2026年8月 高校スポーツの育成に学ぶ


孫が所属する東海大相模のラグビー部が今年は今一つ振るわない。年初の花園では準々決勝まで行き強豪東福岡と互角の接戦を演じたのだが・・・。実はその時のチームは3年生の巨漢・強力フォワードがずらりと並んでいた。フォワードの平均体重は全国一と言われるほどだった。今考えると強力フォワードに依存しすぎていたかもしれない。その3年生がみな卒業してしまった結果 フォワード重視のスタイルは通用しなくなった。当然 展開を重視したスタイルに切り替えてはいるものの 強力フォワードに頼ってきたツケは小さくなかった。今の多くのレギュラー選手(つまり前チームの控えメンバー)にこの新スタイルへの実戦経験が決定的に不足していたのだ。
また高校野球では 夏の甲子園神奈川県予選で 東海大相模は今年ついにシード校にも選ばれなかった。結果 4回戦で横浜高校に敗戦。しかもコールド負けだった。ここしばらく野球は苦戦している。
そう考えると 高校の団体スポーツで強さを維持することがいかに難しいことかがよくわかる。毎年三年生が卒業し 主力選手が大きく入れ替わる。新チームのメンバーはほとんどが前年は控えの選手ばかりだったはず。しかし それにもかかわらず 多くの全国大会常連校は何年にもわたり強豪であり続ける。なぜこんなことが可能なのか。
おそらくは 毎年 選手が入れ替わるのを前提にして チームを育成する・・・その「育成の仕組み」に違いがあるのだろう。以下は 育成の仕組みに関して 高校ラグビーに学んだ独断と偏見にもとづく私の考えだ。
  • まず重要なのは「徹底した実戦重視のトレーニング」だと考える。東海大相模のラグビー部員を例にとると そのほとんどは小学生からラグビースクールに通っていた連中だ。高校で重視すべきは徹底して実戦を意識したトレーニングだろう。練習のための練習はやらない。ラグビーの日本代表監督エディ・ジョーンズの考え方だ。試合に出場していない控え選手も 練習試合や紅白戦で実戦経験を積み 常に実戦を想定してトレーニングを積む。こうしていつでもレギュラーを代われる状態を目指すのだ。
  • 第二は「強みスタイルの確立」だと考える。選手に依存したシステムはやめ そのチームのスタイルを極めるのが必要だろう。例えば 「キック・パント多用の攻撃」や「徹底したディフェンス」など チームとしての強みスタイルを明確にする。そのスタイルを学び 繰り返し練習し 強みを定着化させるのだ。前述の実戦トレーニングを効率的にするにはある程度チームスタイルを決める必要があると思う。もちろん 何人かのスター選手に依存するやり方ではだめだ。
  • 最後に そして最も重要なのが「組織全体の自律的育成システム」の構築だと考える。監督・コーチに頼らず 組織全体が育成機能を持つような体制を作るのだ。上級生が下級生を育てる習慣や主力・控え選手全員でどう戦うかを話し合う習慣などだ。この過程で 教える側も理解が深まり 教わる側は早く成長する。東海大相模のライバルで全国制覇を続けている桐蔭学園のラグビー部は部員全員の議論に多くの時間を注いでいるという。これは正直 東海大相模ラグビー部にはハンディキャップだ。なにせ同校ラグビー部には強豪校としては珍しく 寮がない。全部員が毎日自宅から通学しているのだ。これはこれでいいと思うのだが やはり時間は限られる。それを補うためにはそれなりの努力が求められる。

さて こうした考え方は人材不足や社員の転職に悩む中堅・中小企業にも大いに当てはまることではないだろうか。例えば 営業プロセスを特定の担当者が作り上げた顧客関係に依存するとか 製造プロセスを特定の技術者のみが熟知した機器に依存するとか などの属人化は企業にとって大きなリスクだ。

こうした企業は 団体競技で常に上位の座を維持し続ける高校に学ぶのがよい。まず仕事の進め方(強みスタイル)を確立・標準化し 実戦を通じて育てることが重要になる。またチーム全体で戦略や仕事の仕組みを考えるという組織全体の自律的育成システムも不可欠だ。こうして初めて 誰か一人が辞めても組織は機能し続けるという仕組みが出来上がる。これらは大企業にも共通することだが 人の入れ替わりが激しい中堅・中小企業ではより重要となる。
結局のところ 長く勝ち続ける組織は 人材に恵まれているから強いのではない。人が育ち 知識や文化が受け継がれる「仕組み」を持っているから強いのだ。高校スポーツでも企業でも 本当に競争力を生むのは 一人ひとりの能力ではなく 組織全体が継続的に成長する育成システムだろう。

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