2015年2月その2 行政改革の火


一か月ほど前のテレビ番組(確か BS朝日の「昭和偉人伝」の再放送)で 土光敏夫の特集があった。中でも 土光氏が会長を務めた第二次臨時行政委員会(土光臨調)の話には改めて見入ってしまった。「増税なき財政再建」を旗印にした土光臨調は1981年から1983年の話しなので 既に30年以上前のこと。当時あまりのインパクトだったので 土光臨調がわずか3年そこらの出来事だったと知り 改めてその濃密さに驚いている。テレビを見ていると 会長就任当時まだお元気だった土光さんが3年後の最終答申の時には車いす状態になっている。本当に頭が下がる思いだ。

テレビでは土光臨調のメンバーの一人 ウシオ電機の牛尾会長がこう言っていた。「今の日本があるのは 7割がた 土光さんのおかげだ。」テレビを見ていて私も本当にそうだと思った。何しろ 電電公社(NTTグループ) 国鉄(JRグループ) 日本専売公社(日本たばこ産業)の三公社の民営化はすべてが土光臨調の提案から始まったのだ。今もしも これら企業が公社のままで存在していたとしたら・・・考えるだけでも身の毛のよだつ思いがする。本当に心から「土光さんありがとう」と言いたい。もちろん 土光臨調の設立を画策し 支え 民営化を実現した中曽根元総理もよくやったと言いたい。

さて 80年代の土光臨調・中曽根内閣の三公社民営化の後に続いた行政改革と言えば 未だ記憶に新しい2000年代 小泉内閣による郵政民営化だ。そして今年 安倍内閣による農協改革への着手が始まった。

先日 全国農業協同組合中央会(JA全中)が政府・自民党の農協改革案を受け入れると表明した。これにより JA全中の持つ地域農協に対する監査権限は廃止されることになる。というか こんな権限を全中が持っていたなどびっくり仰天だ。これでまともな農政改革などできるわけがない。望むらくは この農協改革により地域農協が経営の自由度を高め 農業の競争力を高める取り組みに力を注ぐようになることだ。もちろん JA全中が農協の代表・調整機能を持つことなどが認められるなど JA全中の実質的な影響力が保持される可能性も残されている。気がかりな点も多いし 妥協の産物との批判も多い。

おりしも先月末 ヤマト運輸のメール便廃止に関する憤りの記者会見があった。いわゆる親書(手紙)の定義と親書の取り扱い認可に関する 誰が聞いても不可解な行政問題に端を発した出来事だ。結局のところ 郵政民営化と言いながらも 郵便行政(旧郵政省・郵政族)の抵抗は未だに根強く続いているのだ。

三公社民営化から30年 おそらくは郵政民営化の価値が本物になるにはまだ10年以上かかるだろう。農協改革もしかり。これからが勝負だ。しかし少なくともJA全中の政府・税金依存圧力は今までのようには行かないだろう。久しぶりに がんばれ安倍さんと言いたい。

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