過去のひと言


2022年6月 加山雄三引退に考える

ついに加山雄三が年内引退を発表した。今年3月にビルボードライブ横浜での復活ミニコンサートを見に行ったばかりだ。脳溢血の後遺症から立ち直り しっかりと杖なしで歩いていた。とても元気そうだった。しかしやはり85歳。いつまで歌えるだろうかという気はしていた。ファンとしては残念至極ではあるが やむを得ない。先日 孫の小学校(男子校)の卒業式で加山雄三の「海 その愛」を合唱していた。よく聞いてみると 実にいい歌だ。9月のラストコンサートは仕事の都合でいけないが まだ年内にはいくつかのミニコンサートが予定されているらしい。機会があればぜひ行きたいと思う。これまで何度もコンサートに行き 大きなエネルギーをいただいてきた。本当にありがとう。

考えてみると 加山雄三が最後の全国ツアーで日本各地を回ったのが 2014/15年。その最終公演をNHKホールに見に行ったことを思い出す。当時 加山さんは78歳。まだまだ元気バリバリの様子だった。全国ツアーはやめたものの 以降もいろんなコンサートを主催していた。

ところで 加山雄三と同じ歳の北島三郎は今どうしているのだろう。考えてみると彼が明治座の最終公演を行ったのも2014年。加山さんの全国ツアー最後の歳と同じく78歳の時だ。この公演にも駆け付けたが 当時の大漁船や祭りの熱唱は忘れがたい。ただし 北島さんの場合 加山さんとは違い これ以降はステージのみならずテレビでの出演もめっきり減らしている。実は最終公演でも劇中で転びそうな場面があった。脚が悪かったらしい。

同郷の福岡育ちで 私の大好きな高橋真梨子(73歳)は 今年 最後の全国ツアーの最中だ。どうも全国ツアーというのは出演者にとってはかなりの負担らしい。このコンサートにも行ったが まだまだ元気いっぱい。一時期 激やせでかなり体調が悪そうだったが完全復活という印象だった。全国ツアーをやめるだけで まだまだコンサート活動は続けるとのこと。一安心だ。若干心配なのは 高橋真梨子の夫でプロデューサー兼バンドマスターのヘンリーさんの体調。何せもう78歳。二人三脚で頑張ってきただけに くれぐれも体調に気を付けてほしい。

こうしてみると 総じて 負担の多い全国ツアーは70歳代の半ばで卒業 それ以降の活動はその人次第らしい。加山雄三のように驚異の若さを維持できれば 85歳まではいけるということだろう。

先週 妻の好みで ユーミンのコンサート(深海の街)に行ってきた。私にとっては初めてのユーミン。それにしても 聞きしに勝る スモークとライティング満載のド派手な演出だった。ユーミンもすでに68歳だが体の切れは秀逸。かなり鍛えていることが伺える。会場は東京国際フォーラムAホール。5千人収容の会場を埋め尽くす客の多くは中高年のおばちゃん。にもかかわらず 曲の半分近くは総立ちの声援。すさまじいおばちゃんパワーだった。妻は手に入れたおばちゃんパワーにいたって満足の様子で 早くも次のユーミンを楽しみにしている。コンサートで コロナの時は引退も考えたといっていたが この調子ならあと10年は大丈夫なようだ。

と考えると ユーミンと同世代の私もまだまだ大丈夫。全国ツアーもあと数年はいけそうだし 加山雄三の頑張りを学べば あと10数年は現役でいけそうだ。こりゃ 来年も100キロウルトラ完走を目指すしかない。

2022年5月 100キロマラソンとランニング曲

先月 3年ぶりの開催となった富士五湖ウルトラマラソン100キロの部に三度目の出場を果たした。このウルトラマラソンは山中湖と本栖湖を除く3つの湖を回る62キロの部 本栖湖を除く4つの湖を回る100キロの部 そして5つの湖すべてを回る118キロの部の3つがある。100キロの部の制限時間は14時間だが 途中に6つの関門があり それぞれの関門に制限時間が設定されている。関門到着が設定時間より何秒かでも遅いとその場でアウト。回収バスに乗せられてしまう。

おそらくコロナのせいでボランティア集めに苦労したのだろうか 今年は3年前と比べ30分以上遅い 朝5時20分にスタート。やはり3年間のブランクは大きく 途中からは関門ごとに制限時間まであと2、3分という状態が続き ゴールしたのは14時間ギリギリの夜7時20分。小雨が降り続く寒さの中 真っ暗な山を駆け抜けての必死のゴールだった。何はともあれ100キロ完走。

さて 14時間も走るとなると やはり後半は音楽が欲しい。今年は コロナ・ルールで スマホで体調管理アプリの結果を入り口で見せなければならず かつ400グラムの飲料水を携帯しなければならないという条件がついたので 初めて小型リュックを担いで走ることにした。というわけで どうせリュック持参ならiPhoneから無線イヤホンに音楽を飛ばすことにした。以前は リュックなしで走り スマホではなく 小さなiPodを活用していた。

ただ終わった後で考えてみると この大会は荷物預かりがあるので 必ずしもスマホを持って走る必要はなかった。しかも給水箇所は多いので 携帯する水もぎりぎりの量で充分。となれば ボトルホルダーつきのウエストポーチがあれば リュックは必要なかったのだ。この違いはギリギリのタイムで走るランナーには大違いだ。

大会が終わって一週間後 来年の大会のことを考えた。そうだ 来年はスマホなしで リュックなしで ともかく100グラムでも軽くして走ろう。音楽は 奮発してイヤホンにプレーヤーがついているものにしよう。調べると この種のイヤホンも昔と比べ安く手に入るようになっている。というわけで Sonyのウォークマン(プレーヤー付きイヤホン)を購入。

iPodもそうだが このイヤホンには選曲ボタンはない。つまりイヤホンに入れる選曲が重要になる。というわけでランニングにふさわしい曲を改めて選び 手元にない曲は一曲ずつネットで購入することにした。選曲をしているうちに ふと気づいた。たとえランニング応援歌という目的がはっきりしたものであっても 楽曲選びというのは必ずしも 歌詞やリズムだけではなかった。その曲と関連する私の個人的な思い出や連想する感情が深く関係するのだ。

例えば ランニング応援曲の定番は「負けないで(ZARD)」や「Runners(爆風スランプ)」。しかしそれに勝るのは 私の場合「ロッキーのテーマ」だ。この曲を聴くと ロッキーがフィラデルフィア美術館の階段を駆け上る映画のワンシーンが思い浮かぶ。しかも当時 フィラデルフィアに留学中の私は 街の映画館で拍手をしながらこの映画を見ている。この曲を聴くと 映画のシーンだけでなく 当時の私自身のエネルギーさえよみがえる。

サイモンとガーファンクルの「Mrs. Robinson」もランニング曲に含めることにした。これを聞くと映画「卒業」で 赤のスポーツカーに乗りゴールデンゲートブリッジを駆け抜けるワンシーンがよみがえる。このシーンで流れたのがこの曲なのだ。そして このシーンとともに私が青春時代に抱いたアメリカへの熱い思いもよみがえってくる。何を隠そう 私が最初にアメリカにあこがれるきっかけになったのが 高校時代に見たこの「卒業」なのだ。

加山雄三の「サライ」と「座・ロンリーハーツ」も加えた。サライはもちろん24時間テレビのマラソンシーンが思い浮かぶし 「座・ロンリーハーツ」はおじさんへの応援歌。そもそも 加山雄三のコンサートを何度も聴きに行った私は 84歳でも歌い続ける加山雄三の頑張りそのものが応援歌なのだ。変わったものでは安室奈美恵の「ヒーロー」も加えることにした。安室奈美恵の生きる姿勢が私のエネルギーになるからだ。

いろんな歌を20曲近く選んだが 一番のお気に入りは間寛平の「Run Run Run」だ。10年以上前 大阪マラソンを走った時 間寛平と並走になったことがある。走っている間ずっと一般ランナーや応援者に手を振って応える 見た目通りの素晴らしい人柄。この曲は 彼が250キロのウルトラマラソンに出場していた頃の歌だ。私が100キロマラソンを走ろうと思った深層心理には間違いなく間寛平とこの曲がある。めちゃくちゃ古い曲だが お勧めです。・・・この世に歌があればこそ まだまだ100キロも耐えられる。

2022年4月 世界のリスク

世界のリスク

ウクライナ紛争を目に先日のニューズウィーク日本版(2月15日号)の特集記事を思い出した。1月初めに発表された 地政学分析の権威 イアン・ブレマーによる「2022年を襲う世界のトップ10リスク」の特集だ。

リスク第1位は 中国ゼロコロナ施策の失敗
第2位は テクノポーラー世界
第3位は 米国の中間選挙
第4位は 中国の国内回帰
第5位が ロシア(ウクライナ紛争を含む)

第1位に輝いたのは「中国のゼロコロナ政策の失敗」だった。今まさに コロナ拡大の国際都市 上海で起こりつつある問題だ。ブレマー氏はオミクロン株の登場により ゼコロナ(コロナ封じ込め)政策は失敗に終わると予想している。

ゼロコロナ政策により 中国人の多くはコロナ免疫がない状況が続いており しかも 中国製のワクチン効果には大きな疑問が残る。ところが ゼロコロナ政策の成功を誇らしく喧伝してきた習政権はこの方針を変更することができない。そのうち感染が拡大し 今迄以上に厳しい更なるロックダウンが必要になる。結果として サプライチェーンの混乱に拍車をかける。当然 世界経済への影響は不可避だ。国内経済への打撃は計り知れず 国民の不満は高まる。政府は混乱を最小に抑えるために市場への介入を図る。結果として 事態は我々の想像を超えて悪化する。はたして習近平体制はこれを乗り切れるほど盤石なのか。

一方 ロシア・リスクは第5位に挙げられている。ロシアのウクライナ侵略の可能性(発表当時)を含め 米ロ関係の不安定化 エネルギーをロシアに依存する欧州とアメリカの関係の危うさ ロシアによる米国中間選挙への妨害工作 更には中ロ関係強化いかんによっては中国の南シナ海の軍事行動が拡大する可能性も挙げている。

それでも ブレマー氏は ロシア・リスクは中国リスクと比べると相対的なリスク度合いは低いと見ている。ブレマー氏の予測は1月初めのものなので プーチンの暴走は想定外だったのかもしれない。しかし現実を見ると 中国の人口はロシアの10倍 経済規模もほぼ10倍。防衛予算に関しても 中国はロシアの4倍に上る。これがロシアの現実なのだ。

リスクのつながり

ただ ウクライナ紛争と中国のコロナ問題を目にして私の頭をよぎったのはリスクのつながりだ。

ウクライナはどういう形で決着するのか あと数か月後の話なのか あるいは数年にわたる長期戦争となるのか まったく見えない。もともとウクライナ東部ドネツクが長年にわたり紛争中であったことを考えると 東部地域を中心とした戦争状況が長期化しても何ら不思議はない。戦争の長期化とは戦争の日常化だ。世界を見渡すと アフガニスタン シリア リビア イエメン など戦争・紛争が日常化している例はあまりにも多い。

ウクライナ戦争の長期化など想像すらしたくない事態だが 長期化する場合 経済的に弱体化するロシアの後ろ盾になるのは中国しかいない。そこで改めてクローズアップされるのが ブレマー氏が最大リスクに挙げた中国のゼロコロナ政策の失敗だ。果たして 習近平はこのリスクを抑え込むことができるのだろうか。このリスクを抱えながら ロシアとの連携を図ることができるのだろうか。中国リスクが我々が思う以上に習近平に大きな打撃を与えるとすれば ロシアのウクライナ戦争に影響が出ないとは言えない。

もちろん私は専門家ではない。しかし どうもこの一見無関係に見える2つのリスクは最終的に大きく関連するのではないかと思える。ゼロコロナ政策の失敗が習近平の足を引っ張り それがプーチンの失脚につながり それがウクライナ戦争の早期終結に結びつく・・・そんな可能性はないのかと密かに夢想している。

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