2020年2月 新型コロナウィルス 一党独裁体制 そして東京マラソン


新型コロナウィルスの感染力はただものではないみたいだ。それだけに こうした不慮の事態への対応にこそ政府の信頼性が問われている。

ニューズウィーク誌(日本版2月18日号)では 「一党独裁の病巣が感染拡大を助長する」という見出しで 中国政府の対応を批判している。武漢市で原因不明の肺炎患者が相次いで報告されたのが12月上旬。医師が原因不明の感染拡大と警鐘を鳴らし 武漢市当局が原因不明の肺炎患者27人の存在を明らかにしたのが12月下旬。12月末に国家衛生健康委員会が武漢に専門家を派遣している。彼らの武漢視察はその夜の国営テレビ局でも報じられたと言う。

すなわち12月末時点で中央政府は感染拡大を認識していたはずだ。しかし 1月3日には 逆に 警鐘を発した医師たちを処分・摘発。感染報道はその後1月半ばまでシャットアウトされた。その間 党指導部による公の対策はまったく公表されず 習近平が「重要指示」を出したのは1月20日になってからだった。

ニューズウィーク誌はこの状況を「一党独裁国家のソフト上の欠陥」と読んでいる。独裁国家の下 秘密主義が蔓延し 報道の自由も政府による国民への説明責任もなく 官僚制度は硬直化している。これでは危機に直面しても迅速な判断を下すことはできない。この欠陥は中国の現体制が抱える根深いものであるため たとえ今回の騒動が収束したとしても 体制が変わらない限り 何度でも歴史は繰り返すだろうと締めくくっている。

ひるがえって我が国を見た場合 安倍長期政権にも同じようなことが言えないだろうか。党内に対抗者と呼べる者が見当たらず 政権内の多くはイエスマンで固められている。報道の自由は存在するものの 官僚制度は硬直化し 証拠文書は秘密裏に廃棄され 国民への説明責任は見事なほどに無視されている。こんな状況で感染症への迅速な対応など期待できるものではない。

今回の新型コロナウィルス対策を見てもすべてが一歩遅いし 詰めがあまい。中国からの渡航禁止にしても クルーズ船隔離にしても 検査体制や問い合わせ体制にしても マスクの増産体制や抗HIV剤投入にしても すべて一歩遅い。もちろん 現場には大きな使命感で困難に対処している多くの人がいることは承知している。しかし皆を指導し対策をリードする立場にある人たちが どうも トップの意向を忖度しながら 言われた仕事だけをしているように思えてしようがない。とても中国の独裁体制を批判することなどできない気がしてしまう。

さて この感染問題のために東京マラソン(一般ランナーの部)が中止になった。例年にないトレーニングを重ね 気合を入れて準備してきただけに残念で仕方がない。しかし 結果としてはやむを得ない処置だと思う。とりわけ ゴールした後 閉ざされた更衣室での着替えと休憩は 一人でも感染者がいればアウトだろう。まあ諦めよう。

しかし 説明なしの16,000円の参加費全額没収は納得できない。数年前 台風直撃により横浜マラソンが大会の前日昼過ぎに突然中止決定されたことがあった。その時も 翌年の参加はOKだったが 参加費用は別途に払わなければならなかった。これと同様の処置と言えば それまでだが 今回は若干内容が異なる。

東京マラソンはエリートランナー参加だけではあるものの 開催される。一般ランナーの参加はダメだが マラソン大会は開催されるのだ。つまり このエリート参加だけの東京マラソンの実施費用を 参加拒否された一般ランナーの参加費で穴埋めしようということの是非だ。

もし参加費用を返還しないのであれば 少なくとも 東京都は東京マラソンの予算・収入費用状況をつぶさに公表し 一般ランナーの納得を得るべきだ。一説によると10数億円と言われるスポンサー収入はどうなるのか 今回のエリートランナーだけで開催する費用は完全中止の場合の費用と比べてどう違うのか。

ちなみに今日現在 中止となった一般ランナーへの詳細説明は一切ない。今のままでは 中止になった一般ランナーの参加費用はすべてオリンピック・ランナー選出のための費用に充当されるように見える。これは納得できない。

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