2010年4月 豚と再生医療


先月末、テレビをつけると、ちょうどNHK スペシャルの最中。一般の米国人を取材している場面で、何やら、事故で切断した中指に妖精の粉をかけると中指が生えてきて、まったく元通りになったという 話しです。今こまっているのは、爪が他の指よりも早く伸びることくらいだと言っています。・・・びっくりして見ていると、最先端の再生治療の話し。まだ実 験レベルらしいですが、米国の軍隊ではこの再生治療が最優先の課題で取り組まれているらしい。指を失った人や、脚の筋肉を失った人の回復事例が紹介されて いました。この妖精の粉というのは、豚の膀胱から作ったものだそうです。これを指の切断箇所などに振り掛けると、そこに患者体内の幹細胞が集まり、損傷箇 所の再生を始めるという夢のような本当の話です。

次々にまったく初耳の最先端事例が出てくるので驚いていると、今度は豚に人間の肝 臓を作らせるという話しです。もちろん、人間への移植用です。子豚の肝臓を切除し、そこに人間の幹細胞を移植すると、豚の体内で人間の肝臓が再生されると 言うのです。これは日本の自治医大で研究されている話し。すでにラット実験では実証済みのプロセスだそうで、5年以内に人間の肝臓再生に目途をつけたいというような話しをされていました。

ちなみに、豚の肝臓は人間の肝臓と大きさが近いので、この種の研究では豚が良く使 われるのは有名。つい先日、日本橋の豚肉専門レストランで食事したばかりなので、これからトンカツを食べるときには豚への感謝の気持ちを忘れないようにと 思い直しました。・・・しかし、よくよく考えてみると、これはすごいことです。子どもの時に自分の幹細胞を冷凍保存しておき(幹細胞は若い時のものの方が 効果が高い)、将来、新しい臓器が必要になったら、その時に、豚に協力をお願いすれば良いのです。豚か牛かは別にして、肝臓で可能になれば、腎臓だって、 あるいは心臓だって可能でしょう。将来、各家庭で、つねにスペア臓器用の豚が飼われているなどという未来もあり得ない話しではないのです。

しかし、ここまで来ると、若干、神の領域に足を踏み入れた気もします。臓器レベル であれば豚で済むかもしれませんが、人間の欲望は際限のないものです。思い浮かぶのは、映画「アイランド」で登場した、スペアとしてのクローン人間の世界 です。・・・そして、テレビは、この映画を思い起こさせる「救世主兄弟」の現実へと話しが進みます。難病を抱えた子どもを救うために、同じ免疫機能を持つ 新たな子ども体外受精で生むという現実の話しです。(続く)

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