ワークブック演習例題をOPQスタイルで解答する


隗コンサルティングの研修では、SCQの代わりにOPQを用いた方法で指導しています。ここでは、私の研修に参加され、かつ、「考える技術・書く技術ワークブック」を自習されている方を対象に、ワークブック上巻Ex.4の演習をSCQではなく、OPQで解答するとどうなるかをご説明しています。

SCQA(状況→複雑化→疑問→答え)はより一般的なストーリー構造です。私が研修で教えている、OPQA(目標(良い状況)→問題→疑問→答え)は、SCQAの一般的展開をビジネスの問題解決状況に絞り込んでいます。こうすることで、より簡単で実践的に活用できるように配慮しています。

ワークブックで収録している演習の多くが、ビジネス上の問題解決ではなく、一般文書を事例として取り上げています。ここでは、各演習例を、ビジネス上の問題に状況設定した上で、OPQA式の参考解答を記してみました。

ワークブック収録のSCQA解答もOPQA解答もあくまでも見本であり、答えはいくつもありえること、とりわけ、SCQの場合のSCは何通りもありえることは忘れないでください。また、SCQA解答とOPQA解答はかなり異なっていますが、読み手のQはほぼ同じになっていることに留意してください。

Ex. 4A-1 投資リスクの分析
状況設定: 経営者に対しリスク測定手法を提案する
R: 経営者
O: 経営者が各投資収益レベルのリスクを正しく判断する(あるいは、そのような手法を持つ)
P: 今までのリスク測定のツールやテクニックはほとんど経営者の助けにならなかった。(例:仮定条件の不確実性)
Q: 経営者の投資判断を鋭いものにする、より現実的なリスク測定手法はあるのか?
A: イエス。ある。その手法とは・・・
レール:実践的なリスク測定手法

Ex. 4A-2 社員のモチベーションをどのように上げるか
状況設定: 経営者に対し、社員モチベーションを上げる方法を伝授する
R: 経営者
O: 社員モチベーションを上げる(あるいは、そのための本当に役に立つ方法論を知る)
P: 今までの方法論はほとんどが憶測でまやかしだった
Q: 実践的な方法論はあるのか?
A: イエス。ある。ここで述べる方法は・・・
レール:モチベーションを上げる方法論

Ex. 4A-3 マーケティング近視眼
状況設定: 経営者に対し、成長のための経営をアドバイスする
R: 経営者
O: 成長を続ける(あるいは、成長が止まる本当の理由を知る)
P: 成長産業といわれる産業でさえも、知らず知らずのうちに衰退の影に覆われている
Q: 衰退の理由は、市場飽和に直面するからか?
A: ノー。市場飽和が理由ではない。経営の失敗が理由だ。
レール:衰退の理由

Ex. 4A-4 環境を守り、かつ、競争力を保つ
状況設定: 経営者に対し、環境規制など社会の動きへの正しい対処法を教える
R: 経営者
O: 環境規制の動きに上手く対応する
P: 環境規制はコストを上昇させる
Q: 環境規制は企業の競争力を低下させるのだろうか?
A: ノー。適切な環境規制は技術革新の引き金となり、その結果、商品価値を向上させうる
レール:環境規制の企業経営への影響

Ex. 4A-5 取締役会の役割
状況設定: 経営者への提案を行なう
R: 経営者
O: 取締役会が、本来の業務(長期的戦略課題)にフォーカスする
P: 組織的には可能になったが、意識転換がまだである
Q: 取締役/取締役会の意識転換を促す方法とは何か?
A: ・・・を提案します。
レール:取締役/取締役会の意識転換

Ex. 4A-6 日本市場をこじ開ける
状況設定: 欧米企業の経営者にアジア投資方針をアドバイスする
R: 経営者
O: 東南アジアにおけるビジネス機会を獲得する(日本市場に注力した現在の状況でよいかどうかの判断を下す)
P: 日本市場が上手くいきそうもない(多くが日本を撤退し、中国/インド市場にシフトしている)
Q: 日本市場は無視してよいか?(日本市場は上手くいかないのか?)
A: ノー。日本市場を無視することは大きな過ちである。なぜならば・・・
レール:アジア戦略における日本投資の位置づけ

Ex. 4A-7 テレビの衰退
状況設定: 広告主に、新たなマーケティング戦略をアドバイスする
R: 広告主(マーケター)
O: テレビの衰退を補う効果的な消費者リーチを行なう(あるいは、そのような方法を知る)
P: 何百万人に相当する消費者がテレビ離れを起こしている
Q: この人たちは何をしているのか?(なぜテレビ離れを起こしたのか?)
A: 彼らは・・・
レール:テレビ離れした消費者へのリーチ

Ex. 4A-8 早く行くためにゆっくりと
状況設定: 経営者に商品開発アプローチをアドバイスする
R: 経営者
O: 商品開発を成功させる
P: 多くの企業が、商品開発にあたっては、スピードなど特定の改善のみを追及しようとして失敗する(開発プロセスに悩まされている)
Q: 商品開発に必要なアプローチとは何か?
A: それは、商品開発を複雑系としてとらえた統合的・全体的なアプローチである
レール:商品開発アプローチ

Ex. 4A-9 恵まれた環境
状況設定: 政治家にアメリカの技術や市場環境への過信を正す
R: 政治家
O: アメリカ経済がこれからも発展する(今までの発展の真の理由を知る)
P: 「科学技術の進歩に企業家精神や自由な市場経済が上手くかみ合ったのがアメリカ発展の理由」という主張に異論がある
Q: この異論は正しいか?
A: イエス。科学技術の進歩や企業家精神などに優位性があったわけではない。
レール:アメリカ成長の理由

(注:この文書の主メッセージは、「アメリカが生み出した技術革新や経済・市場環境が近代のアメリカ経済成長の基盤となったのではない」。だとすれば、導入部の第一パラグラフはすでにその主メッセージの理由の一部を述べていることになる。これは本来はピラミッドの中に理由として組み入れられるべきであり、導入部としては適切さに欠けていると考える)

Ex. 4A-10 キャンパスの栄誉
状況設定: 学校関係者に学生の不正行為を無くす方法を提案する
R: 学校関係者
O: 学生が不正行為をしない
P: ほとんどすべての学生が不正行為をしている
Q: MITでは、なぜ、17%もの学生が不正行為をしなかったのか?
A: なぜなら・・・
レール:MIT学生の不正行為の少なさ

Ex. 4B-1 ブランド・マネジャー制度の成果
状況設定: 経営者にブランド・マネジャー制度の正しい運営方法をアドバイスする
R: 経営者
O: ブランド・マネジャー制度を活用する
P: ブランド・マネジャー制度がうまくいっていない
Q: そもそもブランド・マネジャー制度は上手くいくのか?(もともとそのコンセプトそのものに問題があるのではないか?)
A: コンセプトは良い。コンセプトではなく、経営者の理解とコンセプト運用に問題があるのだ
レール:ブランド・マネジャー制度の活用

Ex. 4B-2 コンサルタントの顧客
状況設定: コンサルタントに私を理解させる
R: コンサルタント
O: コンサルティング契約を取る(ために、私のことをしっかりと理解する)
P: 私が誰かを理解していない
Q: 私はだれか?
A: 私は・・・
レール:私の理解

Ex. 4B-3 科学の始まり
状況設定: 学生に対する講演
R: 学生
O: 人類社会における科学の正しい歴史的位置づけを理解する
P: 殆どの人が科学の発展を人類発展の自然な一部(歴史的必然)だと考えている
Q: 科学の発展はほんとうに人類発展の自然な一部(歴史的必然)なのか?
A: ノ-。科学は生まれて間がないもので、決して人類発展の自然な一部(歴史的必然)とはいえない
レール:科学の発展

Ex. 4B-4 医療技術
状況設定: 医療行政者にアドバイスする
R: 医療行政者
O: 医療技術のコスト/効果を評価する
P: 今のままでは、評価は困難である
Q: どうすればよいか?
A: まずは、医療レベルの明確な定義から始めよ
レール: 医療技術の評価

Ex. 4B-5 この画像で何が問題?
状況設定: 経済産業省大臣にアドバイスする
R: 経済産業省大臣
O: 正しい政策に予算を投じる
P: テレビの内容ではなく、テレビの画面に巨額の開発をしている
Q: これは正しい産業政策か?
A: ノー。ばかげている
レール:テレビの開発

(注:この文書の主メッセージは、「テレビの画面精密化をテレビの進化だと考えるのは間違い」。だとすれば、導入部の第一パラグラフはすでにその主メッセージの理由の一部を述べていることになる。これは本来はピラミッドの中に組み入れられるべきであり、導入部としては適切さを欠くと考える)