2024年8月 米国分断
トランプ候補は3月 米自動車産業について語った際 自分が大統領選で負ければ「国は血の海になる」と述べ 批判を呼んだ。バイデン大統領は8月7日に「彼は本気で『自分が負ければ血の海になる』と言っている」と述べ 大統領選でトランプ前大統領が敗北した場合に平和的な政権移行が行われるという確信はないと語った。このニュースは広く報じられたが これがどのような意味を持つものか深く理解できなかった。
そして 8月13/14日 「NHKBS 世界のドキュメンタリー」を見てその意味を理解した。番組の日本語タイトルは「米議会襲撃が再び起きたら シミュレーション 緊迫の6時間」。英語の原題は「War Game」。
設定は2025年1月に予定される米国大統領の議会承認日。2期目を迎えるホーサム大統領(仮名)に僅差で負けたストリックランド候補(仮名)の支持者数千人が承認日に議事堂を襲撃するという内容。2021年に起きたトランプ元大統領呼びかけの議会襲撃事件が 今回はより組織だった形で計画的に行われるという設定になっていた。元州知事や大統領補佐官や軍関係者が大統領、官邸、軍トップなどの役割を演じ 経験豊富な元軍人がテロリストを演じる。シミュレーションは襲撃開始から6時間という時間を区切り すべてアドリブで進行する。大統領は6時間で全米に広がる事態を収束させることができるのか あるいは全米を二分した内戦状態を引き起こすのか。
この議会襲撃を裏で画策していたのは実は宗教法人の名の下に極秘裏に組織されていたプロのテロリスト集団。州兵の一部を仲間に引き込み 幾つかの州で反乱を主導する。アリゾナ州では議員が人質にとられ州議会が乗っ取られる。SNSで偽情報を拡散させ いったい今実際に何が起きているのか 国民には正しい状況が分からない。当初の情報戦争では襲撃側が圧倒的な優位に立つ。
大統領官邸のポイントは 反乱法を発動し 連邦軍の力で連邦議会や州の暴動を鎮圧させるかだ。米国憲法では反乱法を発動しない限り 軍隊は米国民に銃を向けてはならない。テロリスト集団としては 大統領に反乱法を発動させ 連邦軍に先に自分たちに向けて発砲させるように仕向ける。「先に発砲した方が負け」という内乱の鉄則にのっとった戦法らしい。
結果としては 大統領は反乱法を発動せずに 州兵で混乱を鎮めるという判断を下し これが功を奏する。内戦(第二の南北戦争)を避けることができ 何とか最悪事態を脱出。めでたし めでたし。
しかし これはあくまでもシミュレーションの話。本当に州議会を乗っ取られたときに反乱法を発動せずに済むのか 誰にも分からない。しかも 現実問題として 州兵や軍部の数%は親トランプだという。ちなみにこのシミュレーションの詳細結果はバイデン大統領や現官邸に報告されているとらしい。先のバイデン大統領のコメントもこうした背景を反映しているのだろう。「米国の分断状況を内戦前夜とみなすのはお門違い」と言い切れない怖さが本当にあるらしい。
もう一点 このシミュレーションを見て再認識したのがSNSの偽情報の怖さだ。偽情報は とりわけ問題発生の初期においては 先手優位。後手に回ると防御(偽情報の修正)は難しい。シミュレーションではアカウント削除などにより偽情報の拡散が沈静化をみせる。しかし 現実に そんなにうまく行くだろうか。拡散が拡散を呼ぶのではないだろうか。これに海外の工作が加わると そら恐ろしい。と考えていたら 今日 テイラー・スイフトがトランプを支持しているという偽画像がトランプ候補から流れた。・・・事実は想像を超えているらしい。