2026年5月 期間限定


先日 テレビで昭和のフォークソング特集番組を見ていた。フォークグループ「かぐや姫」のウッドベース奏者 山田パンダさんが番組のガイド役を務めていた。驚いたのは かぐや姫再結成(第2期)時に リーダーの南こうせつさんからバンドに誘われたとき 3年間という期限を条件に参加することにしたという話だ。そして 実際に3年半後 当初の約束通りに解散することになった。「神田川」の大ヒットでかぐや姫が絶頂期にあった時だ。フォーク音楽史では有名な話しらしいが まったく知らなかった。

実は私にも同じような経験がある。私が40歳の頃だった。数年先輩の元マッキンゼーの友人と元ブーズアレンで経営コンサルタントの経験がある私は 共同で 経営そのものに踏み込んだ理想の経営コンサルティング会社を創ろうと話をしていた。

友人は「この会社は5年間限定にしよう。自分は5年後にはこの会社を辞める。おそらくは経営コンサルタントも辞める」と切り出した。友人はこういう事には決して嘘をつかない。私はそれに合意した。当時 私が考えたのは 「① 二人とも上手く行かなければ何れにせよ5年ももたない。② 片方が成功し どちらかがどちらかを頼るようになれば共同で会社を創る意味そのものがない。③ 二人とも上手くいけば いつか会社の方針に関して意見が分かれるだろう」とということだ。そして 二人が全力でやれば 恐らくは ③の可能性が一番高いだろうと考えた。その場合 5年というのはちょうどよい時期だろう。

実際には それなりに準備して始めたので 最初の数か月はうまく行った。しかし その後の半年は大赤字の綱渡り状態だった。ちょうどその頃 友人が執筆した本がヒットし いろいろの企業から引き合いが来始めた。おかげで危機を乗り越えた。しばらくすると 私自身の活動も実を結ぶようになり 共同会社は上昇軌道に乗った。そして 会社結成からちょうど5年後 業績が順調に推移していた会社を整理することにした。ハッピー ハッピー。その後 パートナーは地元の四国に戻り 地元経営者の育成に尽力。私は自分一人のコンサルティング会社を設立し 徐々に教育活動に力点を移すことにした。

かぐや姫も私たちの会社も 結局は個人能力が核になるので こういうことをやりやすいのだろう。永続性や拡大を前提とする会社組織においては難しいかもしれない。しかし この期間限定の考え方は プロジェクトベースであれば通常のビジネス組織でも十分に活用できそうな気がする。あらかじめ「終わり」を決めることにより エネルギーを一点に集中させたり マンネリを防いだりするやり方は魔法のような効き目があるものだ。何せ失敗したらまたやり直せばいいのだから。

個人的な意見だが 期限限定プロジェクトの留意点を挙げておくと

  • 「終わり」が見えるからこそ目的に向けて全力が出せる。当然 期間が長すぎると効果は薄れる
  • 期間中は全力を出すので正直このやり方は疲れる。3年期限のプロジェクトを何度もやらせるというのは難しいかもしれない。少なくとも終わった後の休憩・気分転換は必要だろう
  • 全力投球を促すための成果報酬などとともに ダメだったらやり直せばよいという楽観主義のバッファーが欲しい
  • また意外なメリットだが 人間関係のいざこざが防げる。つまり あと2年と思えば 多少の衝突も目的達成のためと割り切れる

パーキンスの法則によれば 「仕事の量は 完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」。「いつまでも続く」と思うと 人は無意識にペース配分をし 妥協し 現状維持に走る。しかし 3年や5年と区切った瞬間に その期間は「今までの延長」ではなく「新たな挑戦」に変わる。力の原動力が生まれるのだ。お試しあれ。

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