過去のひと言


2014年5月 新築一戸建ての驚き

前回 ハワイの不動産のお話をしました。今回は日本の不動産の話しです。

以前から一軒家購入を考えていた長女夫妻がついに行動を起こし 4月頃から不動産物件の見学を始めた。まだ若いのでそう急がずともよいのではないかとアドバイスをしたが 夫は地方公務員なので引っ越しはないし 子供が三人に増えたので 上の子が小学校に入る前に落ち着きたいとの考え・・・これはこれで理解はできるので できる限り協力することにした。ターゲットは新築一軒家だ。ここではそのプロセスで経験したちょっとした驚きを紹介したい。

実際に経験して分かったが 新築一軒家の価格ほど不可思議なものはない。あってないような売り出し価格はマンションの比ではない。考えてみたら 私はずっとマンション暮らしなので 一軒家を購入した経験がない。新築マンションならば 売れ残り物件を別にして 売り出し価格にはほとんど交渉の余地はない。一室値下げすれば他も値下げする必要に迫られるからだ。しかもマンション分譲会社は基本的にそれなりの信用力・資金力を備えた大手企業だ。しかし 新築一軒家の場合 そうとは言えない。

物件見学が連休に差し掛かったころ つまり 不動産物件見学のピーク時期に差し掛かったころ驚くほど一斉に売り出し価格が値下がりされた。しかもその値下がり幅が尋常ではない。4500万円の物件ならば 4000万円に 4000万円の物件ならば 3500万円に 3500万円の物件なら3000万円に。何も言わないで 連休を境に500万円程度の一方的な値下げがざらなのだ。物件の中には700万円値下げというものもあった。

人生経験豊富なはずの私にとっても この値下げ幅は信じられない。初めて家を購入する娘夫婦は唖然とした様子だ。もう少し最初から売り出し価格を下げていれば 興味を持つ人も増えるかもしれないとは思わないのだろうか。これから初めて家を買おうと言う人は要注意。この業界はどうやら大幅な値引きを前提に当初の売り出し価格が設定されている。しかも その値引き額は 買い手の想像を軽く上回るものだということは念頭においていた方が良い。

さて 気に入った物件を見つけた娘夫婦は 500万円の値引きの後 契約に入ることになった。不動産契約の後は住宅ローンの手続きだ。公務員の娘の旦那は ろうきん(全国労働金庫協会)で財形積み立てをやっており その流れで労金から住宅ローンを借りようかと考えていた。私のイメージでは 労金と言えば公務員のための金融機関だ。しかし相談を受けた私はその内容を聞いて驚いた。

今回 住宅ローンの契約者は旦那だが 登記は娘夫婦の間での資金拠出の割合に応じて共有名義とすることになる。そうしないと夫婦の間で贈与が発生したとみなされる。驚いたのは 何と労金の住宅ローンは物件担保を取った上に 共有名義者(妻である娘)に連帯保証人になることを要求するのだ。ちなみに娘は現在専業主婦。担保を取った上に専業主婦の妻に連帯保証人をつけろ・・・これって一時代前の高利貸しの話しではないか。これにはさすがの私も激怒した。

もしかして私の考えが甘いのかと思い 民間金融機関の住宅ローンを調べた。結果 メガバンク(三菱東、UFJ、みずほ、三井住友)や横浜銀行は連帯保証人など要求しない。当たり前の話しだ・・・と思ったらそうでもなかった。ネットによれば、労金の他 りそな、中央三井信託、千葉、京葉、東京都民、住友信託、ソニー銀行なども連帯保証を求めるらしい。どうやら 世の中 高利貸し体質を引きずって 銀行の看板を掲げている金融機関が多いということらしい。ご注意あれ。

私の娘夫婦?・・・もちろん労金ではなく メガバンクの一つから住宅ローンを借りることにした。そもそも諸々の付帯条件を考えれば メガバンクの方が労金より金利が安かったのだから話にならない。

2014年4月No.2 ハワイ不動産事情

先週 ハワイ在住の娘と二人の孫に会いにホノルルに行ってきた。本当に何度行ってもハワイは最高。できるものならば引っ越したいと思う。・・・無理は承知だが 頭で考えるのは自由でしょう。

さて最近どうもハワイの不動産は値上がり傾向にあるようだ。ちなみに 現在 アラモアナ・ショッピングセンターに建設中のコンドミニアムは最低で1億円というような物件だったが 昨年の発売時にはものすごい行列ができ あっと言う間に完売したと言う。また このアラモアナ地区の更に西側にあるカカアコ地区は大規模な再開発の真っ最中だ。何棟もの大型コンドミニアムが建設中である。将来的には20棟ものコンドミニアム/ショッピングビルが立ち並ぶらしい。すでに売り出されたコンドミニアムもあるが ここでも数千万円以上だ。それでも人気が高いらしい。

アラモアナ・ショッピングセンターは 正面に公園やビーチがあり ワイキキからもぎりぎりだが徒歩圏 ウォルマートもドンキホーテも徒歩圏なので とても便利がよい。1億円と言われればそれくらいの価値は十分にあるだろう。しかし カカアコまで来るとワイキキとは別のエリアだ。

しかし心配ご無用。アラモアナ・ショッピングセンターから このカカアコを経由し 空港 そして その先まで32kmにおよぶ鉄道がすでに建設に入っているのだ。ホノルル・レール・トランジットと呼ばれる このハワイ初の鉄道網は2017~2019年にかけて開業予定になっている。すでに無人運転のモデル電車も発表されている。数年後には確実に “ホノルル・イコール・ワイキキ”という発想は時代遅れとなっているはずだ。なにせワイキキ地区にはもう建設しようにも空いた土地がないのだからしょうがない。

こんな話をするとプチバブル的な雰囲気を感じるかもしれない。しかし 実際にはハワイの不動産価格はかなり底固い気がする(あくまでも個人の意見です)。その最大の理由は売買価格のオープン制にある。実はハワイのコンドミニアムの売買取引は登録制になっており 幾らで売買されたかの記録がすべてオープンになっている。ネットでも閲覧可能だ。したがって 格安の掘り出し物があまりない一方で 馬鹿高い値段で大損をするということもない。・・・これは買い手にとってとても安心できるシステムだと思うのだが いかがだろうか?

ちなみに ハワイでは 売買記録だけではなく売却希望物件もすべて登録制になっている。したがって 不動産会社によって紹介できる物件に差があるということはない。どの不動産会社であろうが同じデータベースにアクセスし同じ物件を紹介することができる。更に言えば 米国では不動産会社に支払う手数料はすべて売り手が支払う習慣なので 購入者の負担は少なくて済む。・・・ちょっと脱線してしまったが 日本でも不動産市場を活性化したいと思えばまだまだ手を付けていない部分が多くありそうだ。

2014年4月 建設業界の現状?

安倍総理の下 東京オリンピックは決まったし 公共事業への大幅な予算投入も行われている。さすが建設業界は大儲けだろうと思って業界の友人に聞いてみた。しかし友人によると実態はそうでもないらしい。建築コストは高騰し 労働者不足も甚だしく 確かに忙しいのだがあまり儲かっていないという。大規模入札などは応札後の建築費の高騰が怖くて応札できない状況だと言うのだ。

昨年11月に実施された築地市場の豊洲新市場への移転建設工事の入札では 4事業のうちの3事業で入札不調に終わった。落札したのは69億円の衛生検査所工事の1件のみ。予定価格628億円の残り3事業は 事前に参加の意向を示していた鹿島・清水・大成・竹中・大林組など大手ゼネコンが金額面で折り合わず入札を辞退した。都の提示していた予定価格では安すぎて入札が成立しなかったのだ。

結局 築地の入札は3棟分で予定価格を当初の628億円から400億円引き上げることになった。計1000億を超す予定価格で再入札が行われ 2月半ばに大手ゼネコンが落札した。中にはこれは出来あいのレースで もともと無理な予定価格で予算を組み 結局は再入札という形で値段を上げるという常套テクニックだという人もいる。しかし それにしても600億円が2か月で1000億円という変わり様には驚かされる。東北の復興事業の入札でも不成立続出という話をよく聞く。

建設業界も大変なのだなと思っていた矢先 2月に発生したのが南青山で三菱地所・鹿島建設が建設中だった億ション販売中止の話だ。最高価格3億5000万円 最多価格1億4000万円 “ザ・パークハウス グラン南青山高樹町”だ。事業主は三菱地所レジデンス、設計監理が三菱地所設計、建築施工が鹿島建設。億ションに相応しい業界最強の顔ぶれた。これで問題など起こるはずがない・・・しかし起きた。

工事に不具合が生じたのだ。配管・配線を通すスリーブ(貫通孔)が設計通りに入ってなかったという前代未聞の大失態だった。全部で6000カ所あるスリーブのうち 600カ所について孔が空いていなかったり 孔の場所が間違っていたという。壁の中は鉄筋だらけだし 特にスリーブ孔周辺は補強筋を取り付けて強度の低下を防ぐ。後で孔をあければよいという代物ではない。しかも施工図そのものが設備設計図を反映していなかったらしく 間違った施工図を元にチェックしても間違いに気づかないという状況だったという。この間違いは設備工事担当者から8月に現場所長に報告されたが 上手く状況が理解されず “よきに計らえ”的な指示で終わったという。

結局今年に入って内部の人間によるネットの書き込みが発端となり問題が顕在化。引き渡しまであと3か月と言う段階でギブアップとなったらしい。契約者には手付金の倍を違約金として追加支払いし 販売中止を合意してもらうことになった。1000万円の手付だったら計3000万円の戻りだ。さすが超大手。裁判沙汰を恐れたらしい。結局 この建物は取り壊しになることが決まった。・・・どうやら建築労働者不足/建設費高騰と言うマクロな話は現実の身近な出来事として確実に影響を及ぼし始めているらしい。

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