2009年6月No.1 GMの未来がある場所
6月1日、GMがチャプター・イレブンを申請した。オバマ大統領の極めて現実的なアプローチが実に印象的だった。チャプター・イレブンの申請を言っているの ではない。そのタイミングのことだ。米国のビジネスを多少でもかじっている人ならば、かなり初期の段階で、方法論としてはチャプター・イレブンしかないこ とは分かっていた。私を含め、現実的に一つしかない方法論に行き着くのになぜこんなに時間をかけるのかと思った人も多いはずだ。しかし、今、考えてみる と、クライスラーにチャプター・イレブンを申請させた後でというこのタイミングは実に絶妙で考えに考え抜かれている。オバマ大統領、恐るべし。
さて、GMがチャプター・イレブンを申請し、トヨタが名実共に世界の自動車業界のトップにとって代わった今、様々なメディアがGMの未来を論じている。識 者のコメントを聞いている限り、総じて悲観的な話が多い。本当に、GMには明るい未来はないのだろうか?このまま尻つぼみとなって行くのだろうか?・・・ そう、正直な話し、私も、GMには未来はないと思う、彼らが今までの延長線上のロジックで未来を考える限りにおいては。
経営コンサルタントとしてオバマ大統領やGMに、ぜひ言っておきたい。「今までの自動車産業のビジネスロジックで考える限り、GMには未来はないだろう。 今は、モーターがエンジンにとって代わり、自動車からエンジンがなくなる時代だ。今は、プラグイン方式で家庭用電源がガソリンにとって変わり、ガソリンス タンドが不要になる時代だ。こんな時代に、今までの自動車ビジネスのロジックが通用するわけがない。GMにトヨタと提携しろとアドバイスする人もいるかも 知れないが、そんな事には真剣に耳を貸さない方が良い。GMが本当に必要としているパートナーは自動車業界にはいない。」
「1950年代半ば、日本の田舎企業、トヨタがジャスト・イン・タイム方式を学んだ相手は、GMではなかったことを思い出して欲しい。トヨタがジャスト・ イン・タイムのヒントを得、学んだ相手は、GMではなく、米国のスーパーマーケットの流通システムだった。大きな変化の源は自らの業界の外にあるものなの だ。(注)」
「GMが未来を語り合うべき戦略パートナーは、そう、例えば、グーグルだ。ほんの少し、グーグルの独禁法問題を脇に置き、オバマ大統領がGMとグーグル連 携の後押しをするだけでよいだろう。もちろん、アップルとの提携も面白いし、アマゾン・ドットコムも流通面での提携相手とはしては面白い。未来の車作りを リードするのはGMやトヨタではない、グーグル世代やiPhone世代の消費者であることをGMが自らのメッセージとして、自らの未来として発信するの だ。」
(注):小著「P&Gに見るECR革命」(ダイヤモンド社)、「トヨタ自動車50年史“創造限りなく”」