2015年1月 職人技


年賀状の宛名書きは随分前から万年筆で書くようにしている。もっと以前は毛筆で書いていた。しかし さすがにこれは手間がかかるためにギブアップした。その宛名書きや署名などの際に愛用しているのが 10数年前に購入したモンブランの万年筆(太字)である。使い始めの頃はインキが途切れたりして今ひとつだったが 最近ようやくペン先が私の書き方に馴染んできた。

万年筆はもう一本 中字のものを持っている。大橋堂の手作り万年筆だ。友人からギフトとして頂いたもので モンブランと同様に黒のオーソドックス型だ。太字は署名やら宛名書きなどいろいろ使う機会があるのだが 一般的な中字は実際にはあまり使う機会がない。どうしてもボールペンを使ってしまうからだ。宛名書きをしながら これからはもっと万年筆を使おうと考えた。

と思っていたところに和風総本家の年末再放送で 同じく手作りの中屋万年筆が紹介された。今持っているモンブランや大橋堂のものが黒のオーソドックス型なのに比べ 中屋のものは漆塗が基本で しかも色や塗りにかなりの種類がある。あまりの美しさに惹かれ先日注文を出した。モンブランは太字用、大橋堂のものはクリップつきのポータブル用、今回注文する中屋のものはクリップなしの卓上使用 一応無駄はしていないぞと自分を説得した。今 納品待ちだ。3ヶ月くらいかかるらしい。

職人技と聞くとどうも心惹かれてしまい 財布のひもが緩くなる。以前購入した職人もので言うと 諏訪田製作所のニッパー型爪切り。結構重宝している。倉田製作所の手作り毛抜き。一本一万円近くするが これは秀逸である。更には 製作工程の6割が手作業と言われるタレックスの偏光サングラス。これも職人技に入れてよいだろう。あまりの素晴らしさに 個人用だけで3本購入した。職人物の共通点は 皆 普段日常的に実際に使用しているものばかりという点だ。これこそが芸術作品の違いだ。職人は決して芸術家を気取らない。

私の仕事は経営者向けに経営アドバイスをするコンサルタントであり 企業向けに教育研修を提供するトレーナーである。経営コンサルタンティングでも教育研修でも 私はずっと以前から優れた職人になることを意識し目指してきた。

職人技とは手作り作業と言い換えることもできる。最高のものを目指せば どうしても機械化したり 他人任せの汎用化が難しくなる。職人技を続ける限りは大量注文には応じることは出来ない。昔 私が開発した企業向け教育研修を某研修会社とタイアップして展開したことがある。しかし人に頼るとどうしても質が落ちる。これは職人としてもっとも我慢ならないことだ。結局このタイアップ事業は私の方からお願いして解消してもらった。職人技は所詮ニッチ・ビジネスだ。しかし それでも 私は職人技を目指したい。職人技には百点はない。ベストはなく つねにベターがあるのみだ。そして つねに目指すべきものがあるということはとても幸せなことだと思う。

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