2009年8月No.2 自民党マニフェストを考える
自民党のマニフェスト、これはひどい。ただし、私の専門分野である“ロジカル・コミュニケーション”の観点からの話です。ともかく、読み手に読んでもらいたい、理解してもらいたいという意欲をまったく感じません。
ちなみにそのマニフェストはこう始まっています。(第1章:安心な国民生活の構築、第1項:国民の安心・安全のための社会保障制度の確立)
「年金、医療、介護等の社会保障制度について、・・・暮らしの安心を支えるセーフティネットとしての機能を果たし、将来にわたって国民にとって安心、信頼できるものとなるよう、社会保障制度の一体見直しを進める(①)。 社会保障番号・カードを2011年度中を目途に導入し(②)、・・・社会保障サービスの信頼性と透明性を向上させる。 また、社会保障制度を真の国民の立場に立って検討をする場として「社会保障制度改革国民会議(仮称)」の設置に向けた法整備を進める(③)。」
- ①の文章を読んで、“一体見直し”が何を意味するのか、自民党が具体的に何をやろうとしているのか、分かる人が何人いるのでしょうか。私にはまったく分かりません。
- ②は、具体論が表現されている数少ない箇所の一つです。しかし、2011年度を目途に導入となっています。この“目途に”は何を意味するのでしょうか?なぜ2011年度に導入となっていないのでしょうか?出来なかったときの言い訳なのでしょうか?
- ③は典型的な官僚文章です。もう一度読んでみてください。具体的に約束しているのは、社会保障制度改革の中身ではなく、改革を検討する会議の設置です。しかも、よく読むと、会議の設置を約束しているのではなく、会議の設置に向けた法整備を約束しているのです。勿論、いつまでにやるとはどこにも書いていません。
この調子で、ほとんど意味のない抽象論が延々と10 数ページ続くのですから、これは拷問です。自民党のマニフェスト執筆ご担当の方、是非これを英語に訳し、HP上で公開してください。そうすればこのマニ フェストの曖昧さがすぐに分かるはずです。ご担当の方には、小著「オブジェクティブ&ゴール」(講談社)の購読を心からお勧めします。
ちなみに、自民党HPでは“マニフェスト”という表現は使わず、“自民党政策BANK”と称しています。確かにこれではマニフェストとは呼べないでしょう。自民党の中にも、そういう良心を持った人がいたということかもしれません。