2010年2月 No.2 トヨタに急ブレーキ(その1)


2 年前にプリウス(今の前の型)を購入し、快調に乗っています。最初に乗ったときに感じたのは、そのハイテク技術です。車はここまで進化したのかと本当に驚 きました。実用車では間違いなくハイテク度ナンバーワンと言ってよいかと思います。一つの車の中に、エンジンの駆動系とモーターの駆動系の二つが存在し、 それが統合されて最適稼動するように作られているのですから、モーター駆動系のみで稼動する電動自動車よりもハイテク度は優っていると言えるでしょう。

プ リウスの場合、ブレーキを踏むと、モーターの充電機能が稼動します。モーターが発電機として機能し、その電力をバッテリーに充電することにより走行エネル ギーを回収するわけです。このとき、エンジンブレーキに似た感じで、回生ブレーキが稼動します。減速状態になると、ウィーという小さなブレーキ音が聞こえ ます。

つまり、プリウスの場合、通常の油圧ブレーキ機能に加えて、今や標準装備のABS 機能(急ブレーキやブレーキロックによるスリップを防ぐために、ブレーキのポンピングを自動化したもの)、そして、エネルギー回収の回生ブレーキ機能がブ レーキペダル一つに集中している事になります。これがソフトウエア一つで、最適稼動するように設計されているわけです。

30 年前、アメリカに住んでいたときに、引越しのためにアメ車をレンタカーで運転したことがあります。考えられない事ですが、低速で運転している最中に急にエ ンストしたのです。運転中にエンストするという事自体が考えられないことですが、エンストした途端に、ハンドルが急に重くなり、ブレーキが踏めないほどに 重くなりました。ともかく全身の力をこめてハンドルを切り、全体重を込めてブレーキを踏み、何とか、車を路肩に寄せることが出来ましたが、冷や汗で全身 びっしょり。つまり、信じられない事に、パワー・ステアリング、パワー・ブレーキのパワー系統がエンジンのパワー系統と共有されていたわけです。こんな信 じられない時代もあったわけです。

少 なくとも、私の乗っているひとつ前のプリウスでは、ブレーキに何の違和感もありませんから、実に、すごいテクノロジーの実現であると言えます。しかし、よ く考えてみると、これらの機能を実際に制御しているのは複雑にプログラミングされたソフトウエアです。そう考えると、プリウスの持つハイテク機能の中に占 めるソフトの割合は実に大きなものになっているはずです。

トヨタは間違いなく世界トップクラスのテクノロジー企業です。しかし、ソフトでも世界トップのテクノロジー企業と言ってよいのでしょうか?(次回に続く)

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