2020年7月 オンライン研修始まる


7月中旬 オンライン研修をZoomで2社に実施した。ここではちょっとした感想を述べたい。

結論から言えば 顧客の主催者側(研修担当)の反応としては2社とも「オンラインで全く問題ない」との評価だった。まずは一安心。ただし 講師としての立場から言えば やはり集合研修の方が格段にやりやすいというのが素直な感想だ。

私の研修は15~20名の参加者を対象とするが オンラインでは この人数になると参加者の反応がよみづらい。一人一人の映像が小さくなるからね。これは覚悟していたことだったが それに輪をかけるのがギャラリービュー表示の変化だ。休憩のたびに 当然 ギャラリービューでの参加者表示の配置が変化する。こんな些細なことが講師には結構な影響を与える。つまり 配置の変化により 顔と名前と印象がなかなか一致しないのだ。

集合研修の場合だと 座席の位置が決まっているので たとえ20人の参加者でも この名前の人はどこの席に座っていて 私の質問にこれこれの反応をしていたなどが 脳に総合情報としてしっかりとインプットされる。しかし オンラインで表示配置がちょくちょく変わるとこれが上手くいかないのだ。人間の脳は いろんな情報を関連付け総合情報として処理する能力がずば抜けているのだが 表示配置の変化がこれを阻害するのだ。

蛇足だが オンラインだと口の動きと音声が合わないことがある。映像処理と音声処理が別々に処理されているからだ。コンピュータでは個別の処理は得意だが 情報の統合処理に関しては人間の脳にはかなわない。脳の動きを助けるように Zoomにはギャラリービューの配置をある程度固定化できるようなオプションが欲しい。

さて 私の研修の場合 集合研修ではクラス内で全員の予習解答をその場で添削するので この作業に若干時間がかかる。一方 オンラインの場合 事前に提出した解答の一部しか添削せず 他の解答は後で添削結果を送付する形をとる。したがって 集合研修で4時間45分くらいかかる研修だが オンラインだともっと短い時間で済むだろうと高をくくっていた。しかし 実際は大違い。オンラインも全く同じ時間がかかってしまった。

原因は恐らく丁寧すぎる(?)説明によるものだと思う。オンライン研修の場合 当然参加者にはミュートで参加してもらい 質問がある時や私の質問に答える時に 自分でミュート解除をしてもらう。実際には 私の質問に答える時を除いて 研修中の音声はほとんど私の声だけだ。参加者の反応がつかみづらく しかも聞こえるのが自分の音声だけとなると 分かってもらえているのかどうか不安心理が働く。結果として よく言えば説明が丁寧に 悪く言えば説明過多になる。そして私は音声が途切れないように4時間45分しゃべり続ける。集合研修も終わった後にかなり疲れるが オンライン研修の疲れはその比ではない。喉も眼も疲れる。

ミュートの話が出たついでに言えば これは参加者にもデメリットだと思う。集合研修の場合 質問があればその場で発言するだけなのだが オンラインではそうはいかない。オンラインの場合 参加者は講師と直接顔を合わせていないので講師がどういう性格なのか分かりづらい。したがってそもそも質問がしづらい。その上 質問するには ミュート解除というワンステップがはさまるので余計に質問しづらい。これはどうしようもない。

さて 参加者からでた予想外の反応は 資料が見やすいというものだった。集合研修では資料をプロジェクターでスクリーンに映写する。かなり大きなスクリーンに映すが 場合によっては壁をスクリーン代わりに使用することもある。また参加者の手元の明かりを確保するために真っ暗にはできない。従って よほど高価なレンズを装備したプロジェクターでない限り 見やすさには限度がある。それに比べると オンラインの場合 説明資料が自分のPCにくっきり映る。言われてはじめて気づいたが これは重要かもしれない。特に目がよくない人にはオンラインは楽だろう。

先に 参加者表示の配置が変わるので 講師としてはやりにくいと話した。しかしこれは参加者にとっては別の効果があるらしい。私から参加者に質問を投げかける場合 集合研修では席順に質問する。しかし オンラインだとギャラリービューの配置順に質問することになる。ところが この配置が休憩時間のたびに変わるし そもそも私のビュー配置と参加者のビュー配置は同じではない。ギャラリービューを非表示にしている参加者もいる。したがって参加者から見ると次に誰に質問が来るのかまったく予想がつかない。これがかなりの緊張と集中を与えるらしい。少なくとも研修管理者から言えば これはメリットらしい。

最後に実際に主催者としてZoomを使ってみてその機能に関心した。Zoomの場合 デュアルモニター機能があるのだが これが主催者にはとても便利だ。私は1台のモニターで参加者のギャラリービューを もう1台で私の映像画面を表示している。これにより常に参加者全員の顔を確認することができる。現状9人までしか表示できないTeamsなどは論外だが Zoomでもデュアルモニター機能がなければ 常に20人の顔を見ながらの運営は難しい。またビデオスイッチャーで映像切り替えする私は Zoomの共有画面機能はまったく使わないのだが この共有画面機能を使わずに資料画面をスポットライトしたりできるのも便利だ。

良くも悪くも “With コロナ”の時代には オンライン研修は不可欠だろう。4時間45分に耐えうる喉と眼をケアするしかない。

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