2011年7月 あきらめない力


久しぶりに“ネバーギブアップ”の精神を思い知らされた。今、こう言えば、もちろん、なでしこジャパンの事だ。しかし、その一週間前にも、この精神を思い出させてくれた青年がいた。全英オープン初日に見せた石川遼選手のプレーだ。

いつ見ても、彼のプレーには 頭が下がる。ボールを飛ばすとか、プレーの歯切れがよいとかではない。決してあきらめない姿勢がプレーからにじみ出ている。今年、彼はフォーム修正を試み たという。先日見たゴルフ雑誌の写真によると、かなりバックスイングの角度が昨年とは違っている。素人目に見ても、修正後の方がよさそうだ。しかし、実践 では何かがかみ合わずにボールを引っかけていた。悪い事に、引っかけを避けようとすると右に曲がる。日本で2試合連続予選落ちという最悪の状態のまま、全英オープンに臨んでいた。どれだけ不安でいたことか、その心情は痛いほど分かった。

全英オープンではドライバー はよかったものの、アイアンは案の定、最悪だった。なかなかグリーンに乗らない。初日前半だけで、スコアはどんどん悪くなっていった。普通であれば、いつ 心が折れてもおかしくない状態だった。しかし、後半は耐えに耐えた。誰の目にも最悪のショットだったのだが、グリーンまわりで決してあきらめずにパーを拾 いまくった。“どうして、ここまであきらめずに頑張れるのか?”本当にそう思った。

残念ながら二日目には力尽 き、予選通過ならなかった。しかし、その後の青木選手とのインタビューで見せた、涙ぐんだ姿には正直驚いた。恐らく、“もっと出来たはずなのに、あきらめ ずに最後まで頑張りきれなかった”自分がふがいなかったのだろう。・・・そう、彼は本当にあきらめていなかったのだ。

なでしこジャパンの優勝決定戦の延長戦でアメリカが最初にゴールしたとき、私は正直、“力つきたか”と思ってしまった。しかし、その後の展開を見ると、おそらく彼女らの心の中には、まったくもって、そんな気持ちは微塵もなかったに違いない。

あきらめずに頑張る心の強さの裏に見たもの・・・一つは、石川選手の涙ぐむ姿に見た、それまでの辛い努力とまだ駄目だと言う自分のふがいなさへの厳しさ。もう一つは、PKの前のなでしこの明るさに見た、ここまでやったのだから、後は神頼みという楽天性。結果は両極端だったが、石川選手が本当にここまでやりきったと思ったとき、メジャーの最終ホールで微笑んでティーグラウンドに立つに違いない。そして、それは決して遠くないと思った。

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