2020年3月 恐怖の感染


このウィルスの感染力はただものではない。新型コロナウィルスの話ではない。インフルエンザの話だ。米国CDCの発表によると 今シーズン 2月8日時点で インフルエンザ患者数は2,600万人 入院者数25万人 死者数1万4千人。つまり 今年2月8日時点で 米国全人口の8%近くがインフルエンザに感染しており この数はまだまだ増えている。今年はかなりひどいらしいが それでも前代未聞というわけではない。米国では インフルエンザによる死亡者数は例年1万2千人以上あり 大流行した2017/18は4,500万人が感染し 6万1千人が死亡している。

日本でも 昨シーズンのインフルエンザ死亡者数は3,300人に上っている。日本は米国の1/3程度の人口なので 人口比で見ると 米国とほぼ同じ割合だ。ちなみに 日本での昨年1月のインフルエンザ死亡者数は1,865人 つまり一日に60人がインフルエンザで亡くなっている。犠牲者の多くは子供や高齢者で 状況は毎年同じようなものだ。

これを日本の11倍の人口がある中国に人口比換算すると 中国ではインフルエンザで毎年3万数千人が死亡していることになる。ちなみに 2月29日現在で 中国における新型コロナウィルスの死者数は2,800人と報告されている。

素人意見だが どう見てもインフルエンザの方が新型コロナより危険だ。実際に米国の某感染症専門医は「インフルエンザの方が新型コロナウィルスよりも感染力が強く 感染者数ははるかに多い」と語っている。インフルエンザ・ウィルスは常に変異を繰り返し感染力を高めているので その対処は実に難しいらしい。

しかし インフルエンザに鈍感な各国政府も 新型コロナには異常ともいえるような反応を見せている。今注目されている2011年の米国映画「Contagion(感染)」のキャッチコピーは 「恐怖はウィルスよりも早く感染する」だった。しかも 感染する恐怖はウィルスそのものよりも大きな影響力を持つ。全く個人的な感想だが 新型コロナウィルスの状況はまさにこれではないかと思う。

2月27日 新型コロナウィルス感染拡大の鎮静化のため 安倍総理は全国の小中高の学校閉鎖を命じた。インフルエンザは学級閉鎖程度なのに 今回は全国一斉だ。働く母親たちのためのバックアップ体制がきっちりと準備されているのかという大きな疑問は残るし 当初の稚拙な発表の仕方もどうかと思う。けれども 今回の安倍総理の決定そのものは正しいものだったと私は思う。

新型コロナはインフルエンザほどではないと言いながら なぜそんなことを言うのか?

最大の理由は 「恐怖はウィルスよりも早く感染する」からだ。新型コロナは未知のウィルスであり ワクチンも治療薬も存在しない。たとえ 新型コロナがインフルエンザほど怖くはないものだったとしても 未知のものへの恐怖は実際持つべき恐怖の何倍・何十倍に膨れ上がるだろう。そして その恐怖はウィルスそのものよりもはるかに恐ろしい結果をもたらしかねない。地域が封鎖され 物流がストップし 非合理な偏見や差別が拡大し 欧米の地下鉄ではアジア人への暴力事件さえ発生している。今回の措置によりウィルス感染者・死者の増加が収まれば 恐怖の感染も収まってくるだろう。学校閉鎖はウィルス対策と言うよりもウィルス恐怖封じ込めのために必要なことだったと私は思う。・・・最後に 映画「Contagion」は今ひとつの出来でした。

>> 過去のひと言