2013年3月 Sequestration突入
今、アメリカで“Sequestration”という単語を知らないものはいない。日本語では“強制発動”と訳されている。一言でいえば、政府と議会の間で財政赤字削減策が合意に至らなければ、予算を一律10%カットするという法律である。
2011年、オバマ政権と共和党が厳しく対立する中、互いに引くに引けない状況になり、双方のメンツを立てて合意した法律である。正直、誰も本気にそうしようと思っていない、場当たり的な取り決めだと言われている。当時、選挙で大勝し、オバマ大統領に次はないと踏んでいた共和党は、ここまで追い詰めれば共和党の勝ちだと思ったのかもしれないし、大統領も厳しい選挙結果を前には他の方法はなかったのかもしれない。しかし、当時の状況がどうであれ、誰が見ても無責任な、その場しのぎの法律だ。
そして今、オバマの大統領選圧勝の結果を受け、大統領と共和党の立場は逆転。共和党内に意見の相違が出始め、今度は共和党内部の意見統一が難しくなってきた。共和党内のリーダーシップ不在に加え、オバマ大統領の根回しのまずさ、などなどいろいろの理由があるのだろうが、結果として、お互いに何の努力も譲歩も見られないまま、3月1日にSequestrationが発動された。これにより、政府予算は一律10%カットになることが決まった。
現実には、過去の予算消化的なお役所仕事のおかげで、しばらくの間(1、2ヶ月?)はとくに変化なしに乗り切れるらしい。また、3月27日に、今の政府機関の活動資金を賄っている予算継続決議が失効するために、それまでには予算合意に至るだろうと考えている人が多い。そうであれば、特に大きな問題は発生しない。ただし、3月27日までに予算合意に至らねば、政府の予算執行は、緊急案件を除いてすべてストップとなる。つまり、政府不在状態となる。非常事態のための人員と人命にかかわる部署を除いて、政府機関は閉鎖され、公務員は自宅待機を命じられ、ビザやパスポートの処理はストップする。
いくらなんでもそれはないだろうと皆思っているが、一方で、今の政治状況を見たら何が起きるかわからないと不安を持つ人も多い。3月末になって、また2、3ヶ月の延命合意をして、その間に、10%予算カットの痛みが実際に出始めて初めて、動きだすのではないか、つまり、決着は夏までずれ込むのではないかと思う人も多くなった。(私も個人的には夏近くまでかかるのではないかと危惧している。)
先週(2月下旬)、多くの政府機関の職場では職員が招集され、今後の方針が説明された。国際結婚した次女の旦那はハワイで海軍に勤務する文民だが、Sequestrationに伴い、週休3日になると発表されたという。ただし、こうした処置には30日前の通知が必要となるので、ペンタゴンから正式な通知が届いた後、30日後にこの処置が実行に移されるという説明があったらしい。また、同時に、3月末までに予算合意がなされるとこの処置は取りやめになる可能性もあるとの説明があったという。公立学校の先生たちも大量の解雇が予定されており、このままだとハワイでは公立学校は週休3日にせざるを得ないだろうと言われている。ちなみに、ハワイ州では財政悪化により、今すでに公立学校は隔週金曜日がお休みなっている。
日本、米国、イタリア・・・世界中で決められない政治が蔓延している。座って議論している、口先だけの政治家ばかりだ。今や、政治家と評論家の区別がとても難しい時代になった。私の孫がもし政治家になりたいと言い出したら、私は間違いなく言うだろう。「もっと誇りを持って働ける仕事につきなさい。」