2018年5月その2 日大アメフト問題 そして 日大問題


日大アメフトのタックルの映像を見ながら東大同期でアメフトをやっていた友人の話を思い出した。大学でのアメフトの練習中に同級生が亡くなったという話だ。ただし45年前の出来事。彼の言葉によると タックルで頭がガクッと動き 脳みそが頭蓋骨の中で回転したという。

あの映像では後ろから激しいタックルを受ける直前 クォーターバックの選手は完全に力を抜き 少し頭を上げていた。首と頭がまったく無防備の状態だった。本当に危なかったと思う。一歩間違えば 命の問題 一生重大な後遺症が残るところだった。ある記事に「殺人タックル」とあったが 過言ではない。これはスポーツという隠れ蓑で行われた傷害行為である。

当然のこと 直接タックルをした選手には大きな責任がある。ただし 一人で記者会見をし 問題に自ら直面した真摯な態度は評価する。問題は こんな強い心を持てる選手ですら あの状況下で正しい判断を下せなかったという事実だ。環境と言うものは人の心を麻痺させてしまう。

今(5/24)現在 内田監督が具体的な(ケガさせてこいという)指示を出したかどうかはわからない。おそらくこれを証明するのは難しいだろう。世の中 真の悪人は自ら手を汚さないものだ。しかし彼には 少なくとも人の心を麻痺させてしまうような環境を作り出したということに対して大きな責任がある。

コーチはどうだろう。恐らくは内田監督の真意を忖度(そんたく)して具体的な指示を選手にしたのだろう。学生ではない彼の場合 結局 監督の意に添わねば すぐに職を奪われることになる。日大常務理事(人事担当)の監督に逆らえるわけがない。

こういう状況を見ていると どこかで見たような風景に思える。 当然のように忖度を期待しているが自らは手を汚さない政治家。具体的な指示を出すのは 忖度しないと左遷の憂き目にあう財務省高官。そして最後に追い詰められるのは近畿財務局担当者。

違いは日本大学という高等教育機関の中で行われた不正行為という点だ。普通の人は 政治家や霞が関の世界ではまともな人間などいないのが当たり前と思っているので 森友や加計問題が発生しても「やっぱり」と「またか」という印象が第一だろう。しかし普通の人は 「まさか大学という教育機関の中でこんなことが起きるなど・・・」思いもよらない。いったい日大ってどういう組織なのだろうか?この行為は学内の活動で行われた前例のない卑劣な傷害行為であり かつ日大常務理事が首謀者としての関与を疑われているのだ。しかしそれでも 日大理事長や学長はまったく表に出てこない。

中には この問題を聞いて「やっぱり」と思った人もいたにちがいない。日大の田中英壽理事長は数年前山口組六代目組長とクラブで歓談するツーショット写真が表ざたになり 裏社会とのつながりが噂された人物である。この写真は海外誌での掲載で明らかになった。それも日本の記者が脅しにあったため日本での発表が没になったためだと言う。

この写真が契機となり 当時日本オリンピック委員会副会長の職にあった田中理事長は結局東京オリンピックを前に副会長職を辞することになった。彼はもともとアマチュア相撲の横綱で 日大相撲部監督を経て10年間日大理事長職を務めている。間違いなく日大のドンだ。そして彼が目をかけたのがアメフト部監督の内田氏。理事長のお陰で常務理事に引き立てられた内田監督は次期理事長とも噂されていた。アマレスのセクハラ問題の会見で醜態をさらした谷岡志学館大学学長(日本レスリング協会副会長)しかり。どうやら日本の大学運営のトップは我々がイメージするような高潔なインテリとは程遠い。

さて日大のアメフト問題は必然的に日大の大学運営問題へと発展しそうな気がするがいかがだろうか。もしそうならないとしたらそれこそ日大の状況は深刻である。

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