2020年11月 シェークスピア


コロナ騒動で延期になっていた研修が9月、10月に集中復活し まったく休みの取れない状況だった。今ようやく一段落。気づいてみれば、9月も10月もこのHPの一言欄をほったらかしにしていた。ごめんなさい。

いまようやく 忙しさにかまけて放っていた今年の目標の一つに取り組んでいる。それはシェークスピア全集の読破である。もちろん 日本語です。

私の夢の一つに推理小説ライティングがある。今 ロジカル・ライティングの研修を主な活動にしているが この対極に位置するストーリー・ライティングにいつか挑戦したいと思っている。この勉強を兼ねて 数年前アメリカの著名な推理小説・探偵小説を百冊以上読み漁った。目的はストーリー展開の勉強なので 読みながらストーリーを書き留めるという読み方だ。正直 結構時間がかかる。

実はこのつながりで 昨年末シェークスピアを読み返そうと思った。戯曲展開やストーリー展開の勉強が主目的なので 推理小説と同様に読みながら展開をメモに残している。おそらくはシェークスピアの最大の魅力は何とも言えない言葉の力なので ストーリー展開を重視した読み方はもしかしたら邪道かもしれない。とはいえ 推理小説であれ戯曲であれ 表現の世界とストーリー展開の世界 この二つの融合こそがストーリー・テリングの究極。シェークスピアをこういう風に読むのも許されると思う。実際 「ハムレット」にしろ 「ロメオとジュリエット」にしろ シェークスピアの名作といわれるものはこの2つの調和がすばらしい。シェークスピアと比べるのはどうかと思うかもしれないが 米国で有名な推理小説家 レイモンド・チャンドラーの人気も 何とも言えない描写力とストーリー展開の調和だろう。

さて37ある全集もあと3作というところまでこぎつけた。来月初めには読破できそうだ。ちなみにシェークスピアの37作品は出版順に番号が振られている。これらは一般的には 歴史劇 悲劇 喜劇の3つに分けられているが 出版順はばらばらだ。全集の最初を飾るのがシェークスピアの最初の作品と言われる「ヘンリー六世3部作」。私もこの作品から読み始めることにした。

ちなみにシェークスピアの歴史劇というのは英国のばら戦争時代(白バラのヨーク家と赤バラのランカスター家の争い)を描いた作品を指す。しかし日本人にはなじみの薄い世界だし 出版の順番と時代がまったく不一致なのでなかなか読みづらい。ちなみにヘンリー六世の三部作のあとがリチャード三世、11番目にリチャード二世、15/16がヘンリー四世という具合だ。しかもシェークスピアの歴史劇はリチャード三世を除いて主人公が明確に絞り込まれておらず登場人物が多い。とても斜め読みなどできない。というわけで、まずは、ヘンリー六世を読んだ後、歴史劇に集中して作品を読むことにした。ヨーク家やランカスター家の系譜図を横に置いて読むことになる。悲劇・喜劇は後回しだ。

新宿の初台にある新国立劇場ではシェークスピアの歴史劇を2009年からシリーズ上演しており 先月(2020年10月)に最終作「リチャード二世」(ばら戦争の発端を扱っている)でシリーズを完結した。ちなみに出版順の上演だった。このシリーズ物は時間が許す限り観劇したが なかなかの出来だった。その中でもやはり一つを選ぶとすれば 「リチャード三世」だ。つい先日 新国立劇場で過去に劇場公開したものの上映公開を見たが 読んでも見ても やはりシェークスピアの歴史劇の中で最高の出来はこれだ。

リチャード三世といえば 兄や幼い甥をはじめ 王の座を得るためには邪魔者をすべて殺すという史上最も残酷な王として描かれている。彼は 最後の戦いで戦死した後 丸裸にされ晒されたという。バラ戦争は彼の死で終わりを告げる。2012年にレスター市の駐車場の地下から遺体が発見され DNA鑑定により本人であることが確認されている。劇に描かれたようなせむしであったことが分かったほか 戦いによる多くの傷があった。致命傷は兜の隙間を貫いた脳内10センチに及ぶ刺し傷だった。まさにシェークスピア歴史劇にふさわしい人生だったのだろう。

とはいっても シェークスピアのシェークスピアたるゆえんはやはり悲劇。「リチャード三世」だって 歴史劇という枠を外せば 悲劇といえる。これについてはまた別の機会でしゃべらせていただこう。

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