2012年9月 原発ゼロ(1/2)


原発に関する政府の意見聴取会が終わった。参加者を、立場の違いに応じてグループ化し、意見を聴取しようというものだ。ご存じのように、グループ化は、2030年までにあるべき原発の割合の支持(0%、15%、20~25%)により、3つに分類している。

原発反対者は、当然、将来的には原発ゼロを主張する。一方で、原発擁護者は、原発ゼロは非現実的で、そんなことをしたら経済的に大混乱が起きると主張する。・・・何かおかしい。これって議論がかみ合っていないのではないだろうか。つまり、原発反対者は2030年の将来像として原発ゼロを主張し、原発擁護者は手段としての困難性を強調する。一方が目標を論じ、一方が手段を論じている。これでは平行線になるのは当然だ。

戦略を論じる場合、もっとも重要なのは、まず目標を具体的に設定することだ。手段をどうするかは目標が定まった後に論じる話だ。目標が定まらないのに目標達成の手段を論じることはできない。もちろん、手段の困難さによっては、目標達成の道のり、あるいは、設定目標そのものを修正することもあり得るだろう。しかし、それでもスタートポイントは、目指すべき目標だ。これは、経営戦略でも産業施策でも国家政策でも同じである。

さて、ひとまず手段のことは忘れ、単純に追及すべき目標はどうあるべきかという観点で原発を考えるならば、当然のことながら、原発関連の仕事に従事している人を除けば、少なくとも日本人ならば百パーセント、原発はゼロにすべきだと答えるはずだ。福島原発の事故と現状、さらには、燃料廃棄物の処分法や処分地すら決まっていない状況の中で、原発があった方がよいなどと考える人がわずか一人でもいるとは考えられない。

問題は、2030年に原発割合をゼロにするという前提に立って、「その目標を実現するための方法論・手段はどうあるべきか」になるべきだ。そこで初めて、電力コストの問題、電力安定供給の問題などの議論が具体的なものになる。状況によっては、2030年にゼロが2040年にゼロに修正されるかもしれない。

ちょっと横道にそれるが、この意見聴取会の企画で評価したいのは、「2030年」という具体的な年度と、「ゼロ/15%/20~25%」という具体的な数値の設定だ。そもそも、なぜ「2030年」という年度が設定されたかは不明だが、おそらくは、現実性のある年度として企画者の念頭にあったに違いない。これを企画した人は、明確に頭の中に、「2030年に原発ゼロは不可能ではない目標設定だ」と考えたに違いない。

今、原発の割合は30%弱。あと20年弱かけてこれをゼロにする。・・・経営コンサルタントである私に言わせれば、民間企業であれば、低すぎるくらいの目標だ。なぜこれができないと言い切れるのか、その理由を探す方が難しいのではなかろうか。(次回に続く)

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