2026年6月その2 あいまい言葉


私の研修では、考えを表現するときには決してあいまい言葉を使わないように指導している。しかし これが本当に難しい。
「あいまい」を英語で言うと「vague」または「ambiguous」となる。Vague とは具体的なイメージを思い浮かべることができないという意味。Ambiguousは二つの意味にとられるという意味。ちなみに「amb」は「両方」を意味する接頭語。たとえば「Ambivalent」は「どっちつかず」。日本語では「具体的にイメージできない」あるいは「いろんなイメージに取られる」表現をまとめて「あいまい」と称している。めずらしく英語の方が繊細だ。
さて なぜ「あいまい言葉」がダメなのか。当たり前だが あいまい言葉を使うと状況が正確に伝わらない。そこで 「あいまい言葉を使わないで表現して」と言うと たちまち言葉に詰まってしまう。なぜならば そもそも頭の中の考えがあいまいだからだ。ここがポイントだ。あいまい言葉を使うと状況が正しく伝わらないのは問題だが 本当の問題は頭の中のあいまい状況にあるのだ。私が指導しているのは あいまい言葉を使わないようにすることにより頭の中のあいまいさを許さないようにしようということなのだ。つまり「頭の中の考え」と「その考えの表現・言葉」とは双方向の関係にあるのだ。
実は 私が翻訳した「新版 考える技術・書く技術(Pyramid Principle)バーバラ・ミント著」ではこの辺はほとんど触れられていない。欧米ではあまり問題にならないのか あるいは大学ですでにしっかり勉強済みだからなのか よく分からない。私自身は この辺はとても重要だと感じているので小著「入門 考える技術・書く技術」や私の研修ではかなりの力点を置いている。
もう一点 「あいまい言葉」の本当のリスクは実は「責任逃れ」風土の蔓延にある。多くの人が 表現をクリアにすることを無意識のうちに(あるいは意識的に)避けようとする。明確に表現すると言葉に責任を取らなければならなくなるからだ。これを放置すると 社内文書にあいまい言葉がまかり通るようになる。「あいまい文化」(責任逃れ文化)の蔓延だ。大企業病の一症状である。大企業なら あいまいにしておいても 普通はいつか誰かがやってくれるので普段はあまり問題にはならない。
しかし 非常事態にはそうはいかない。以前 某大企業で研修の説明に呼ばれたことがある。この「あいまい言葉」の説明をしたところ 人事(研修担当者)の顔色が変わり 結局こんな危険思想の研修はやれないとなった。あとで耳にしたところ この大企業のメモや書類では「あいまい言葉」のオンパレードだったそうだ。この大企業はその数か月後に大きな自然災害に見舞われ 対応がうまく行かずに取り返しのつかない大事故を引き起こすことになる。誰もが知るあの大企業だ。この時 私は「あいまい文化」(責任逃れ文化)の蔓延を確信した。
皆様方の組織はどうだろうか。以下のような「あいまい言葉」がまかり通っていないだろうか。
● 営業組織の見直しが必要だ
● 経営戦略の再構築が必要だ
● A事業のテコ入れが必要だ
● 来期の節電計画は適切なタイミングで実施すべきだ
ご注意あれ。

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