過去のひと言


2023年8月 オンライン会議限界の証明

現在私の研修の7~8割が対面研修となっている。もちろんコロナ時期はすべてオンライン研修だったけれども ようやくこのレベルに復活してきた。私自身が対面研修を積極提案しているのに加えて 多くの顧客企業も「やはり対面がいいですね」という形で私の提案に納得してくれている。今もオンラインで研修実施している企業は 海外や地方の勤務者が多く参加する企業や 仕事自体が在宅オンラインが基本になったという企業である。

私の研修は 15~18人の参加者を対象に双方向のやり取りで進めている。対面研修とオンライン研修の両方を経験していると どうしてもオンライン研修でのコミュニケーションの浅さが気になってしまう。本当に気になって気になってしようがない。私の質問には答えてくれるのだが 本当に私の真意を理解してくれているのかどうか どうも心もとない。そもそもオンラインの場合 カメラの位置と相手の映っている画面の位置は一致しないので 相手の目を見ながらの対話ということ自体が成り立たない。もちろん マイクやスピーカーを通しての会話となると どうしても意見を発表しづらくなる。このカメラやマイク/スピーカーを通じてのコミュニケーションが 思った以上に深いレベルでのコミュニケーションの足を引っ張っているようなのだ。ちなみに 同様の理由で 私はオンライン飲み会などまったくの反対派である。

オンライン研修や会議でのコミュニケーションの浅さは明らかに私の経験として感じていることであり 多くの方も私の意見に同意してくれる。しかし この経験値を合理的に証明することはできない。したがって 効率化を理由にオンライン会議を主導する合理主義者にとって 私の立場は昭和的に見えるかもしれない。・・・と思っていたところ 某テレビで対面会議とオンライン会議の参加者の脳波を比較した研究の紹介があった。以下は川島隆太東北大学加齢医学研究所所長の話である。

そもそも「よいコミュニケーションとは共感を得られること」と定義される。これを脳波的に見れば お互いに相手の感情を理解しようとする良いコミュニケーションが取れている状態の時 脳活動の揺らぎが同期するという。この脳とコミュニケーションの関係はコロナ前からいろいろの実験が行われており 以前から明らかになっているという。結論から言えば 人と人のコミュニケーションにおいては「複数の人の脳の活動が同期すること」と「複数の人の間で共感が生まれ協調や協力ができること」はイコールと言えるのだ。

これを踏まえ 川島博士は対面とZoomを使った2チームの会話の差異を調査している。その結果 対面チームは会話開始後すぐに脳の前頭前野が同期し始めたけれども Zoomチームでは はた目には会話が成立し笑い声も飛び交い盛り上がっていて楽しそうに見えたのに 脳波はまったく同期しなかった。もちろん 脳が同期化しないと共感は生まれない。オンラインだから「座が温まる」までに時間がかかるということではなくて 盛り上がっていても脳は共感できていないというのだ。オンラインでは脳内の感情をつかさどる部分が働かないのだ。一見盛り上がって楽しそうに見えた会話もすべてうわべの浅いコミュニケーションだったのだ。

結論から言えば オンラインでは情報伝達程度はできるけれども 共感や協調は生まれない。深いコミュニケーションが不可欠の 双方型の私の研修スタイルはやはりオンラインでは大きな限界があるのだ。オンライン飲み会否定派の依怙地に見える私の主張もまた科学的に証明されたのだ・・・やっぱりである。

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