2011年11月No.2 ファイブ・フィンガー・コンセンサス


TPPの議論を見ていて、考えた。皆、ベストの案を求めすぎだ。ベストの案を求めようと思うと合意形成などできっこない。そもそも、合意形成の目的とはベストの解決案を求めるものではない。ちょっと真面目に合意形成の方法論について考えてみよう。

多数決。多数決は確かに決定までの時間が少なくて済む。しかし、全員合意とはほど遠い決定方法なので、実行という観点からみると効果的ではない。「決定は下されるのだが、どうも結果が出ない」というのはこの辺に問題の原因がある。

マジョリティによる決定(例えば、3/4の 合意による決定など)。合意を重視しているので、実行は効果が上がりそうだ。もちろん、全員一致は目指すべき究極の姿だ。しかし、決定までにはかなり時間 がかかる。また、決定を求めるために、かなりの妥協が必要となるかもしれない。結果として、解決案としては最善とは言えないものである可能性が高い。

ファイブ・フィンガー・コンセンサス。それほど一般的ではないが、ビジネス上の決定でよく使われる方法がこれだ。

  1. ある案に対し、まず、5(強く賛成)、4(賛成)、3(どちらとも言えないが、この案で決まれば実行に協力する)、2(反対)、1(強く反対)の中から、どの立場なのかを選ばせる。(ファイブ・フィンガー・チェック)
  2. 全員が3以上であれば、この案で進める。
  3. 1や2の人がいれば、その人に、そのレーティングを選んだ説明と改善案提案の機会を与える。元々の案の提案者は、そのままで行くか、変更を加えるかを決め、説明を行う。その後、再度、ファイブ・フィンガー・チェックを行う。
  4. 今度は、1の人がいなければ、その案で進める。
  5. 1の人がいれば、再度、そのレーティングを選んだ人に説明と改善案提案の機会を与える。元々の案の提案者は、そのままで行くか、変更を加えるかを決め、説明を行う。
  6. 最後は、多数決。

ファイブ・フィンガーの良い点は、反対者に最大で2回の説明の機会を与える点だ。合意形成のポイントがこの辺にある。そもそも、決定の時点でベストの案が自明でないからこそ、合意形成が必要なのだ。ベストを求めようとすると、合意形成はできなくなる。ファイブ・フィンガーは私のお薦めだ。

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