2012年4月 MBO人事評価の誤解(2/2)


前回、MBO(Management by Objectives)の問題点について書いた。今回はその続きだ。

日本の経営者や人事関係者は、MBOシ ステムが米国の基本システムだと考えている節があるが、それはまったくの誤解だ。“目標による管理”(ウィキペディア)にあるように、この手法は米国では 発表当初から懐疑的な見方があり、今現在、一部の歩合制企業を除いて、まったく使われていない。もし嘘だと思うならば、ぜひ、ちゃんとした米国企業の幹部 や人事関係者の方に「MBOを人事評価に使用しているか」尋ねてほしい。一社もいないはずだ。もし一社でもあれば、ぜひ私に教えてほしい。

前回も書いたが、目標管理と人事管理を一緒にするのはよくない。これでは、目標達成の後押しもできないし、公正な人事評価もできない。中途半端なものに終わってしまう。結果として、数字達成の最前線に立つ営業/マーケティング部門が報われず、管理部門の人間ばかりが出世する組織が出来上がってしまう。

先日、「PDCA(Plan-Do-Check-Act)をもっとしっかりとやりたい。そのために人材育成をやりたい」という話が某大企業からあった。PDCAが上手くいかないので、人材育成の研修?・・・何か割り切れないものを感じ、もしかして、MBOによる人事評価をしていないかと尋ねたところ、まさにドンピシャだった。申し訳ないが、MBOシステムを変えない限り問題は解決しない。

多くのMBOでは、人事評価シートが“PDCシート”などと名前付けられている。これではPDC(A)の開発者に失礼だ。おそらく、経営の現場最前線を知らないどこかのTQMコンサルタントがPDC(A)とMBOを無理やり結びつけて、MBOの売り込みに使ったのだろうが、PDC(A)とMBOは無関係だ。

目標設定/目標管理システムは組織力強化の基本だ。組織とは目標を共有する人たちの集まりだ。組織共通の目標を軽視すれば、それは組織ではなく集団で終わってしまう。バスの乗客と同じだ。何をやるのかの「何(What)」も大切だが、Whatをどう決めるのか、どのように実行するかはもっと重要である。ぜひ、じっくりと腰を落ち着けて、最善の目標設定/目標管理システムがどうあるべきかを考えてほしい。

また、人事評価/人事管理は組織力永続化の基本だ。チャレンジは苦しいものであるべきではない。楽しいものであるべきだ。個人個人のやる気が集まれば、2+2=5が見えてくる。

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