2012年10月その2 罰則と罰金


ある日、友人と一緒に食事をした時の話、いきなり、その友人が黄色の駐車違反ステッカーをテーブルの上に置き、ちょっと読んでみてくれないかと言う。彼によると、先月、駐車違反をし、ステッカーを車に貼られてしまったとのこと。しかし、そのステッカーの文言が実に分かりにくいというのだ。よく読むと、そのステッカーには駐車違反と大きく書いており、放置車両をすぐに移動させなさいとは書いているのだが、確かに、その後に具体的にどうすればよいのかは書かれていない。警察署に出向かねばならないのか、交番でよいのか、あるいは、車両を移動して後はじっと待っていれば何か言ってくるのか、まったくわからないのだ。

そのステッカーには担当の交番の電話番号が記してあるのだが、友人は交番に電話をする前に、まずはネットで調べてみることにした。これだけ分かりにくいステッカーなら、戸惑う人も多いはずだ。そして驚くべき事実を発見した。

どうやら駐車違反は数年前にシステムが変わったらしい。ネット情報によると、運転者が黄色のステッカーを持って交番に行くと、その場で違反切符を切られ罰金を支払うことになる。この時点で、運転免許の違反点数がマイナスされる。ところが、何もせずに待っていると、車の所有者に罰金を支払えと言う通知が送られてきて、所有者が罰金を支払うことになるという。罰金の金額は同じだ。それで終わり。つまり、駐車違反をした運転者には違反切符は切られず、違反点数のマイナスもない。結局、私の友人はネット情報に基づき、交番には行かなかった。後日、所有者として罰金を支払うことにはなったが、ゴールド免許はそのままだと喜んでいた。

この話を聞いて考えた。確かに、これではわざわざ出頭する正直者が損をするだけだ。しかし、現実問題として、取り締まる側としては、駐車違反をした運転者が誰かを特定するのは不可能だ。実際、「私は運転してなかった」という理由で罰金支払いを拒む人も多かったらしい。車の所有者に罰金を払わせるようにすれば、確実に請求書を送付することが出来るし、払わなければ次の車検に通らないわけだから、確実に払ってくれる。

私は今のシステムは実に画期的な発想の転換だと高く評価したい。要は、「罰則」重視の従来発想から、「罰金」重視の発想に切り替えたのだ。・・・素晴らしい。実に現実的でクリエイティブな発想ではないか。こういう発想のできる人が官僚の中にもいるのだ。

これでは駐車違反が増えるのではとの危惧もあるかも知れないが、そんなことはない。駐車違反をするほとんどの運転者がほんのちょっとの出来心なのだ。私の友人も駐車違反は十年ぶりだった。また、駐車違反を何度も繰り返す悪質車両は車両情報としてデータベースに残るわけだから、当然、そのような車両の運転者に対し別途の処置を施すことは可能だ。とは言え、多少の不公平が残るのは事実だから、違反ステッカーの文言も曖昧にならざるを得ない。まあ、これくらい許してあげようではないか。

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