2015年3月 限りある地球環境のために
先日 このコラムで トヨタの燃料電池車の動きを称賛した。トヨタの“ミライ”は販売予約が好調のようで 生産台数は当初予定の3倍増にすることが決定したと言う。一方で 欧米の電気自動車メーカーの批判はすさまじい。批判の最大の根拠は 水素はあくまでも二次エネルギーであり その水素抽出に莫大なエネルギーがかかる。結局 トータルのエネルギー消費は電気自動車よりもかなり高くつくというものだ。その通りだと思う・・・今のところは。
燃料電池車の最大の魅力は脱炭素エネルギー つまり水素社会実現に向けての引き金を引いた点だ。口先だけで地球温暖化というよりも 最大の燃料消費の源である自動車燃料を水素にしてしまえ そうすれば議論は必然と水素をどうやって作るか運ぶかに向かうはずだという発想だ・・・素晴らしい。
逆に言えば 燃料電池車への批判は結局のところ水素社会実現の否定と言える。もちろん 水素は生産コストはかかるし 運送保管の管理やコストも大変なものになる。基本的に作りづらいし扱いづらい。それだったら他の選択肢の方が・・・。私に言わせれば 反対意見の多くは 新しい考えにはまず否定的に反応するというタイプの議論に見える。しかし今議論すべきは 現在 どのエネルギーが効率的かではなく どうすれば脱炭素エネルギーを実現できるかと言う点だ。燃料電池車や水素社会が今効率的かどうかではなく どうすれば効率的な水素の生産・運送・保管ができるかという点だ。
地球の命には限界はあるし 自然環境にも限界はある。いつかは分からないが いつか地球上の生命は滅びる。このまま炭素を燃やし続けて温暖化を引き起こせば 我々の文明は 地球環境はいったいいつまで生き残れるのだろうか。あと数百年 数千年 数万年・・・今世界で起きている異常気象を目にすれば 私たちは既にそうした問題に直面しているように思えてならない。
トヨタの特許公開の動きを受け 真っ先に対応したのは東京都に見えた。東京都は新たに400億円の基金を設け オリンピックまでに水素社会のモデルケース作りをしようとしている。「水素社会の実現に向けた東京戦略会議」なるものを立ち上げ これをオリンピックと合わせた車の両輪にしようと考えているらしい。舛添知事にしてはなかなかの目の付け所だと思う。
ちなみに水素抽出にはいろんな方法があるらしい。例えば 風力発電を利用して海水を電気分解してナトリウムを抽出し 後はナトリウムを輸送保管し 消費地の近くで水をかければ水素の出来上がりだ。現実にはとても困難なプロセスであることは分かるが 5年あればもしかすれば簡単なデモプラントくらいできるかもしれない。
一方 日本国政府はいかがだろうか。もちろん 政府も燃料電池車の購入助成金や水素ステーション設置助成金などを準備している。しかし もっと広い視点で水素社会実現に向けての政府投資を考えてもよいのではないだろうか。はっきり言って 安倍総理がなぜこれを第三の矢の中核として位置づけようとしないのか不思議でしようがない。安倍さん 水素社会実現を第三の矢の中心に据えなさい。今からでも遅くはない。いや今だからこそぜひ。