2026年5月その2 マラソン新記録の裏で
4月26日のロンドンマラソンで ケニアのサウェイ選手が1時間59分30秒の世界新記録で優勝した。2位のケジェルチャ選手(エチオピア)も1時間59分41秒をマーク。男子マラソンはついにサブ・
トゥー(フルマラソン2時間以内)の世界に突入した。
しかし 激戦はマラソンだけではない。マラソンシューズの世界もまた然り。世界新記録をマークしたサウェイ選手の履いていた靴はアディダスProEvo3。驚くことにその靴の重さは 厚底にもかかわらず 片足で97グラムしかない。アディダスのその前のモデルProEvo1/2が138グラムだったのでこの軽さは信じられない進化だ。ちなみに 私がフルマラソンで履くシューズは220~230グラム。これでも軽い方だが 何とその半分以下。おそらく素足で走るのに近い感覚に違いない。皆さんもぜひ自分のスニーカーの重さを測ってほしい。100グラムを切る意味を実感できるはずだ。
マラソンシューズは 2017年にナイキの画期的な厚底シューズが登場。厚底でありながら軽量 しかもその厚底の中にカーボンプレートを埋め込み高反発力を生むという衝撃的なシューズだった。こうしてマラソン界は「ナイキの厚底」一色に染まった。ナイキの画期的製品に恐れをなした他メーカーは 推測だが 一致団結して公式シューズに規制を設けることを画策した(に違いない)。こうして 公認マラソンシューズは 厚みが40ミリ以下 市販されているものに限るなどの規定ができあがった。特注品は使用不可だ。 ちなみに 4月に500ドルで売り出されたアディダスProEvo3は即完売 現在入手困難な状況にある。転売市場で数千ドルで売られているという。
さて2021年の箱根駅伝ではランナーの95%以上がナイキを着用するという 異常とも言えるナイキ寡占状態だった。しかし その寡占市場が数年後にはマラソンそのものに劣らぬ激戦に突入する。各メーカーが打倒ナイキを合言葉に「厚底軽量高反発」シューズの開発に全力を尽くすことになったからだ。
箱根駅伝出場選手のシューズを見ると 2024年は ナイキ43% アシックス25% アディダス18% プーマ9%と未だナイキの圧倒的優位が続いていた。ところが今年の箱根駅伝では アディダス36% アシックス29% ナイキ17% プーマ15% と トップがナイキからアディダスに入れ替わり アディダスをアシックスが追う展開になっている。ナイキは3位に転落した。しかも プーマの追い上げも著しい。ちなみに日本記録保持者の大迫選手は昨年12月にナイキから中国ブランドのリーニンに契約を切り替えたので これから中国メーカーの名前も顔を見せるようになるかもしれない。まさにすさまじい競争市場なのだ。
さてシューズメーカーはこのままずっとプロ向けの「厚底軽量高反発」で争うつもりなのだろうか。確かにプロ選手や箱根駅伝の使用シューズが大きなPR効果をもたらすこともわかるし 最高峰の機能開発がいろいろなモデル開発のバックボーンになることもわかる。しかしそれでも プロ向けシューズの開発がここまでくると シューズメーカーもそろそろ次の戦いの場を考えた方がよいのではないだろうか。
私の個人的なことを話すと 私はしばらくの間 ずっとアシックスだった。私の足のサイズ(実寸)は右26.0cm 左26.3cm。マラソンでは走っている最中に足がむくんでくるので1センチくらい大きめのサイズを履く。ところがアシックスの27cmでは若干小さすぎるので27.5cmをずっと愛用していた。ある時 ウルトラマラソンで名器と評判のミズノ・ウェーブライダーを履くことにした。試してみたところ ミズノでは27cmがぴったりだった。アシックスと何が違ったのか。それは「足型」だった。アシックスの足型は足の甲あたりがきつすぎたので大き目のサイズが必要だったのだ。一方 ミズノは足型がぴったりだった。こんなこともいろいろ試してみないと分からない。以来 シューズは足型重視でミズノの27cmに決めている。
ほとんどのシューズメーカーはランナーの想定タイム(走力)ごとに違うブランドを提供している。そしてどうやらブランドごとに足型がきまっているらしい。ミズノもブランドによって微妙に足型が違うようだ。
個人的な希望を言えば プロ向けの「厚底高機能」シューズを追求するよりも 市民ランナー向けにいろいろな「足型」に適応できるようなシューズを開発してほしい。例えば同じブランドで足型を複数タイプ提供するとか。あるいは足型に応じてセミカスタム化可能な商品を出すとか あるいは自分にぴったりの足型を簡単に選べるような仕組みとか 足型を前面に押し出した画期的なシューズ(あるいはシューズ販売)を考えてもらいたい。何せシューズメーカーのHPを見る 「足型(足にピッタリ)」を前面に打ち出しているシューズメーカーがいないのだ。
具体的な提案をしよう。別にメーカーでなくても構わない。「ほけんの窓口」みたいに マラソンのみならずウォーキングも対象にした「シューズの窓口」みたいなサービスはどうだろうか。文房具メーカーのプラスが「アスクル」を事業化した時のように ミズノの子会社がアシックスを売ってもよいではないか。次の戦いの場を考える時にはぜひ頭の片隅に入れてもらいたい。・・・その時にコンサルティングが必要な場合はぜひ弊社にどうぞ。