過去のひと言


2025年2月 ドッペルゲンガー現象

先日 ニューズウィーク誌(日本版2月25日号)のPicture Powerの欄でドッペルゲンガーが特集されていた。カナダ人アーティスト フルネル氏の「世界のそっくりさん」を撮影する25年がかりのプロジェクト(「I’m Not a Look-Alike!」)の紹介だ。ドッペルゲンガー?・・・ほとんどの人にとって聞いたことのあるような無いような言葉だろう。いわゆる「そっくりさん」で使われるけれども 語源のドイツ語(「二重に歩く者」)はより深い霊的な分身を指す言葉だという。

ニューズウィーク誌に掲載されている2人1組の写真をみると本当に不思議だ。その多くが全く同一人物に見える。しかし 映っている2人は双子でも兄弟でも親戚でもない赤の他人。顔認識ソフトを用いた被写体の「そっくり度」を分析した結果 学術誌セル・リポーツに掲載された32組の写真のうち 16組で見た目のそっくり度が一卵性双生児と同等と判定されたという。

しかし本当に驚くのはそっくり度が見た目にとどまらないことだ。そっくりさんの中には 見た目だけではなく 性格や趣味などが驚くほど似ている人がいるという。ある人は同じ名前を持ち 妻の名前も同じ。さらに同じ歳の息子がいるという。また気象予報士をしている人が小さいころからつけていた気象記録のノートをそっくりさんに見せたところ 相手も子供のころから毎日天気を記録していたという。・・・これらを単に「偶然」という言葉で片づけていいのだろうか。

フルネル氏によると このプロジェクトの本質は「自分とは何者なのか」「私たちは何なのか」「私たちは自分が思っているような自分なのか」という問いかけにあるということだ。かなり哲学的だし 掲載された写真と解説を読んでいると この問いかけなど序章にしか過ぎないのではないかという気すらする。

「小さい子供がまったく経験したことのない 自分とは無関係のイタリアの片田舎で過ごした過去の記憶を語りだした」という話がある。子供が口にした過去の記憶を調べてみると実在した人物の本当の話だと判明しという。ただし この記憶は成長するにつれて消えていくらしい。同様の話がいろいろなところで紹介されているので 耳にしたことのある人も多いだろう。そんなの嘘っぱちだという人もいるだろうけど 私は信じる。そして ドッペルゲンガーも同じ線上にある話に思える。

真偽のほどは不確かだが 人間は死ぬ時にわずかに体重が減るという。私が思うに 人間には生命の根源や記憶に関する 実在する(質量を持つ)「何か」が存在して その何かは死んでもしばらくは(約49日間)周りの空間で生きながらえ 徐々に消えていく。しかし その一部はもう少し長く生きながらえ 四次元的に移動し他の人の誕生時にその人の中に潜り込むのではないかと考えている。ドッペルゲンガー現象もこの何かが分裂して別々の人に潜り込む現象かもしれない。

どうだろう・・・私が考えるSF小説のネタの一つだ。

2025年2月 AIの間違い

最近 時々 AIを使用する。特に高度な利用をしているわけではない。用途は 翻訳とちょっとした調べもの そして孫の学校の宿題だ。

Chat GPT(無料版)とGoogle Gemini(無料) の両方に登録しているが 今はもっぱらGeminiを利用している。利用初めの頃 Chat GPT(無料版)では元になるデータが2019年までのものだったからだ。これでは最新情報を得られない。また 英語への翻訳など Geminiの方がChat GPT(無料版)よりも解説が親切なために勉強になる。ところが 左脳を使うロジカルな作業になると Chat GPTの方に軍配が上がりそうだ。その前に まずは「AIも間違える」ということを肝に銘じておかねばならない。

ちなみに Chat GPT-4(有料版)で 2022年の日本の医師国家試験を解かせたところ 正答率は必修問題で 82.7% 基礎・臨床問題で77.2%。それぞれ合格点だったという。しかし逆にいえば 百点ではないということだ。誤答箇所を調べたところ 医学知識の不足や日本特有の医療制度に関する情報不足に加えて 計算問題での誤りなどがあったという。AIだって計算間違いするのだ。

ついさっき Geminiで「2月8日東京15時はアメリカのサンアントニオでは何時か」と聞いたところ 「2月8日午前1時だ」と回答があった。「0時の間違いではないか」と再度聞いたところ 「あなたが正しい。先ほどの答えは間違いでした。申し訳ありません」との回答。ちなみChat GPTでは0時と正確な答えだった。なんでこんな単純な計算で間違うのか不思議でしょうがない。

先日中学2年の孫の化学で 分子の結合エンタルピーの宿題が出た。えっ?こんな難しいことをやっているのかという話はさておいて 例えば、「2H2+O2→2H2Oの反応」では反応前の結合エンタルピーは1370kJ。反応後は1852kJ。反応後に482kJ増える。

この変化は吸熱作用なのか発熱作用なのか うろ覚えを確かめるために Geminiに尋ねてみた。日本語で尋ねたところ「エネルギーが増加しているのだから482kJの吸熱作用だ」という。なるほど。しかし 時差のこともあるし 多少の不安があったので 英語で同じ質問をGeminiにしてみた。そうすると 何と英語の回答では 真逆の答え「482kJのエネルギーを放出する発熱作用」だという。結果から言えば 英語の方が正しい。化学反応の結果 分子が形成される作用はエネルギーの放出作用なのだ。日本語の説明は 実は間違いやすい誤った回答だった。英語のGeminiではここは誤解しやすいと解説していた。日本語でこの間違いを指摘したところ「日本語の回答は間違いでした」というお詫びメッセージ。

なぜ 日本語と英語で回答が違うのか。やはり学習のもとになる情報量の差なのだろうか。ちなみにChat GPT(無料版)で日本語で同じ質問をしてみたところ 正解を答えてくれた。どうやらロジカル作業に関してはChat GPTの方が上のようだ。日本語版 Geminiの奮闘を望みます。

2025年 今年の目標

2025年あけましておめでとうございます。

70歳を過ぎると 周りからあなたの今年の目標と聞かれることはない。また 自分で今年の目標は何にしようかと考えても なかなか答えが見つからない。実際にはこれをやりたい あれをやりたいというのは結構ある。しかし 何のためにそれをやるのかということを考えると 返答に窮してしまう。

考える手順に関する言葉に「マーリン・メソッド」というのがある。マーリンというのは魔法使いの名前。英国のアーサー王物語に登場する 世界でもっとも有名な魔法使いだ。マーリンには予知能力がある。将来起きることを知っているので それに基づいてアーサー王に助言を行う。これを元に「まず将来やるべきことを考え それに基づいて今何をやるかを考える」方法をマーリン・メソッドと呼んでいる。たとえば 将来の目標を定め それに基づいて短期目標を決める。あるいは 長期戦略を定め それに基づいて短期戦略を定める。原則 ビジネスはすべてマーリン・メソッドに従う。

マーリン・メソッドを個人にあてはまると 今年何をしようかと考えるときには まず「60歳までに何をやりたいか」を考える。そのためには「50歳までに何をやらねばならないか」 したがって「今年は何をやるべきか」という具合に目標設定していく。若い人にはぜひこれで人生の目標を考えることをお勧めする。

ただし 永遠存続を前提とした企業と比べて あるいは有限責任が原則の企業と比べて マーリン・メソッドがすべての「人」に適用できるとは言い難い。とにかく一日一日を乗り切るのに四苦八苦の人にとってこの方法論は意味がないだろう。また 70歳を過ぎた私にとってもあまり現実的ではない気がする。

それでは 私にとっての目標設定とはいかにあるべきか。ちょっと考えたのだが アメーバ・メソッドというのはどうだろうか。とにかく今年は今やりたいことや やらねばならないことをやる。ダボハゼ的な決め方で結構。何のためにそれをやるのかなどという長期目標も考えない。そしてそれから一年後 たとえば「去年はこれをやったから来年はこれをやろう。あるいは数年後にはこれもやれるかもしれない」と考える。つまりアメーバのように発展性があればどこに向かって発展しようが構わない 発展するだけで十分という考え方だ。そしてよく考えてみるとそのように決めた「やるべきリスト」にはすべて何らかの発展性が内包されている。そう考えると結構気が楽になる。いかがだろうか。

アメーバ・メソッドに従えば 私の今年の目標は
● 去年は100キロマラソンの74キロ地点で熱中症になった。今年は予防とトレーニングをしっかりして100キロ完走を目指そう。まずは今月から月200キロ走ろう。
● 去年は英語でZoom会議をやる機会があった。今年は 英語の勉強のために週3回はTEDを聴こう。
● 最後に 昨年 10数年ぶりに米国発祥の某ビジネス・コンセプトに関する問い合わせがあった。再度 このコンセプトの現状を研究してみよう。もしかすると日本に紹介する価値があるかもしれない。もちろんないかもしれない。

と考えていると 3ヵ月前に友人からもらったアリストテレスの人生論に関する英語本が机の横にあるのに気づいた。序章だけで20ページあったのでちょっとビビっていた。そうだ まずこの「人生論」から手に付けるようにしよう。ささやかながらこれも「やるべきリスト」に入れておこう。

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