過去のひと言


2024年6月 GGOB

先日 ある知り合いの方が 私が20年前に出版した本『オブジェクティブ&ゴール』(講談社)を携え 某中堅企業の次期社長という方を連れてオフィスにやってきた。次期社長氏は社長就任を機会に新施策を考えていた。それは ある目標利益を達成したら 超過分の利益の半分は従業員に賞与還元するというものだった。

いろいろとご相談させていただくうちに どうも目指しているのはOBM (Open Book Management) のようなものだと思いあたった。そこで OBMの産みの親といわれる企業 米国ミズーリ州にあるSRC社のGGOB (Great Game of Business)手法を紹介させていただくことにした。ちなみに 日本ではOBMという呼称が有名だけれども SRC社ではGGOBという独自呼称を用いている。OBMといえば 「Open Book」の印象が強すぎるために 多くの人が「会社の財務・経営情報の詳細を従業員と共有することだ」と誤解している。この誤解を避けるため 同社ではOBMという言葉の使用を避けているのだ。GGOBの呼称はSRC社創立者Jack Stack氏が書いた世界のベストセラー 『The Great Game of Business』に由来している。

もう20年も前になるが 私は このGGOBの4日間ワークショップを受講するためにミズーリ州に足を運んだことがある。当時 この手法にえらく感銘を受け その内容の一部を紹介したのが 前述の小著『オブジェクティブ&ゴール』だった。この知り合いの訪問を契機に すっかり忘れかけていたGGOBが亡霊のように私の頭に甦ることになった。というわけでもう一度関連図書(もちろん英語の原本)を何冊も取り寄せ GGOBについて調べ物をすることになった。

さてGGOBのコンセプトを簡単に説明させてください。GGOBではまずコアとなるのが「設定目標の共有(Setting Critical Number)」。そして その共有目標を3つの共有プロセスで実現化するという手法を取る。具体的には ①「目標達成方法の共有:従業員の仕事と目標がどう関連するのかを教える(Know & teach the rules)」 ②「目標達成状況の共有:目標達成の状況を逐次開示する(Follow the actions & keep scores)」 ③「目標達成成果の共有:目標達成の成果を従業員と分かち合う(Provide stake in the outcome)」。

この考えは社会学の基本と合致している。すなわち「組織と集団の違いは目標の共有にある。目標の共有意識がなければそれは単なる集団であって組織とは呼べない。目標の共有意識が強ければ強いほど組織の力は強くなる。」また GGOBの教義にはこういう言葉もある。「People support what they help create.(人は自分が一緒になって作った目標に関しては その実現に力を尽くす。逆にいえば、単に他者から与えられた目標に関しては 実現の努力を期待するのは無理)」。

さて話を元に戻そう。次期社長氏は「目標利益を達成したら 超過分の利益の半分は従業員に賞与還元する」と言った。皆さんはこのやり方をどう思いますか?・・・確かにそれで従業員はハッピーだろう。しかし果たして従業員のやる気はアップするだろうか。残念ながら GGOB的にいえば 不十分と言わざるを得ない。

まずコアとなるべき目標が共有されていないのが最大のボトルネックだろう。この目標は社長が上から与えた目標ではだめなのだ。従業員が関与して納得して決めたものでなければならない。具体的にどうすればよいかというと プロジェクトチームを作って従業員主導で目標を設定させればよいのだ。ついでに超過目標のどれだけを社員と分かち合えばよいのかの決定も彼らに関与させたい。もちろん どうやればこの目標が達成できるのか あるいはどのようなやり方で社員と情報共有するのがよいか その他の目標共有プロセスについても逐次考え出さねばならない。GGOBというのは考え方はシンプルだが 実行には手間がかかる。いや正確には手間というよりも リーダーの覚悟が必要なのだ。

2024年4月 東京マラソン振り返り

先月 東京マラソンを走った。私にとっては9回目の東京マラソン出場だ。結果は4時間27分ちょうど。コロナ以降のベストタイムだったので まあ 満足しよう。東京マラソンは 2020と2021の二度 コロナのために中止。コロナ前 2019年春の東京マラソンまではずっと4時間を切って走っていたのだから 多少はコロナを言い訳にしてもいいかもしれない。いろんなところにコロナの影響は現れている。

さて結果を見ると 70~74歳のカテゴリーで440人中の86位。何とか上位20%に食い込んだ。この話をすると 皆一様に驚く。ただし驚くのは私の順位ではなく 440人という数字だ。70歳以上で考えると おそらくは6~700人は走っているだろう。これだけ多くの高齢者が42キロの距離を走るのだから驚くのも無理はない。私の場合 トイレ休憩の2分を含み キロ当たり6分20秒で42キロ走っていることになる。ジムでベルトの上を走ってみるとわかるが 結構きつい。自分をほめてあげよう。

今回 それなりのタイムで走れたのには理由が二つある。一つは途中で追いついた4時間30分のペースランナーにぴったりくっついて走ったこと。やはりペースランナーの存在は 少なくとも我々レベルにはありがたい。

もう一つの理由は事前にコースをみっちり研究したことだ。東京マラソンは2017年にコースが大きく変更になった。今まで有明に合ったゴールを皇居前に変更したのだ。これにより 蔵前橋から富岡八幡を往復するルートが追加された。他にもマイナーなルート変更があったが とくに辛いのは この蔵前橋を渡って富岡八幡を往復するルートだ。

これがちょうど20キロから28キロ。一番きつい距離にもかかわらず このルートには途中にある中間点を除き特徴がない。富岡八幡宮も奥まったところにあるので見えないし 途中の清澄公園も見えない。今回 69歳のランナーが観衆に手を振っているときに足をもつらせ転倒。打ち所が悪く死亡するという事故が発生した。これが起きたのが21キロ地点。この一番つらいルート上だった。

総合的にみて こうしたルート変更により 東京マラソンは走りやすい東京周遊コースになった。ただこれらの変更により ルートが若干複雑になり 走っているうちに場所感覚をつかみにくくなった。そこで 今回はルート図を事前に観察し 3キロごとにどこを走るか 何が目印かを頭に刻み込むことにした。これが効いた。やはりきつくなると あと少しという目印を持つのはとても重要だ。

参加者人数も増やしたせいだろうか スタートからゴールまで1メートル前には必ずランナーがいるという超混雑レースだった。感覚的にいえば ランナーの3割は外国人だ。スタートからゴールまで沿道の声援は全く途切れることがなかったし 外国人の派手な声援も目立っていた。文字通り 国際レースとしてほぼ完成した感はある。

さあ 次は4月21日予定の富士五湖ウルトラだ。参加予定の100キロの部は制限時間14時間。途中に6か所の時間制限の検問がある。朝5時にスタートすれば夜7時にゴール。3年前に事務局に問い合わせたところ 最高齢の時間内完走者は75歳だった。まだまだ行ける。東京マラソンに見習い 走る前にルートを頭に叩き込むつもりだ。しかし東京マラソンと違い 上り下りが激しい。平面図チェックだけではうまく行かないのがウルトラの難しい点だ。

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