2018年7月 高橋真梨子のアドバイス
先日 NHKのSONGSという番組に高橋真梨子が出演していた。MC大泉洋との質疑応答に答えながら歌を挟むという形式だった。
私は高橋真梨子のファンで ここ数年 毎年一回はコンサートに通っている。一時期 声力が今一つと感じた時があったが 今は昔の声質に戻っている。しかし 紅白歌合戦でガリガリに痩せた姿を見 伴侶でバックバンドのリーダーを務めているヘンリー広瀬さんの体調が思わしくないという話も耳にするなか 今のうちに生を聞いておかないとという気持ちになる。
SONGSで面白かったのは 大泉洋の「高橋真梨子のような歌手を目指す人にどのような助言をするか?助言を3つ挙げてくれ」という質問への答えだ。正確ではないかもしれないが 高梁真梨子はこう答えた。第一に「媚びないこと」、第二に「チャンスを逃がさないこと」、第三に「がむしゃらに歌うこと」。
この答えを聞いてびっくりした。なんとこの三つは私が仕事をするうえで常に意識していることだからだ。
媚びるな・・・高橋真梨子が言っているのは 自分の信念は曲げてはならない。信念を曲げてまで仕事をとろうとしてはいけない 自分を信じろ 妥協するなということだ。私の研修の仕事の場合 絶対に譲れないのに「20人という参加者の人数制限」がある。これを超えると参加者とのコミュニケーションを重視した私の研修運営がとたんに難しくなる。
ある時 日本を代表する超一流総合商社から研修の問い合わせがあった。子会社・関連会社の社長をやっている社員たちの研修プログラムに私の研修を組み込みたいということだった。ボトルネックになったのは参加者の人数だ。先方によれば 対象となるのは25人。皆忙しいので 欠席者が出る。結果的に20人くらいに収まるだろうから よいではないかという話だ。担当者の顔には「わが社の研修をすればすごいPR効果もある。この程度の要求を受け入れないのはおかしい」という表情がみえみえだった。残念だがご辞退させていただいた。たとえ相手がどんなに超一流企業であろうが 私には譲れない一線がある。私が喉から手が出るほど仕事がほしい困窮状況にあろうがこれは譲れない。
チャンスを逃がすな・・・高橋真梨子は「数多くではないかもしれないが チャンスは必ず来る。それを逃してはならない」と言った。本当にその通り。私が今「ピラミッド原則」の伝道者としてこの方面での日本の元祖とみなされているのはまさにそのチャンスを逃がさなかったからだ。1984年外資系コンサルティング会社で働いているときに「ピラミッド原則」(原書)と出会い 感激のあまり 本書の日本語翻訳を私に任せてくれとロンドン在住の著者に手紙を書いたのがすべての始まりだった。その後 紆余曲折を経て 日本語訳(「考える技術・書く技術」)の出版にこぎつけたのが1995年。原書との出会いから10年経っていた。その間 多くの日本人が原書を読んでいるはずだが 著者に直接コンタクトしたのは私だけだった。
がむしゃらに歌え・・・がむしゃらに働けということだ。決して出し惜しみをしてはならない ともかく直面する仕事に全力を注げということだ。これについては 私は人に負けない自信がある。準備もそうだが 研修クラス中(通常は4時間45分くらい) つねにどうやれば参加者に内容を理解してもらい 身につける助けとなるかを考えながら 全力投球している。65歳の今 研修が終わった後はいつも 寿命を1~2日縮めた思いがする。
高梁真梨子の話しを聞いて 仕事にかける気持ちに関しては これでよかったのだと なぜか少し報われた気がした。