2010年4月N0.2 救世主兄弟


救世主兄弟・・・私はNHK スペシャルを見るまでまったく知りませんでした。一言で言うと、難病を抱えた子どもを救うために、同じ免疫機能を持つ新たな子ども体外受精で生むという現 実の話しです。テレビで紹介されたのは、治癒不可能な血液疾患を持つ子どもです。確か、治療には骨髄移植が必要なのだが、移植適合の割合は1万分の1とか で、現実的には、治療不可能な状態だったそうです。で、どうしたかと言うと、医師が提案したのは、その子どもと免疫機能が合致する子どもをもう一人生みな さいということです。つまり、体外受精で、受精卵の免疫パターンをすべて検査し、病気の子どもと同じ免疫パターンを有する受精卵のみを選んで、体に戻すと いう仕組みです。生まれてくる子どもは、病気の子どもとまったく同じ免疫パターンを持つことになるので、この二人の子どもの間では、骨髄移植のみならず、 すべての臓器の移植が可能になります。

救世主兄弟として生まれた子どもに、お姉さんのために、骨髄移植で骨髄細胞を提供してくれと言うのならまだ理解できるし、肝臓は再生機能があるのでその一部を提供してくれと言うのもまだ何とか理解できます。しかし、子どもに、腎臓は2 つあるので、その一つをお姉さんのために提供してくれというところまで来ると、大きな疑問を感じざるを得ません。すでに、世界には救世主兄弟が200人以 上生まれているそうです。英国ではこれが問題になり、血液関連の治療目的以外の救世主兄弟は法的に禁じられているそうです。ちなみに、アメリカでは何の法 的規制もありません。もちろん、日本にも何の規制も、何の議論もありません。

救世主兄弟・・・いったい誰が訳したのでしょうか?英語では、Savior Siblingと言うそうです。Siblingは兄弟。Saviorは“救助者、救い手、救済者、救い主”の意味で、“救世主”を指す場合もあります。しかし、アメリカで救世主と言えば普通はイエス・キリストを指しますから、Savior SiblingのSaviorが救世主を意図していたとはとても考えられません。死から復活(再生)したキリストは、兄弟の死を救うために人工的に生を受けたこの救世主兄弟の存在をどう思っているのでしょうか?

NHKスペシャルを見た後、私は自分の臓器移植カード(すべての臓器移植に印をつけています)を取り出し、自筆で“人工的な延命処置はいかなるものも禁じる”と書き込みました。週末は、久しぶりにツタヤで「私の中のあなた」を借りてこようかと思います。白血病の姉のドナーとして遺伝子操作で生まれてきた妹が、姉の犠牲となりつづけ、13歳の時、姉への腎臓移植を拒み、両親を相手に訴訟を起こすという2009年の映画(キャメロン・ディアス)です。原作が2004年というのには驚かされます

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