2012年10月 日中問題考


先月末、台風の接近する中、やることもないので、テレビで日本女子オープン・ゴルフを見ていた。国内メジャーの難コースで、台風の強い風の中、優勝したのは、フォン・シャンシャンという中国人選手だった。2位は朴仁妃、3位は李知姫、ともに韓国人である。4位にようやく米ツアーで活躍中の宮里美香が入った。日中、日韓の領土問題が深刻な中、複雑な思いでこのゴルフを見ていた人も多かったのではないだろうか。実は私もその一人である。

私の中国への思いは複雑だ。私の会社の名前“隗コンサルティング”の“隗”はもちろん中国の逸話に登場する“郭隗”という人名からとったものだ。実在した人物かどうかは定かではない。ただし、“隗”という字はこの郭隗そのものを指しており、辞書を調べればわかるが、これ以外の意味はない。この社名からも推測いただけるように、私は昔、三国志関連の本を読み漁ったし、雄大な中国の歴史には今でも畏敬の念を抱いている。

しかし、中国には、24年前、北京とその近郊に数日間行ったことがあるだけだ。万里の長城や明の十三陵などの観光地を回ったほか、知り合いの紹介で、当時関心のあった東洋医学の病院めぐりをしたことを覚えている。歴史建造物であれ、東洋医学であれ、中国の持つ歴史の重みを感じるたびに日本の小ささを感じた。一方で、北京の現代生活にはわずか数日間の滞在でまったく馴染めそうもない雰囲気を味わった。具体的にものすごく嫌な経験をしたということはないのだが、なぜか、もう中国には来ないだろうという拒否反応に近い直感を抱いて今に至っている。

今回ばかりは、今の日中問題を見て、まったくもって具体的な解決案を示せない、解説者になりさがった政治家や学識者の批判をする気はあまり起きない。私自身、とても中短期の解決策が思いつかないからだ。冷静な対処が必要だとも思うし、もう少し国としての主張が必要なのではないかと思う時もある。

さて、冒頭の日本女子オープンの話だが、中国人選手が優勝した時点で、東京都知事的な複雑な思いを抱いていた私は、その優勝インタビューを聞いて本当に感動した。その時点で、日本ツアーで何度か優勝していた彼女は、とつとつと日本への感謝の言葉を述べ始めたのだ。日本ツアーでの経験を経て今の自分があるということを自分の言葉で語っていた。

考えてみれば、私の中にある中国は、悠久の歴史に対する畏敬の念と、現代中国に対する拒否感であり、ここに共通するのは親近感の欠如だ。たぶん、今の日中問題にはすぐに解決する妙案などはないだろう。しかし、スポーツなど様々な交流を通じていけばきっと理解しあえる日が来るに違いない。日中国交回復40年。つまり、まだわずか40年なのだ。国交回復は今始まったばかりではないか。

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