2011年1月No.1 社員教育(その1)
あけましておめでとうございます。本年が皆様に取り幸多き年でありますように。
さて、季節感のない話で恐縮ですが、私は世田谷通りを走る民間バスを使って三軒茶屋のオフィスまで通勤しています。この路線を運営しているバス会社は、小田急バスと東急バスの二社です。二社がほぼ同数のバスを走らせています。
12 月下旬、自宅に帰るバスの中での話しです。隣に立っている中年の男女がひそひそ話しをしていました。耳をそばだてると、“この運転手は一言もしゃべらな い。次の停車駅の名前も言わないし、停車するとか通過するとかも言わない。ちょっとおかしいのではないか”という内容です。気になったので、私も運転手さ んの言葉を注意深く聞いてみると、なるほど、確かに一言もしゃべらないのです。次の停車駅の名前も言わなければ、ありがとうございましたの一言もありませ ん。すべて、社内放送任せです。何を言っているのか聞き取れないようなぼそぼそ声でしゃべる運転手さんはよく見かけますが、黙りこくった運転手さんは初め てです。当然、気になって、乗っているバスが小田急なのか東急なのかチェックしました。そもそも小田急と東急はバスの概観がそっくりですし、車内では会社 名は小さいプレートが運転手の上に張られているだけなので、どちらのバス会社なのかがとても分かりにくいのです。
仮にこのときに乗っていたバス会社(小田急か東急のどちらか)がA 社だったとします。それ以降、とてもこの事が気になったので、バスに乗るたびに、心の中で運転手さんの採点をやるようにしました。良い/普通/悪いの三段 階評価です。結果は驚くべきものでした。悪いと評価した運転手さんのバスはすべて(文字通りすべて)A社でした。一方で、良いと評価した運転手さんのバス はすべて(文字通りすべて)B社でした。“普通”評価も入れて、運転手さんの所作からバス会社占いをしても9割は当たります。もし世田谷通りを走るバスを 利用される方がおられたら、このバス会社占いをやってみてください。私の言うA社、B社がどちらを指すかがすぐに分かります。
バ スの場合、バス会社を選んで乗るということはほとんどありません。運転手さんのサービスがひどくてもすぐに収益に影響が出てくるということはないので、経 営者はこうした問題に気づきにくいのでしょう。また、バス会社の社長がバスに乗るという事もあまりないのでしょう。(少なくとも、A社の社長が自社のバスに乗っていない事は断言できます。)しかし常識的に考えると、この運転手さんのサービスの悪さは、あるいは運転手さんをはじめとする従業員教育の貧弱さは会社経営の様々な側面で影響を及ぼしているにちがいありません。