2012年1月 年のはじめに


元旦、早稲田にある穴八幡にお参りに行ってきた。この神社で頂く「一陽来復」というお札は、冬至・大晦日・節分の24時にその年の吉方に向けて貼るとお金が貯まると言われている。「一陽来復」とは、「冬が去り、春が来る」という意味。まさに今年にふさわしいお札だ。

さて、その穴八幡にお参りに行く途中、地下鉄が地震の影響で緊急停止した。車内アナウンスがあって約10秒後、小刻みな揺れがあった。おそらくは震度4ク ラスであろうか。こんな地下鉄の中で地震が起きたらいったいどうすればよいのか・・・と考えるよりもまずは、揺れる前に地下鉄が緊急停止するという安全シ ステムにいたく感心してしまった。そういわれてみると、東日本大震災の時にも、新幹線はすべて緊急停止し脱線事故はただ一つもなかった。地震発生時に27本もの新幹線が運行中だったにもかかわらずだ。

日本の鉄道にこんなに素晴らしい安全技術が存在するのに、なぜ原発ではあんなに無残な結果をもたらしてしまったのか。JRも 東電も同じ公共事業で独占事業なのに、どうしてこんなにも安全に対する考え方や姿勢が違ってきたのだろうか。自主開発の新幹線技術と輸入依存の原発技術の 違い?目に見える鉄道技術と目に見えない原子力技術の違い?飛行機や自動車という代替手段の存在とまったく独占の電力事業の違い?いろんな理由が考えられ るし、それぞれの理由はそれなりに妥当性がありそうだ。(この違いは意外と重要かもしれない。なぜなら、この理由の裏返しが今後の電力事業の安全対策とな るかもしれないからだ。)

た だ、私が気になったのは、なぜ、電力業界が、このような鉄道業界の優れた技術や考えを学べなかったかという点だ。もしかすると、はなから他業界の事には関 心がなかったのかもしれない。「山崎さん。我々の業界はちょっと特殊で、山崎さんが経験してきた業界とは違うのですよ。」私がコンサルティングなどをやる ときに、耳にタコができるくらい、お客から聞かされる話だ。

しかし、私の20年近いコンサルティング経験から言えば、業界や業種による違いはせいぜい1割程度。後の9割は皆同じだ。経営や技術や組織運営に関する考え方に業界による違いなどほとんどない。経営者が抱えている問題の9割は他の業界に共通する事柄なのに、皆、この1割の違いにしがみついて、他の業界から学ぼうとしない。

緊急停止中の地下鉄車内で考えた。業界を超えた英知の共有。これこそ、私のような経営コンサルタントの役割に違いない。今年の書き初めはこれで決まりだ。・・・「一生現役。週休三日」(週休四日と書きたいところだが、とりあえず2012年はこんなところで。)

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