2022年12月 変化


40歳代の頃は 経営コンサルティング8割 研修2割ていどの配分で仕事をやっていた。ある時期 コンサルティングを一人でこなすのに体力的・精神的な限界を感じ50歳をめどに仕事の中心を研修に切り替えることを決めた。計画的に切り替えを進め 1年半かけて 仕事の9割を研修に振り替えることに成功した。しばらくは顧問的な業務もこなしていたが 実質 この時点で経営コンサルティングを卒業した。

経営コンサルティングでは 企業再建なども手掛けたが 仕事の多くはマーケティング戦略に関するものだ。業種は問わない。自動車業界 化粧品業界 出版業界 化学業界じつにさまざまな業種を経験した。そのせいもあり 長年 某コンサルティング会社の新入社員向けにマーケティング戦略を教えている。

この研修では多くの実例を議題に挙げる。何か問題がありそうだ このままではやばいかもしれない 何か変化が必要だと思いながら実例を選択する。おもしろいのは 取り上げた実例がその後本当に変化する場合があるのだ。さすが 目の付け所がよいのかも。

たとえば セグメンテーションの勉強では ずいぶん昔からパソコンのデル社を取り上げている。長く取り上げていると デルのセグメンテーションの考え方が少しずつ変化しているのが見える。テーマは「なぜ変えたのか」だ。よく観察すると まさに時代を反映した変化であることがよくわかる。

一番驚いたのは 東急ホテルズの課題だ。東急ホテルズのブランド展開には問題があると思いブランド戦略の課題にとりあげた。「今のブランド戦略にどのような問題があり あなたならどのようにブランド戦略を変更するか」がテーマだった。すると 課題に取り上げて2年後 本当にブランド変更が発表された。「東急イン」と「ビズフォート」という2つのブランドを統合し 東急REIという新ブランドを立ち上げたのだ。それに伴い 幾つかの個別ホテルの看板も掛けなおしている。そこで課題のテーマは 「なぜブランドを変更したのか このブランド変更は正しい判断だったのか 長期的にこれでよいのか」となった。正直 私に言わせれば まだまだ改善の余地はある。これで終わりには見えない。個人的には 数年のうちにまたブランド戦略の変更が必要になると思っている。東急ホテルズの課題はまだまだ私の研修に残る。

2018年にトヨタ・クラウンがフルモデルチェンジした時 このクラウン(15代)を課題に加えた。テーマは「この2018年のモデルチェンジが成功と言えるかどうか 次のモデルではどのようにモデルチェンジし どのように位置づけるべきか」だ。

クラウンはトヨタ・ブランドの中では最高峰のカーライン。「いつかはクラウン」で有名になった。ブランドとは他者との差別化が目的であるが 「クラウン」はそういう意味で大成功した例だ。クラウンと聞いただけで 誰もが 大企業である程度成功を収めた人が乗る国内最高峰のセダンとイメージする。ブランド名を聞いてここまでユーザーを明確にイメージできる商品はめずらしい。商品の特徴としては この15代まで国内専用(輸出はない)のセダンであること。また 高級車を象徴するかのようにエンジンはFR。ハイエンド・モデルは3.5リッターV6のハイブリッドという 今ではあまりお目にかからない高級仕様だ。問題はこの強烈なブランドが中高年/国内/セダンという成熟(縮小?)市場で成り立っていることである。

そして今年(2022年) 9月 クラウン・ブランドの限界論も出始める中 クラウンのフルモデルチェンジが発表された。クロスオーバー(セダンとSUVの合体)が先行発売され、その後に、セダン、スポーツ、エステートなどのモデルが続くらしい。セダンの詳細が不明なので比較できないが 国内専用車からグローバル車に大胆な衣替えをし 車体もワンサイズ大きくなった(逆にいえば 日本で重宝するサイズではなくなった)。また 少なくとも今のクロスオーバーは2.5リッター 直4のハイブリッド。希少価値にも見えた3.5L V6 ハイブリッドのエンジンは姿を消したようだ。デザインは今までのクラウンからは想像もつかない若者向け。どうやら 今まで成熟市場(中高年/国内/セダン)の王様クラウンを 成長市場(若者/グローバル/SUV)に向けて焼き直したように見える。乗ったことがないのでわからないが なぜ同じクラウンの名前である必要があるのか 見た目では全く理解できない。

15代クラウンの最大のライバルは 私の見る限り レクサスのセダンだった。この新しいクラウンはそもそも何と競合しようとしているのだろうか。少なくとも私には新しいクランに今までのような「クラウン」の主張(特徴)が見えない。悪く言えば 市場への迎合にも見える。・・・ただし これを論じるには丸一日必要なようだ。残念ながら 私のマーケティング戦略の課題としては荷が重すぎる。しばらくは私の課題から外すことにした。

それにしても変化は絶えない。マーケティングで大切なのは好奇心だ。さて2023年はどのような変化が見られるのだろうか 何が私の好奇心を駆り立ててくれるのだろうか ワクワクしている。2023年が皆さん方に取り 健康でワクワクとした年でありますように。

 

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