2010年7月書画カメラ


私は、企業向研修では“書画カメラ”を使うようにしている。紙を表に置いて、上からカメラで映写する機械だ。文書をその場で添削し、その様子をリアルタイムで参加 者の方に見ていただくためには欠かせない。厚い本や、台の上に載せた立体物も写せるので、使いようによっては実に便利な代物である。この書画カメラの過去 数年の技術進歩が実に激しく、とても興味深い。

つい数年前まで、書画カメラと言えば、原稿台や照明装置が一体化した、一台20 万円以上する大掛かりなものが中心だった。しかし、これでは値段が高すぎるだけでなく重過ぎてとても持ち運べない。そのうちに、そこそこ持ち運べる軽量型 が登場したが、まだカメラからの出力はS端子などを使うビデオ出力が中心で、解像度が今ひとつだった。詳しくは知らないが、当時、書画カメラで市場リー ダーだったのは恐らくはエルモ社(日本)で、どの企業に行っても登場する書画カメラは皆、エルモ社製だった。かなりの市場占有率を誇っていたに違いない。

約一年前、私の研修実施のためにわざわざ書画カメラを購入したというある米国系企業に出くわした。しかし、その書画カメラはエルモ社製ではなく、台湾のAverMedia 社製のものだった。担当者の話によると、出回っている書画カメラをつぶさに研究した結果、これがベストだったという。確かに、一段とポータブルで、カメラ 出力もRGB方式になっており、従来の大型機械が時代遅れのウスノロ恐竜に見えるほど素晴らしい解像度である。しかも価格は8万円台にまで下がっていた。

書画カメラは未だに企業ではポピュラーではなく、私の研修のためにわざわざレンタルしてくれる企業も多い。しかし、レンタル料だけで2、 3万円するという。これは申し訳ない、機は熟したと考え、私もポータブル型のものを購入することにした。昨年秋のことだ。価格・解像度・持ち運びやすの3 要素で、各社製品を検討した。検討はとても簡単だった。少なくともその時点では、三要素共にダントツでAverMedia(台湾製)の最新型がベストだっ たからだ。聞くところによると、内田洋行を販売代理店として学校向けに売り込んでいると言う。価格は6万円台にまでなっていた。

この重さ1 キロもない書画カメラは実によく活躍してくれている。私が昨年購入したものの中のベストバイだったかもしれない。ところが、先週の研修では、初めて、エプ ソン社製のポータブルタイプの書画カメラにお目にかかった。これもなかなかの解像度である。聞くところによると、価格は5万円台だという。いろいろの分野 で熾烈な技術革新競争が進行しており、そこには必ず日本以外のアジア企業が絡んでいる。

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