2009年10月No.1 ほどほどに


前回、こ のコラムで、バランスの話をしました。「そもそもバランスのある状態を保つという静的な考えそのものが現実的ではない。バランスを保つというのは、中庸の 状態ではなく、両極端への行ったり来たりの状況が上手く均衡している動的な状況ではないか。中庸という静的な考えそのものが非現実的であり、それを目指す のはおかしい」という考えです。

以前、P&G のCEOをしていたダーク・ヤーガー氏は、この“両極端”を、Divergence(分散・拡散)とConvergence(集束・集中)という言葉を 使って説明してくれました。彼は、どちらかといえば、Divergenceをボトムアップ、Convergenceをトップダウンという意味合いで使って いましたが、この、バランスを取るのが難しいと語りました。

ヤーガー氏と面談したのは十数年も前のことで、その時には、Divergence とConvergenceが上手く均衡した静的なバランス状況を理想像としてイメージしていました。しかし、今考えてみると、彼が言っていたのは、「直面 している環境や状況やテーマによってDivergenceやConvergenceの切り替えを行なわねばならない、その切り替えのタイミングを間違うと バランスを失う」ということだったような気がします。

ヤーガー氏は意思決定という観点から語ってくれましたが、これは、いろいろな事に当てはまります。例えば、人材。理想的な社員像というのは、理想的/平均的な社員が千人いる状況ではなく、多様な人材が千人いる状態でしょう。例えば、経費節減。ケチケチ経営で成功している経営者の多くは、一方で、新規開発などの分野に湯水のようにお金をつぎ込んでいます。

個 人の仕事や人生にもあてはまりそうです。そう、恐らくは、「何事にもほどほど」というのは愚の骨頂なのでしょう。そもそも「ほどほど」にやるというのはと ても難しい事です。私のように個人で仕事をしているとよく分かります。本音は「ほどほどに」仕事をしたいのですが、これはとても難しい。ほどほどに仕事を しようと思うと、あっと言う間に業績ダウンです。というわけで、目指すは“極端”です。ただし、両方の極端のバランスです。例えば、一生懸命に働き、そし て、一生懸命にサボる。・・・うーん。これは確かに難しい!

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