2011年5月第2回 軽くなった経団連会長の椅子


3月16日、A氏は東京都内で記者団に対し、福島第1原発の事故について「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と述べ、国と東京電力を擁護した。

4月6日、A氏は、米紙WSJ紙との単独取材にて、「(東電が)甘かったということは絶対にない。要するにあれは国の安全基準というのがあって、それに基づき設計されているはずだ。恐らく、それよりも何十倍の安全ファクターを入れてやっている。東電は全然、甘くはない」と語った。

4月11日、A氏は、東 京電力の対応について「東電には頭が下がる。甘かったのは東電ではなく、国が設定した安全基準の方だ」と述べた。その上で、事故自体については「峠は越し つつある」との認識を示した。損害賠償などによって東電の経営不安説が流れていることに関しては「天災であり、国が支援するのは当然のこと」と語った。国 有化論については「全然ありえない。一部の政治家が口にしたせいでどれだけ東電の株価が下落したか」と非難した。

5月9日、A氏は、首相が中部電力に浜岡原発の全面停止を要請したことについて、記者会見で、「電力不足の中で菅首相がただ30 年間で87%の確率で東海大地震が起こる可能性を根拠にして停止を要請したことは唐突感が否めない」と語った。「結論だけがぽろっと出てきて、思考の過程 がまったくのブラックボックスになっている。・・・」と厳しい口調で、要請に至る経緯が説明不足であるとの認識を示した。

A 氏とは一年前に経団連会長に就任した米倉氏。大方の予想を裏切り、上がりポストといわれる経団連評議員会議長から異例の抜擢となった方である。「何で今 更、財閥系の、それほど大企業とも言えないところから、しかも73歳の高齢の方が?」と当時、さまざまな憶測を呼んだ人事だ。ちなみに、東京電力清水社長 は、経団連副会長の一人である。

正直、私も菅さんのリーダーシップ(国・行政をリードする能力)にはがっかりしている。しかしそれでも、東電に根強く存在する恐らくは想像を絶するデータ隠し/ 責任逃れの体質や、更には、防災対策軽視のまま原発推進を進めてきた自民党族議員/官僚の無責任体質には、心から共感・同情する。また、早朝、東電本社へ 乗り込んでの「覚悟を決めろ」発言や今回の浜岡原発停止要請など、心から応援したいと思う点も幾つかある。しかし、正直、この経団連会長の度重なる発言に は、評すべき言葉すら見つからない。 鳩山首の時もそう感じたが、なぜこんな人が組織のトップに選ばれるのだろうか。失望というよりも不思議でたまらない。

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