
2025年トラックメーカー概観
最近 トラック業界の再編に関する記事に目が留まった。乗用車業界では日産のみっともない話が目を引くが よく見るとトラック業界はよほど戦略的にしかも着実と事が進んでいるようだ。
私事で恐縮ながら 1985年暮れ 経営コンサルタントになって最初に任された仕事がトラックのアジア市場戦略調査だった。当時は ダイムラーがダイムラー・ベンツと呼ばれ 商用車部門を別会社化する以前だった。その時 ダイムラーはインドネシアをはじめとする東南アジア市場で日本のトラック・メーカー とりわけ三菱に押され気味だった。当時 ダイムラーのトラック責任者と話したところ なぜ三菱があの価格でトラックを作れるのか全く分からないと嘆いていた。それから20年後 2005年にダイムラーが三菱ふそうを三菱自動車から買収することになる。20年かけた執念とも言えるだろう。
ダイムラーが三菱ふそうを手に入れた翌年 2006年 日産は日産ディーゼルの株式をボルボに売却。2010年社名をUDトラックスに変更した。この時点で国内商用車シェアは 1位いすず、2位日野、3位三菱ふそう、4位UDトラックスだった。ボルボも世界トップ10に入るトラック・メーカーだが 国内的にみると いすず/日野/ 三菱ふそう/ UD(旧日産ディーゼル)という4社体制に変更はない。しかし冷静に見て 日本に4社もトラック・メーカーは要らないだろう。そして当然の流れのように 2021年 いすずがUDトラックスを買収。これで商用車は3社体制になった。
そしてつい最近 日野と三菱ふそうが対等統合し 別途にダイムラートラックとトヨタが対等出資する持ち株会社を設立。その持ち株会社が日野と三菱ふそうの統合新会社を保有するという発表があった。ちなみにダイムラーは三菱ふそうの9割近くを保有する親会社で トヨタは日野の過半数を保有している。この統合の話は2023年には合意していたことのだが 日野の検査データ不正問題の処理のために実施が伸ばし伸ばしになっていた。
これで国内のトラック・メーカーは実質いすずとトヨタ・ダイムラーの2グループ体制になった。一方 世界的にみると もともとダイムラーは実質世界トップのトラック・メーカーだし いすずや日野も世界トップ5、6に位置づけられるメーカーだ。なぜここにきて そんなに統合を急ぐ必要があるのか。
理由は中国だ。世界の商用車トップ10には 第1位の東風汽車をはじめ 中国重型 中国第一汽車 陜西汽車など4社が名前を連ねている。そして 中国メーカーのトラック・バス分野での自動運転化・水素燃料化の動きはとてつもなく早い。もっと熾烈な中国vsユーロ・ジャパン連合の戦いが進展するに違いない。