2022年4月 世界のリスク
世界のリスク
ウクライナ紛争を目に先日のニューズウィーク日本版(2月15日号)の特集記事を思い出した。1月初めに発表された 地政学分析の権威 イアン・ブレマーによる「2022年を襲う世界のトップ10リスク」の特集だ。
リスク第1位は 中国ゼロコロナ施策の失敗
第2位は テクノポーラー世界
第3位は 米国の中間選挙
第4位は 中国の国内回帰
第5位が ロシア(ウクライナ紛争を含む)
第1位に輝いたのは「中国のゼロコロナ政策の失敗」だった。今まさに コロナ拡大の国際都市 上海で起こりつつある問題だ。ブレマー氏はオミクロン株の登場により ゼコロナ(コロナ封じ込め)政策は失敗に終わると予想している。
ゼロコロナ政策により 中国人の多くはコロナ免疫がない状況が続いており しかも 中国製のワクチン効果には大きな疑問が残る。ところが ゼロコロナ政策の成功を誇らしく喧伝してきた習政権はこの方針を変更することができない。そのうち感染が拡大し 今迄以上に厳しい更なるロックダウンが必要になる。結果として サプライチェーンの混乱に拍車をかける。当然 世界経済への影響は不可避だ。国内経済への打撃は計り知れず 国民の不満は高まる。政府は混乱を最小に抑えるために市場への介入を図る。結果として 事態は我々の想像を超えて悪化する。はたして習近平体制はこれを乗り切れるほど盤石なのか。
一方 ロシア・リスクは第5位に挙げられている。ロシアのウクライナ侵略の可能性(発表当時)を含め 米ロ関係の不安定化 エネルギーをロシアに依存する欧州とアメリカの関係の危うさ ロシアによる米国中間選挙への妨害工作 更には中ロ関係強化いかんによっては中国の南シナ海の軍事行動が拡大する可能性も挙げている。
それでも ブレマー氏は ロシア・リスクは中国リスクと比べると相対的なリスク度合いは低いと見ている。ブレマー氏の予測は1月初めのものなので プーチンの暴走は想定外だったのかもしれない。しかし現実を見ると 中国の人口はロシアの10倍 経済規模もほぼ10倍。防衛予算に関しても 中国はロシアの4倍に上る。これがロシアの現実なのだ。
リスクのつながり
ただ ウクライナ紛争と中国のコロナ問題を目にして私の頭をよぎったのはリスクのつながりだ。
ウクライナはどういう形で決着するのか あと数か月後の話なのか あるいは数年にわたる長期戦争となるのか まったく見えない。もともとウクライナ東部ドネツクが長年にわたり紛争中であったことを考えると 東部地域を中心とした戦争状況が長期化しても何ら不思議はない。戦争の長期化とは戦争の日常化だ。世界を見渡すと アフガニスタン シリア リビア イエメン など戦争・紛争が日常化している例はあまりにも多い。
ウクライナ戦争の長期化など想像すらしたくない事態だが 長期化する場合 経済的に弱体化するロシアの後ろ盾になるのは中国しかいない。そこで改めてクローズアップされるのが ブレマー氏が最大リスクに挙げた中国のゼロコロナ政策の失敗だ。果たして 習近平はこのリスクを抑え込むことができるのだろうか。このリスクを抱えながら ロシアとの連携を図ることができるのだろうか。中国リスクが我々が思う以上に習近平に大きな打撃を与えるとすれば ロシアのウクライナ戦争に影響が出ないとは言えない。
もちろん私は専門家ではない。しかし どうもこの一見無関係に見える2つのリスクは最終的に大きく関連するのではないかと思える。ゼロコロナ政策の失敗が習近平の足を引っ張り それがプーチンの失脚につながり それがウクライナ戦争の早期終結に結びつく・・・そんな可能性はないのかと密かに夢想している。