2018年11月その2 死は始まり


最近TEDにはまっている。ハイテク・生物学・医学から文化・社会まで様々な知的分野をテーマにその道のエキスパートがプレゼンをするものだ。もともとはサロン的な集まりから発展したらしいが 今は 多くのスポンサーのお蔭で手軽にネットで見ることができる。ともかくこのスピーチの内容がすばらしく TEDで初めて知ることも多い。今回はそのうちの一つをご紹介しよう。死後の死体処理の話だ。

昔 カソリックでは火葬はタブーだった。しかし1963年にローマ法王庁が火葬を許可して以来 火葬が増え続け米国では今や土葬と火葬が半々になっている。近年の火葬増加の背景にはコストの問題もあるが 既存宗教離れという理由もあるらしい。もともと死後の体をどうするかは宗教そのものだったのだが この関係に変化が出てきたらしいのだ。

実際 日本の場合には100%火葬だが その後についてはいろいろな選択肢が登場している。樹木層だったり海洋散骨だったり。かく言う私も遺骨はハワイの海に撒いてくれと遺言している。ただ樹木層も捨てがたく 2年前に樹木葬の現地見学にも行ったことがある。エコ的に言えば 遺骨を肥料にする樹木葬が一番だろう・・・と思っていた。あるTEDのプレゼンを見る前までは。

TEDスピーカーによると 今 死体を土の中で腐敗させ堆肥にして植物などの生育に活かすという仕組みが実証実験に移されているらしい。死後の体を栄養物として植物などの新たな生に活かすというという考え すなわち死が新たな生につながるという自然界のルールに従おうという考えだ。

そう考えてみれば たとえ樹木葬であっても 火葬というやり方である限りエコとは言えない。棺として大切な木材を無駄にするだけではなく 火葬に伴うエネルギー消費量や炭酸ガス排出量はかなりのものになるという。我々は死という最後の段階においてもまだ地球に害を与えているのだ。樹木葬というのはエコではなく人間のエゴであり 環境問題への言い訳なのかもしれない。

実際にアメリカの農場では牛など家畜の死体をまるごと自然に分解させ堆肥にするということを昔からやっているという。家畜の死体は木のチップで覆い あとは適度の空気と水分を加えれば 牛の場合 9ヶ月程度で肉も骨も完全に分解するらしい。

牛で出来て人間でできないことはない。ただ人間の場合 歯の治療にアマルガン(水銀化合物)を使っていたり 抗がん剤が使用されていたりする。現在は これらが自然に悪影響を与えないかどうかの検証中だという。問題がないことが判明すれば施設の仕組み自体に難しいものはない。牛で実証されているのだから 世界最初の施設完成まで意外と時間はかからないかもしれない。

もちろん これは死体処理の話しであり 死に関する尊厳の気持ちとはまったく別の話しである。TEDスピーカーは こうした施設がむしろ今迄の宗教儀式から離れ 本当の意味で死の尊厳を考える機会を与えるのではないかと示唆する。死は始まりの実践だ。すばらしい。私にも新たな選択肢が増えそうだ。

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