2014年4月 建設業界の現状?
安倍総理の下 東京オリンピックは決まったし 公共事業への大幅な予算投入も行われている。さすが建設業界は大儲けだろうと思って業界の友人に聞いてみた。しかし友人によると実態はそうでもないらしい。建築コストは高騰し 労働者不足も甚だしく 確かに忙しいのだがあまり儲かっていないという。大規模入札などは応札後の建築費の高騰が怖くて応札できない状況だと言うのだ。
昨年11月に実施された築地市場の豊洲新市場への移転建設工事の入札では 4事業のうちの3事業で入札不調に終わった。落札したのは69億円の衛生検査所工事の1件のみ。予定価格628億円の残り3事業は 事前に参加の意向を示していた鹿島・清水・大成・竹中・大林組など大手ゼネコンが金額面で折り合わず入札を辞退した。都の提示していた予定価格では安すぎて入札が成立しなかったのだ。
結局 築地の入札は3棟分で予定価格を当初の628億円から400億円引き上げることになった。計1000億を超す予定価格で再入札が行われ 2月半ばに大手ゼネコンが落札した。中にはこれは出来あいのレースで もともと無理な予定価格で予算を組み 結局は再入札という形で値段を上げるという常套テクニックだという人もいる。しかし それにしても600億円が2か月で1000億円という変わり様には驚かされる。東北の復興事業の入札でも不成立続出という話をよく聞く。
建設業界も大変なのだなと思っていた矢先 2月に発生したのが南青山で三菱地所・鹿島建設が建設中だった億ション販売中止の話だ。最高価格3億5000万円 最多価格1億4000万円 “ザ・パークハウス グラン南青山高樹町”だ。事業主は三菱地所レジデンス、設計監理が三菱地所設計、建築施工が鹿島建設。億ションに相応しい業界最強の顔ぶれた。これで問題など起こるはずがない・・・しかし起きた。
工事に不具合が生じたのだ。配管・配線を通すスリーブ(貫通孔)が設計通りに入ってなかったという前代未聞の大失態だった。全部で6000カ所あるスリーブのうち 600カ所について孔が空いていなかったり 孔の場所が間違っていたという。壁の中は鉄筋だらけだし 特にスリーブ孔周辺は補強筋を取り付けて強度の低下を防ぐ。後で孔をあければよいという代物ではない。しかも施工図そのものが設備設計図を反映していなかったらしく 間違った施工図を元にチェックしても間違いに気づかないという状況だったという。この間違いは設備工事担当者から8月に現場所長に報告されたが 上手く状況が理解されず “よきに計らえ”的な指示で終わったという。
結局今年に入って内部の人間によるネットの書き込みが発端となり問題が顕在化。引き渡しまであと3か月と言う段階でギブアップとなったらしい。契約者には手付金の倍を違約金として追加支払いし 販売中止を合意してもらうことになった。1000万円の手付だったら計3000万円の戻りだ。さすが超大手。裁判沙汰を恐れたらしい。結局 この建物は取り壊しになることが決まった。・・・どうやら建築労働者不足/建設費高騰と言うマクロな話は現実の身近な出来事として確実に影響を及ぼし始めているらしい。