2016年3月(その2) 米国大統領選:ダークサイドの台頭


先日のテレビ番組で ジャーナリストの木村太郎氏が赤色のトランプ・キャップをかぶり 「共和党主流派がいかに画策しようが予備選の結果を覆すのは世論が許さない。共和党大統領候補はトランプで決まり 大統領もトランプで決まりだろう」と発言した。しかも続けて 過去の例を見ると 共和党大統領の方が日本と米国の関係は上手くいっているので トランプが大統領になったら今よりうまくいくだろうと トランプ寄りの発言をしたのにはビックリポンだった。

トランプは過去そして今の共和党主流派のやり方をこっぴどく批判して人気を得ているのだ。なのに 日本は共和党大統領と過去に良い関係を築けたから トランプ大統領とも良い関係が築ける・・・?どう見ても明らかな論理の矛盾だ。これが人気ジャーナリストの発言とは実に嘆かわしい。

そう考えると 今のトランプの発言も 木村氏に負けず劣らず 実に矛盾だらけというか 論理のすり替えがはなはだしい。そもそも「今の政治家は皆間違っている」というロジックでは議論そのものが成立しない。「今の政治家は皆間違っている。だから 政治家のあなたが今言っていることも間違いだ」というロジック。これは論理の誤謬だ。まず相手の正当性を全否定し ここから攻撃するというテクニックである。イスラムは・・・ 中国は・・・ 日本は・・・ 違法移民は・・・といった具合に まずは悪者を仕立てあげ 悪者は敵だという議論にすり替える。しかしよく考えてみると そもそも「良い」とか「悪い」というのは 「好き」や「嫌い」と同じ相対概念(主観)であり 絶対概念(客観)ではない。絶対的に悪い人や国などはないはずで だからこそ今の国際政治が抱えている悩みが深いのだ。

金持ちトランプの今の地位は確かに彼自身の努力と才覚によるところが多い。しかし もともと 不動産開発業者の父から莫大な遺産を引き継いだ 生まれながらの金持ちでもある。はっきり言えば 搾取する側かされる側かと言えば トランプは間違いなく生まれながらに搾取する側の人間だ。

しかし分からない。彼の党員集会などを見ていると 彼を熱烈に支持するのは 明らかに搾取される側の人間たちだ。とりわけプア・ホワイトと呼ばれる貧しい白人たちだ。仕事がないのは中国や違法移民のせいだと言う。考えは分からないでもないが その結果潤っている上位1%の人間を批判したり 上位1%の人間に冨が集中する現在の社会システムを問題視しようとはしない。やっていることは真逆で むしろその上位1%の象徴者を大統領にしようとしている。とても理解できない。

大統領候補のスピーチを聞いていると 私にはサンダースの主張が一番まともに聞こえる。なぜ彼の主張が左寄りの主張として紹介されるのかまったく理解できない。おそらくは今の米国の問題の深さがここにあるのだろう。しかし一方で 若い人たちの熱烈なサンダース支持を見ると 将来への米国の期待も大きくなる。

私は木村太郎氏と異なり 大統領本選での米国人の良識を信じて疑わない。多くのマイノリティが黙っているはずがない。最後にはクリントンに入れるはずだ。しかし 次世代のために サンダースさん ぜひ最後まで予備選を続けてほしい。ジェダイの心を持ってダークフォースに立ち向かってほしい。

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