサービスなどつい最近まで知らなかった。またキンドルは持っているものの メインは未だに紙の本であり 今でも紙の新聞を購読している。SIMフリーになったスマホはありがたいしiphoneのカメラ機能もかなり使いこなせるようになったが ほとんど使わない固定電話もニコンのミラーレス一眼レフも手放せない。最近は 記念版やコンサート版に限定しているものの CDも時々は購入している。どうやら 個人的には 新旧の両方に足を踏み込んでいるらしい。幸いなのは旧時代に両足をとられているわけではなく 子供や孫とも それなりにコミュニケーションできるくらいには新時代に生きているということ。大変だと言えば大変だし 面白いと言えば面白い。