2019年11月 エディ・ジョーンズ


今月初め 東京スタジアムにワールドカップ3位決定戦(ニュージーランド対ウェールズ)を見に行った。その時にふと以前見たNHKの「奇跡のレッスン」という番組を思い出した。世界のプロスポーツ界で活躍した人を日本に呼び 数日間 高校生をレッスンしてもらうという番組だ。指導者の大切さがよくわかる。

先日の再放送(オリジナルは2017年放送)で見たのは ラグビーワールドカップの元日本代表ヘッドコーチ エディ・ジョーンズが目黒学院高校のラグビーを5日間指導するという内容だった。いわずと知れた名将 エディ・ジョーンズ。2015年のワールドカップで日本を3勝させ 今度のワールドカップでは2015年に決勝進出を逃したイングランド・チームを準優勝に導いた男だ。

一方 目黒学院は関東代表として何度も花園進出を果たしたラグビー名門高校。しかし 2017年までの数年間は優勝まであと一歩及ばず 全国大会出場を逃している。今回 エディ・ジョーンズがコーチをするチームは一度も花園を経験していない。しかも エディ・ジョーンズが指導する期間はたったの5日間。それまで 目黒学院のプレーを一度も目にしていないのだ。

彼のやり方は徹底したスキル練習。すなわち 実戦練習が主体だ。テレビを見ていてよく分かったが 徹頭徹尾 実戦を意識する。実戦につながらない練習はほとんどやらない。どうやらこの指導スタイルはワールドカップに出場する代表チームでも高校生でも変わりはないようだ。

2015年のワールドカップが終わった後 エディ・ジョーンズが日本のテレビ番組でこう語っていた。「日本の選手はテクニックの練習ばかりやる。たしかにテクニックの練習は必要だが これだけでは絶対に試合に勝てない。スキルの練習が必要なのだ。」番組に出演していた日本人がこう質問した。「監督。スキル練習とテクニック練習はどう違うのですか?」エディ・ジョーンズの答えは的を射ていた。「子供たちのサッカーのドリブル練習を例にとろう。日本人の子供たちは コーンを等間隔に立てて その間をボールを転がしていく練習をする。これはテクニックの練習だ。ドリブルのテクニックを磨くにはこの練習は不可欠だ。しかし これをいくら上達しても試合には勝てない。ブラジルの子供たちは5歳になった段階で 生身の人間をディフェンダーに仕立て その間をドリブルで抜く練習をする。これがスキル練習だ。スキル練習とは実戦を意識した練習だ。これこそが勝つための練習なのだ。」

驚くことに 監督と出会って わずか5日間。目黒学院チームは生まれ変わった。その年の秋に行われた東京都大会で優勝し 4年ぶりの全国大会出場を果たしたのだ。

プロでも高校生でも指導者は本当に大切。ぜひジェイミー・ジョセフには来年の日本代表監督を受諾してもらいたいものだ。もちろん エディ・ジョーンズでも大歓迎。余談だが ゴルフの松山英樹選手はコーチをつけないことで有名だ。しかし私は少なくともパターはコーチをつけた方がよいと思う。

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