2019年1月 JRでの出来事


あけましておめでとうございます。2019年 皆さまにとって 良い年となりますように。

さて 先週 大阪に日帰り出張した話。仕事を終え 新幹線で帰るべく 新大阪に向かった。早めについたので 券売機で早めの時間に指定席を変更し 駅弁を買い ホームのベンチで新幹線の到着を待っていた。ふと胸ポケットを探ると あるべきはずのチケットがない。大慌てで コート ジャケット ズボンのポケット カバンの隅から隅まで調べるが ない。どこかに落としたらしい。慎重な性格の私にとって初めての経験だ。何番ホームかを確かめるために新幹線の駅構内でチケットを眺めた記憶はある。失くしたのはそれ以降だ。そうこうしているうちに 新幹線がホームに到着した。

幸いにも座席番号を記憶していた私は ともかく新幹線に飛び乗った。新幹線の切符はネット(えきねっと)経由で購入し 乗車当日にクレジットカードを用いて駅の券売機で発券している。発券機からはクレジットカード購入記録書が発行されており そこには購入した新幹線のぞみの車両番号がしるされている。これを見れば 私が本当に切符を購入していることは明白だ。車掌さんに話せば何とかしてくれるだろう。

乗車後すぐに車掌さんをつかまえ事情を話した。私の楽観的な期待はすぐに覆された。車掌さん曰く この場合 新大阪の駅に遺失物として届けられていないかを調べる。もし見つからなければ 再購入が必要というのだ。クレジットカードで購入したという記録は 私がうそを言っていないという説得にはなったが それ以上の効果はなかった。車掌さんに新大阪駅に電話してもらい 遺失物の届け出をチェックしてもらった。しかし 届出はないという。彼が言うには まだ失くしてから時間がたっていないので 東京についてから駅の精算所にいってそこで再度遺失物チェックをしてもらってくれとのこと。そこでなければ再購入だという。

切符無しの新幹線の中で もう一度考えた。1階の駅構内で駅弁を買ったときか それとも2階のホームのどこかだろう。よく考えたら ホームがあやしい。しかし ホームで落としたのなら 風で吹き飛ばされているかもしれないし 気づいて拾って届け出る人などいないだろう。頭を冷やして 痛い出費の覚悟を決めた。世の中 あきらめが肝心なことはよくある。終わったことはしようがない。しかも会社経費だ。考えてもしようがないことは考えない。これは私の大事な生きる知恵のひとつだ。

ちょっと待てよ。東京駅に近づくと 新たな希望的観測が頭をよぎった。さっき精算所に行けと言われたけれど 改札所の人にまず聞いてみよう。もし心優しき人であれば だまって通してくれるかもしれない。何せクレジットカードの控えで私が実際に購入していることは明らかなのだから。だまって通してくれてもまったく誰にも被害は出ないのだ。

東京駅で わずかな期待を抱きながら改札所の人に聞いてみた。何というお役所仕事。やはり精算所に行けと言う。覚悟を決めて精算所に行き 事情を話す。結局同じ話しの繰り返し。クレジットカードの控えを見て 確かに同情は示してくれた。しかしそれ以上はお役所仕事だ。今や民間企業になっているかもしれないが 所詮 国鉄時代のお役所仕事的なものはなんにも変わっていない。若干変わったと言えば 確かにソフトになった口調だけだ。

彼によると 切符の紛失物は改札所に届けられる場合が多いので まず幾つかの改札所に電話するという。どうもなかったらしい。今度は 遺失物届出書に電話してみるという。遺失物の伝言テープを聞いているのだろうか 先方と電話で会話している様子はない。そうこうしているうちに 電話を切った。・・・そうか 痛い出費だがやむを得ない。

しかし 私に向かっての第一声は「ありました」。なな なんと。地獄から天国。聞くところによると ホームで落ちていたのをJR職員が見つけて届けたらしい。一件落着。平和な気分。さすが日本。海外だとこうはいかないだろうな。・・・しかし よ~く考えてみると 何か割り切れない。

私はネット経由でクレジットカードで切符を予約・購入し 東京駅の券売機で購入時のクレジットカードを用いて発券。指定席変更をしたが それも新大阪駅の新幹線券売機の機械経由。この間いっさい人手も現金も介していない。しかも 新幹線の中では 昔行われていた車掌さんの切符チェックも今はない。ということは 少なくともどの座席が予約されているかの情報は車掌さんに伝わっているという事だ。つまり 私は 新幹線切符の購入で キャッシュレスやネットという許されうる最先端の手法を使って切符を入手しているのだ。私がこの座席を購入したという証拠はシステムにしっかりと残っているはずだ。

もし私が殺人事件にまきこまれていたならば JRは警察の依頼を受け 1時間もしないうちに 私が実際にこの座席を購入しているというアリバイを提供するに違いない。しかし JRは一乗客の切符紛失にそこまで付き合ってはくれない。そもそも 飛行機がチケットレスなのに なぜ新幹線では未だに紙のチケットが必要なのか?

考えれば考えるほど JRの時代遅れに腹が立ってきた。確かに新幹線というハードの素晴らしさは高く評価する。しかし 切符購入などに見る乗客サービスの時代遅れは実に嘆かわしい。JRの切符購入や座席変更などのシステムはJRの業務を機械化するという合理化には役立っているのだろう。しかし 驚くことにJRのシステム化には顧客サービス強化という戦略的な側面がそっくりと抜け落ちている。やはり発想がまだ民営化していない。エアラインを見習うべきだろう。

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