2013年2月 ASEAN、マレーシア、そして、クリーン度
ニューズウィーク日本語版(1/29号)で、ポスト中国としてASEAN各国が特集されていた。アジア通ではない私はこの記事を読んで、改めてASEANの大きさに驚かされてしまった。
ASEAN(東南アジア諸国連合)とは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの加盟10ヵ国を指す。人口でみるとASEAN全体で6億人。27ヵ国が加盟するEUが5億人、そして、北米自由貿易協定(米国、カナダ、メキシコ)が4億6千万人なので、それらを軽く上回る規模になる。
なみに、インドネシアの人口だけを見ても2億4千万人を超え、中国、インド、米国に次ぐ世界第4位の国である。日本の2倍の人口なのだ。こんなこと、正直まったく頭の中になかった。しかも、同国の昨年の経済成長率は6.5%。これはすごい。他の国を見ても、フィリピンは人口が9,500万人で経済成長率3.9%。ベトナムは人口8,800万人で経済成長率5.9%。タイは人口7,000万人で、洪水の影響を受けた昨年こそ経済成長率は0.1%だったが、その前年は7.8%だった。こういう数字を見ると、確かにもう中国一辺倒の時代は終わったのではないかと思ってしまう。
今や、いろんな企業がASEAN各国に力を注いでいる。実際に現地を訪れた人に話を聞くと、多くの人が口を揃えて称賛するのがマレーシアだ。ニューズウィーク誌でも、マレーシアは“先進国入り目前の優等生国家”と紹介されている。
さて、投資に値する市場かどうかをチェックする場合の一つの目安が汚職などの政治・社会の腐敗度だが、マレーシアはとくにその点が高く評価されている。トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数(2012年)によれば、ASEANの中での上位国は、第5位シンガポール(87点)、第46位ブルネイ(55点)、第54位マレーシア(49点)となっている。マレーシアのランクはトルコと同じ。もちろん、日本(17位、74点)、アメリカ(19位、73点)などの先進国と比べるとまだまだだが、ブラジル(69位、43点)、イタリア(72位、42点)を軽く上回り、中国(80位、39点)やインド(94位、36点)のはるか上を行く。
マレーシアと言って私がすぐに思い浮かべるのはマハティール元首相。日本の経済成長を見習おうというルックイースト政策を掲げ、22年間にわたり首相を務めてきた親日家だ。つい最近まで頻繁に日本を訪れ、講演活動などを行っていた。どうやら彼が進めてきた賄賂文化根絶の努力が着実に成果を上げてきたようだ。もしマレーシアが日本からクリーン度を学んだとすれば本当に嬉しいことだし、これこそが、これからASEANで日本が協力できることではないだろうか。ASEAN10ヵ国が皆、クリーン度で中国やインドを上回るとき、ASEANは世界最大の貿易圏になるだろう。確かに、腐敗一掃は一朝一夕ではできないことだろうが、急がば回れで行けそうな予感がする。そうした努力を通じて、日本がもっともっとクリーンになることができれば何も言うことはない。