過去のひと言


2020年6月 オンライン研修を控えて

私の活動の90%以上は「考える技術・書く技術」の研修である。この研修は 基礎編・スライド編・フォローアップ編など様々なワークショップで構成されている。ただ 全編を通じて ウリは私と研修参加者の間で行われる その場の添削やQ&Aだ。この価値を最大限に発揮するには やはり 参加者が一堂に会しての集合研修が望ましい。そして 新コロナ感染騒動のおかげで 3月以降 この集合研修の実施が不可能となった。

7月下旬以降実施予定の研修に関しては わざわざ広めの会議室を準備し 従来通りに集合研修で実施したいという顧客も複数出始めてきたが それでも顧客の3割はいまだ様子見だ。というわけで 私としては 次善の策としてZoomでのオンライン研修を提供することになった。

実際にやろうと決断したのは 4月に入ってからだった。まず Teams/Webex/Zoomなど複数のテレワーク・アプリを試してみた。当初 非常に簡単に考えていたのだが 試してすぐに壁にぶつかった。私の研修で必需品と言える書画カメラへの切り替えが上手くいかない。どのテレワーク・アプリも同じだったのだが アプリ内のカメラ切り替え機能では 外付けした書画カメラへの切り替えに3~5秒かかるのだ。その間 画面が真っ暗になる。ちなみに一番切り替えが早かったのはZoomだが それでも3秒かかった。これでは実用に耐えられない。

弊社のシステム顧問と話した結果 やはりソフトではなくハードで切り替えるしかないという結論。推薦されたのが今ユーチューバーの間で大人気のBlackmagic Design社製のATEM Miniというビデオスイッチャーだ。Blackmagic Design社はハリウッドのプロの映像機器を手掛ける有名メーカー。今までは10万円以上したビデオスイッチャーの廉価版として昨年秋に4万円を切る価格で売り出したのがATEM Mini。この機器を使えば 最大4台の映像機器をHDMIで入力し それを即座に切り替え PCやモニターに出力できるという優れものである。映像のプロに言わせると解像度の違う映像を一発で切り替えるというのがすごいことらしい。問題は日本でも米国でも大人気で在庫切れということ。結局 4月初めに発注して手に入ったのが5月下旬だった。

回線は仕事場まで専用の光ファイバーを敷いているので大丈夫だが やはり今のデスクトップでは心もとない。これを機会に デスクトップを入れ替えることにした。Core i5(6コア)のCPUにメモリ32GBというなかなかのハイ・スペックだ。現在 Zoomホスト用として この新デスクトップと2台のモニターを活用している。Zoomにはデュアルモニター機能があり 共有画面と参加者ビューを別のモニターに映せるので便利だ。更には今迄のデスクトップとモニターを会議モニタリング用に使用しているので 机の上には3台のモニターが並んでいる。

映像機器としては 私を映すカメラと書画カメラに加えて パワポ出力用のラップトップがビデオスイッチャーに接続される。PC的には デスクトップ2台とラップトップ1台の計3台が駆り出されている。

映像が一段落すると 次はオーディオだ。ZoomでBGMを流してみるとわかるが どうも聞きづらい。調べてみると Zoomではマイク音声を聞こえやすくするために雑音を除去する工夫が施されている。このおかげでマイク音声は聞き取りやすくなっているのだが 音楽には逆効果。音楽を聴きやすくするには Zoomのオーディオ雑音除去機能を無効化する必要がある。そして その代償として 雑音の入りにくい高品質のマイクが必要となる。結局 廉価だが評価の高いM-Audioのマイクを買った。…ん?結局 Blackmagic DesignといいM-Audioといい 評価の高いビデオ/オーディオ製品はアメリカ製だ。

というわけで5月下旬にビデオスイッチャーが配達されて以来 3週間近くで弊社のシステム環境は一新した。オフィスには空箱が積み重なっている。しかし考えてみると Zoomは様々な通信環境でも使えるようにデータ処理にかなり圧縮をかけているし また自宅から参加する人たちの通信環境を考えると ボトルネックはそっちの方かもしれない。となると 本当に私の努力が報われるかどうかはわからない。まあ やれるだけの環境は整えた。あとは中身だ。

2020年5月 新型コロナ感染者数

今日は5月1日。都内在住者として東京都内の新型コロナ感染者数の棒グラフを毎日見ている。都内の感染者数は減少傾向に入ったようだ。しかし どうもすっきりしない。原因は「感染者数」という言葉だ。

マスコミでは「感染者数」という言葉が使われているが 東京都のグラフを見ると実は「陽性患者数」となっている。しかし 同じ東京都発表の別のグラフでは これを「検査陽性者数」と称している・・・ここまで用語を無神経に使われると困ってしまう。

そもそも 「感染者」には 「発症した感染者(患者)」と「無症状の感染者(病原体保有者)」が含まれる。毎日発表される棒グラフは明らかに「感染者数」ではない。一方「患者」と言えば厚労省データでは「症状がある人」を指す。しかし 東京都の発表する「陽性患者数」には 発症していないが陽性という人も含まれているようだ。発表される数字はどうやら「検査陽性者数」という言葉がもっとも正しいように見える。

そうすると いったい何人検査しているのかという話になる。つまり 恐らくは病床数などの関係で意図的に検査数を低めに抑えている状況で 検査陽性者数がどれほど意味を持つかだ。現状では検査数を低めに抑えるというやり方が一定状況で推移しているようなので それなりの傾向値として解釈できるとは思う。しかし PCR検査対象を拡大する動きが広まれば 当然 検査陽性者数に影響が出る。また 検査数に意図が働いていることを考えれば 検査母体に対する陽性者の割合(陽性率)も使えない。結果として この棒グラフを元に感染の収束を判断するとすれば 判断を誤ることになりかねない。

感染の収束を判断する上で重要な要素と言われているのが「基本再生産数」だ。これは感染力の強度を示すもので 一人の感染者が平均的に何人に感染させるかを表す値である。これが1を切ると収束傾向にあると理解できる。NY州では最近この数値が1を切ったということで収束傾向に入ったことが見られると発表した。ちなみに 東京都では4月1日に基本再生産数1.7という発表があっただけで 以降沈黙状態だ。

西浦教授の80%接触者削減の基本になっているのがこの基本再生産数を1以下にしようという考えだ。日経サイエンス誌によると 西浦モデルは欧州で平均的な増加傾向を示すドイツの再生産数2.5を元にしている。数式は

(1−α)x2.5 < 1

αは接触削減率。上記を満たすαは0.6以上。つまり接触削減率を60%以上にすれば感染者数は減少する。あとはαをどれだけ大きくすればどれだけ早く感染者が減るかという話だ。計算上はαを80 %にすれば緊急事態宣言前の新規感染者数100人に戻るのに15日かかる。更に削減確認に必要な2週間を加味して 1カ月で緊急事態宣言前の状態に戻ったことを宣言できるという計算だ。ただしこのモデルの接触率にはマスク着用や手洗い励行が及ぼす影響は加味されていない。

ちなみに4月1日に東京都が発表した再生産率1.7を上記に当てはめると αは32%。この時点でマスク着用やテレワークがある程度進んでいるので すでに32%の削減率になっていた。しかし 60%以下なので これでは増加は食い止められない。

西浦モデルは目標値設定としては大変役に立つが 実際にα値を計算することはできない。したがって再生産数が1を切っているかどうかはこのモデルでは計算できない。この計算は発表された感染者数(検査陽性者数)を元にしており 結果も感染者数で判断することを前提にしているのだ。何のことはない。結局 発表されている感染者数(検査陽性者数)に戻るのだ。

報道によると 保健所の現場では 病床の空き具合を眺めながら 一人でも多くの命を救うために 誰をPCR検査に回すのか日々の作業に明け暮れているという。これが事実ならば 見方を変えると 保健所の現場采配が収束判断に影響するという恐ろしい状況が浮かび上がる。

今日のテレビでノーベル賞の山中教授が言っていたことに全面的に同意したい。すなわち 診断のための検査と感染状況判断のための検査は切り分けるべきだ。診断は精密なPCR検査で 状況判断は簡単な抗体検査で広範囲にやるべきだ。その通りだと思う。しかし これは今 NY州でやっていることなのだ。なぜ日本でできない!

2020年4月 コロナ罰金5000ドルに思う

今日4月1日 ハワイ在住の娘からのラインによれば 知り合いの息子が外出中に警官から質問され ついうっかり 「友達に会いにいく」といったところ 5,000ドルの罰金チケットをきられたという。

5,000ドル?・・・50ドルの聞き間違いだろう。こういうときに デマを信じてフェイクニュースを拡散してはダメだと言おうとしたところ 5,000ドルは本当だった。現地のニュースで発表されているという。また ハワイのセブンイレブンの前で友達と立ち話をしていた娘の友達は 警察に見つかり 1,000ドルの罰金チケットを切られたという。不要の外出は$5,000 家族以外の人との集まりは1,000ドルの罰金だという。ホノルルは今いたるところに警察官がいるらしい。まさに厳戒態勢だ。

こういう話を聞くと 東京でも非常事態宣言・外出禁止令は時間の問題のような気がしてきた。東京の学校は 連休明けまではもちろんのこと 5月いっぱいだめかもしれない。私の教育研修は2月下旬から4月中旬までの予定はすべて延期になった。これだと 5月中旬まではすべて延期かキャンセルだろう。もっと長くなるかもしれない。私の場合 ほぼ個人事業だが 仕事が企業向けなのでまだ軽症で済んでいる。これが 個人向けビジネスの中小・個人事業の場合 事態は深刻かつ急務だ。大企業であっても非正規雇用の方などは死活問題である。

非常時に最初に苦しむのは常に弱者だ。しかし こんなことは誰だってわかっている。理解できないのは政治家や行政はなぜ何もせずに口先だけで時間を無駄にしているのかということだ。しかも 具体的にこれから何をやろうとしているのか 今何をやっているのか全く伝わってこない。これでは不安が積もるばかりだ。

政治・行政の無策に加えて ちょっと驚いているのは株価だ。4月1日現在の話だが コロナ問題が表面化し始めた2月21日と比べると 日経平均は21%下落し 米国のダウ平均は25%下落した。ニュースはリーマンショック以来の暴落だと騒ぎ立てるが 私の印象は逆だ。つまり なぜこの程度の下落で済むのかということだ。

米国ニューヨークでは 医療空母が手配され あのセントラルパークに仮入院テントが設営されるなど 医療崩壊が現実のものになりつつある。失業率は20%近くに達し 失業保険申請の電話はまったくつながらず 40%以上の人が来月の家賃が払えそうもない状況にあるという。それでも株価は25%下落でとどまっている。

しかし考えてみると当たり前かもしれない。今 一番影響を受けているのは株価などとは全く縁のない人たちなのだ。毎日株価のチェックに忙しいお金持ちの人たちも25%程度の影響は受けているが その影響は株価と無縁の人たちの影響と比べると些細なものだ。株価が経済を反映する?それじゃ 経済って何なんだ。少なくともいえるのは 「株価が社会を反映しているとは言えない」ことだと思う。

日銀が市場で株(ETF)を買いまくって日本の株価を下支えしている。これにより 日銀が日本経済を下支えしている?間接的にはイエスなのだろう。しかし 日銀が一番 直接的に助けているのはたんまりと株を保有するお金持ちなのだ。・・・日本も徐々に確実に二極化の途を進んでいるようだ。そして コロナが無策の行政の助けを得て さらに二極化に拍車をかけようとしているようだ。

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